100年企業創り通信
2022.09.02 Fri
税理士会から、「国税庁より、現在のウクライナをめぐる国際情勢に鑑み、国際平和のための努力に寄与することを目的に、令和4年9月5日以降は一部のロシア企業に対して行う会計業務及び経営コンサルタント業務については財務大臣による事前許可が必要になる旨周知依頼がありました」との知らせが入りました。
欧米諸外国および日本は、これまで銀行送金のSWIFT網からの締め出しをはじめ、数々の経済制裁を加えてきました。しかしながら、天然資源を持つロシア側の経済の底力の強さや対抗策に阻まれ、意図した経済制裁が効いていないということもあったのでしょう。今度は、税理士業界にまで制裁範囲が拡大されたということです。
ロシアも隣国ですし、天然資源の購入や自動車関連の輸出など、貿易関係があります。日本の会社がロシアに子会社や支店を持っていたり、ロシアの会社が日本に子会社や支店を持って活動をしていたりします。
今回の経済制裁の対象業務は、令和4年9月5日以降に開始する、会計業務(財務書類の作成、会計帳簿の記帳など)と経営コンサルタント業務(マネジメントに関する診断・指導・教育訓練、マネジメントに関する調査研究)です。対象者はロシア連邦企業です。ただし、①ロシア人(個人営業者)、②日本の法令に基づき設立されたロシア人が経営する法人、③ロシア連邦の法令に基づき設立されたロシア人が経営する法人の日本支店、④ロシア連邦の法令に基づき設立された法人のうち、日本企業等により発行済み株式の100分の10以上を所有されるもの、日本企業等との間において役員の派遣・長期にわたる原材料の供給等永続的な関係のあるもの、は除外されています。
既存の顧客先のほとんどは上記の除外規定に該当するものと思われますので、会計帳簿や決算書の作成ができなくなるということにはつながらないようです。なお、税務代理等の税理士業務は対象となっていません。それも鑑みると、まずは、一安心です。
とはいえ、たとえば、ロシア連邦内のロシア企業に提供する移転価格税制の国別報告事項(CbCレポート)などは制裁業務となります。ロシア関係の関与先がある場合には、この制裁対象となるか否かの事前確認が必要です。
免除された事業者以外のすべての事業者(個人・法人を問いません)が消費税の課税事業者です。法律の作り方は、漏れがあってはなりませんから、まずすべての事業者を対象に課税すると規定しています。そして次の事業者は納税を免除すると規定しています。
基準期間の課税売上高が1千万円以下の事業者としています。基準期間とは個人で言えば2年前、法人で言えば2期前の1年間です。
課税売上高とは、法律で非課税とされる売上以外の資産の譲渡や役務の提供すべてです。実際は、更に特定期間等細かい規定がありますのでご留意ください。
また、免税事業者でも課税事業者を選択することはできます。
課税事業者は「適格請求書発行事業者」として登録され、登録番号が付与され、請求書や領収書にこの登録番号を記載し幾ら消費税を預かったかを明確にします。
免税事業者は実質消費税をもらっていないこととなります。
法人で売上1,000円 仕入500円 消費税10%での比較です。
課税事業者(適格請求書発行事業者)
売上1,000+売上消費税100-仕入500-仕入消費税50-納付消費税50-法人税30%150=350
免税事業者
消費税をもらわなかった場合
売上1,000-仕入500-仕入消費税50-法人税30%135=315
消費税をもらった場合
売上1,000+売上消費税100-仕入500-仕入消費税50-法人税30%165=385
免税事業者で消費税をもらった場合が一番お金が残ります。しかし消費税をもらえないと課税事業者よりお金は残りません。
置かれた立場と顧客を考えて慎重な判断が必要です。
会議費は、社内外の会議や打ち合わせの際に必要となる費用のことです。会計上は損益計算書の販売費及び一般管理費として区分されます。
基本的には「会議に関する費用」であれば、会議費として計上できます。例えば会議室をレンタルした費用や、会議で使用する資料の代金、会議で配るお茶菓子や昼食の飲食費は、会議費として計上できます。
接待飲食費は原則交際費に該当しますが、1人あたり5,000円以下の飲食費(社内飲食費を除く)を、一定の要件の下で一律に交際費から除外することができます。
交際費は大企業等で損金不算入、中小企業は上限を超えてしまうと一部損金不算入になるため、交際費から除外になる部分については税務上有利になります。
