100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.92

2022.10.14 Fri

パートから正社員 有休休暇はどうなる

年次有給休暇の付与の時期と要件

年次有給休暇は、雇い入れ6か月継続勤務後を基準日として8割以上出勤で付与され、以後1年ごとに与えられます。入社日が違えば基準日も異なり付与日や残日数管理が複雑なため、一律の基準日を定め付与する斉一的取り扱いも認められています。斉一的取り扱い導入時では全労働日の8割以上出勤の要件は、切り上げ方式で、短縮された期間は全期間出勤とみなします。

次年度以降の付与日については、初年度の付与日を法定の基準日を繰り上げた期間と同じか、又はそれ以上の期間法定の基準日から繰り上げます。

パートタイマーを正社員転換した場合

パートタイマーである方が正社員転換をした場合の有休休暇の付与の扱いはどうなるのでしょうか?

正社員に変わった時点ではすでに付与されている有給休暇の日数がそのまま引き継がれ、正社員としての1日の所定労働時間分の休暇が与えられます。また、その後の付与日にはパート社員として採用された日から通算した勤続年数を基に付与されます。

逆に、正社員からパート社員になった場合でもすでに付与されている有給休暇はそのまま引き継がれます。

斉一的取り扱いでは

パートには付与日を法律通りに付与し、正社員には一斉に年休付与を行う斉一的取り扱いをしている場合、転換する少し前にパートとして年休付与されたばかりの方が、正社員になり、転換後すぐに基準日を迎えても年休付与をするべきでしょうか?

結論から言うと転換してすぐに基準日が来たとしても付与が必要です。

斉一的取り扱いを導入した場合、基準日までの期間の長短は考慮されません。入社日で付与までの期間が変わり、不公平な面も発生しますが、事務管理の観点からはやむを得ないものと考えられます。不公平感を少しでも緩和できるのは半年ごとの基準日方式で付与するやり方です。しかし完全には公平になりません。企業の割り切りと事務量で選択することになります。最近はシステムで年休管理することもできます。

賃金のデジタル払い解禁? ~○○ペイ払いも可能に~

賃金のデジタル払いが解禁?

厚生労働省は、2022年9月13日の労働政策審議会(労働条件分科会)に賃金のデジタル払いを可能とする制度案を提示し、準備を進めていくことが確認されました。

決済事業者で賃金が保全されるか疑問として反対の立場を取っていた連合も導入に向けて理解を示したようです。

2023年春にも解禁されるのではとの報道もありますが、2018年頃から議論が開始され、政府の規制改革推進会議が2021年導入を目指していたにもかかわらず、実現しなかったこともあり、更に先送りとなる可能性も十分あると思われます。

 

「賃金支払の5原則」

労働基準法24条は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と定めています。下記のいわゆる「賃金支払の5原則」と言われるものです。

①通貨払の原則

②直接払いの原則

③全額払いの原則

④毎月1回以上払いの原則

⑤一定期日払いの原則

 

賃金のデジタル払いの問題点

賃金のデジタル払いで問題になるのが「通貨払い」の原則に抵触するのではないかとの懸念です。つまり、〇〇ペイ等のデジタルマネーが通貨代わりとして認められるかということです。

一般に行われている賃金の銀行振込でさえ、「通貨払い」の例外で、従業員本人が同意した場合に限られています。

デジタル払いが解禁され、従業員が希望した場合、申請された口座が本人の口座であることをどのように確認するのかといった問題も出てきます。

また、賃金のデジタル払いには口座上限額が設定されるようであり、銀行振込と併用されることも考えられ、支払手続や管理が複雑化するものと思われます。

今後の議論に注目したいところです。

火災保険の名義変更

建物に契約する火災保険が、積立型の火災保険や保険料一時払いの長期保険の場合には、火災が起きた時に保険金を受け取ることができるほか、火災が起きなくても、解約返戻金や満期返戻金を受け取ることができます。建物を相続や贈与で取得した場合、これらの火災保険には、どのような課税がされるでしょうか。