対して会議費は、「会議に関する費用」であれば飲食費であるかないかは問わず計上可能なので、通常要する費用として常識的な額であった場合で、1人あたりの費用の合計が5,000円を超えてしまっていても、交際費として扱わずに、会議費として計上してもよいということになります。
会議費は「通常要する費用」であれば上限はありません。ただし、会議費になるのは「会議に関する費用」なので、居酒屋等の領収書では認められない可能性があります。飲食代金に関しても、高額であれば税務調査等で否認される可能性が出てきます。
接待飲食費に1人5,000円以下というルールがあるため、そこまでであれば交際費として判定しても損金算入が可能なので、飲食代金の上限はそのラインを参考にするとよいでしょう。
あくまでも会議費において飲食代は「会議の添え物」ですが、様々な事情で思わぬ額になってしまうことがあるかもしれません。会議の実態を証明するために、会議の内容や参加者、参加人数などの明細を記載した議事録などを作成しておくと、後に証拠として機能する場合があります。
現行では、短時間労働者の社会保険の加入については、従業員501人以上の企業が対象ですが次のように段階的に適用範囲が拡大されます。
2022年10月~従業員数101人以上の企業
2024年10月~従業員数51人以上の企業
1.週の所定労働時間が20時間以上あること
1週間の所定労働時間が変動する場合は平均で算定します。例えば1か月の労働時間を12分の52で割ると1週間の平均時間が算定されます。
2.雇用期間が2か月以上見込まれること
現行では雇用期間1年以上見込みでしたが変更され、2か月以内の定めがある雇用契約でも「契約更新される」可能性がある場合は最初に定めた期間を超えた時からでなく当初からの加入となります。
3.賃金月額が8.8万円以上(年収106万円以上)であること
ここでいう賃金とは、時給日給なども月額に換算した場合です。割増賃金や通勤手当等は除きます。
4.学生でないこと
卒業見込みで引き続き勤務予定の者、休学中、夜間部の学生等は対象になります。
従業員数は現在の厚生年金適用対象者(常用労働者とその4分の3以上の労働時間の者)でカウントします。それ未満の時間のパートは含みません。
直近12か月のうち6か月で平均101人以上であれば対象です。
対象事業所ではすでに対象者に説明会や個人面談を行ったことでしょう。社会保険制度では傷病手当金や出産手当金等の補償や、老齢年金も増額もされること、配偶者の健保の扶養から外れると本人の保険料負担が発生し、手取りも変わること等説明しましょう。それにより労働条件を変更する場合もあるかもしれません。
8月中に日本年金機構から対象事業者に文書が送られます。実際の手続きは10月1日以降ですので、事前準備をしておきましょう。
新たに創設される「産後パパ育休(出生時育児休業)」は通常の育児休業とは別で、原則休業の2週間前までに会社に申し出れば出生後8週間以内に4週間までの休暇を取得できます。初めに申し込んでおくと2回分割もできます。
産後パパ育休の期間中は原則就業しないことになりますが、労使協定を締結すると休業中の就業も可能になります。手続きについては書面で行いますが厚労省のホームページに様式が掲載されています。
育児休業は子が1歳になるまで分割して2回取得することが可能になりました。原則3回目以降はありませんが、1歳以降でも例外事由に該当すれば再取得ができるようになっています。1歳以降の育児休業の延長ではその開始日は柔軟な設定になります。
新設された産後パパ育休に対する期間は「出生時育児休業給付金」が申請できます。産後パパ育児休業中に労使協定があれば就業も可能ですが10日を超えて勤務すると給付金は出なくなりますのでご注意ください(10日を超える場合は就業時間数が80時間以下)。給付額は休業開始時賃金日額(育休開始前6か月の賃金を180で除した額)×67%(半年経過後は50%支給)。
育児休業中の保険料免除の要件は「その月の末日が育児休業中である場合」ですが10月からそれに加えて次の条件が付きます。
・その月の末日に育児休業中でなくとも同一月内で14日以上の休業の場合
・「賞与に係る保険料」は連続して1か月を超える育児休業を取得した場合に限り保険料免除
とされました。個人負担保険料減額分と給付金を合わせると賃金手取りの8割ほどがカバーされると言います。
今回の改正により分割で短期間の取得や夫婦間で取得時期をずらして育休を交代するなど柔軟な働き方、休み方ができるようになります。厚労省調査によると育児休業を希望していたが取得できなかったとする男性労働者が3割いたということです。制度面だけでなく社内の意識も柔軟に変えていく時かもしれません。