相続に伴い名義変更する場合

親から建物を相続して、火災保険契約の名義も子供に変更する場合には、解約時に受け取ることのできる解約返戻金相当額で相続税が課されます。

贈与に伴い名義変更する場合

火災保険契約の名義人だけ変更する場合や、建物を子供に贈与して、火災保険契約も子供名義に変更する場合は、解約返戻金相当額で贈与税が課されるものと思われます。解約返戻金や満期返戻金を受け取るまで、贈与税はかからないとする見解もありますが、名義変更により、解約返戻金を受け取る権利を取得しているので、贈与税が課されると考えたほうが無難と思われます。

解約返戻金や満期返戻金を受け取った場合

相続や贈与による火災保険の名義変更の後、解約返戻金や満期返戻金を受け取った場合は、一時所得として課税されます。

その理由として、火災保険契約は、「みなし贈与」が適用される、相続税法5条2項の傷害保険に該当しないため、火災保険契約の名義変更による解約返戻金や満期返戻金の受取りは、贈与ではなく、一時所得となるとする見方もあります。

なお、一時所得の計算では、親と子の双方の負担した保険料をあわせ、解約返戻金や満期返戻金の収入金額から差し引く必要経費とすることができます。

「建物更生共済」の扱い

JA「建物更生共済(建更)」の商品説明では、「JAの承諾を得て共済契約者を変更する場合は、変更時に「共済契約の権利」を贈与されたものとして、解約返戻金相当額が贈与税の対象となる」、「満期共済金受取時には、共済契約者の変更前後を通じた払込掛金総額を一時所得の必要経費とする」旨が案内されています。

火災保険金を受け取った場合

また、火災や自然災害により建物や家財が消失した場合に受け取る保険金は、財産の損害を補てんするものであるため、所得税は非課税となります。

マイナス資本金等に対処できない取引相場のない株式評価

配当還元価額計算での異常事態

資本金1,000万円、200株発行、1株50,000円の会社で、配当実績がない場合、配当還元価額は、1株当り25,000円です。

ところがこの会社が、MBOでの買収の為に用意された会社がオーナーから株式のすべてを買取り、完全親会社になり、その後、完全親会社と完全子会社が逆さ合併した存続会社だったとして、オーナーからの買取株が自己株式として10.1億円で帳簿価額に計上されていたとすると、資本金等の額は△10億円(=1,000万円-10.1億円)となり、発行済み株式数は△20,000,000株(=△10億円÷50円)、一株当り年配当金額は△2.5円(=年平均配当金額÷△20,000,000株)と計算され、△2.5円÷10%×(△10億円÷200株)÷50円=250万円と計算され、配当還元価額は100倍の250万円になります。

類似業種比準価額計算での異常事態

マイナス資本金等の会社の類似業種比準価額での株式評価についても、1株を50円とした場合の発行済み株式数△20,000,000株(=△10億円÷50円)で配当金額、利益金額、資産価額を除する計算から始まりますが、各値はマイナスとなります。

しかし、ここでも、実際の1株当たりの発行価額に換算し直すときに、マイナス資本金等が再び登場して、マイナス値にマイナス値を乗じてプラス値が復元することになります。但し、ここでは、マイナス株式数での除算・乗算により100倍値にはなりません。でも、端数処理での変動があり、比準要素0や1の会社になってしまうこともあり得ます。

プラスになればよいという不思議

このように計算するのだとTAINSにある当局情報は言っています。異常事態に気付いてないかのようです。

特に異常度の激しいのは配当還元価額です。配当還元価額が他の評価額よりも激しく高くなってしまいます。

そもそもマイナス資本金等というのは自己株式の取得価額に内在する資本と利益を分離させていないことによる仮の数値です。仮の数値を使って計算しても、仮の値にしかなりません。

資本からマイナスされている利益を除いて、本来のプラスの資本金等の額に戻すことをしない限り、この異常事態から脱け出せません。