100年企業創りレポート
2022.05.30 Mon
「自転車の前輪が『理念』、後輪が『利益』。社員の幸せなき成長はしてはならない。」
セコム株式会社 代表取締役会長 中山泰男氏(『日経ビジネス』2022.4.18 有訓無訓)
〈〉は藤間の補足
① 多くの企業は創業時、理念を掲げ、希望の旗印を掲げて出航します。しかし、いつしか性弱説に陥り、営業に必要以上のプレッシャーをかけたり、社員を細かくチェックしたりするようになる。社会ではなく、会社のために仕方がないとやってしまうようになるわけです。
② この数年、道徳経済合一説〈『論語と算盤』〉を唱えた渋沢栄一氏に注目が集まっているのも、経営に心を取り戻そうとしている企業が少しずつ出てきている影響ではないでしょうか。
③ 企業にとって理念と利益は「両輪」といわれます。両方大事で、どちらか一方でも欠けてはいけないことを示しています。
④ 私はこの両輪を自転車のイメージで捉えています。前輪が理念、後輪が利益。ハンドルで操作する前輪で行き先を決め、ペダルにつながった後輪が推進力を生む。理念だけでは進まないし、利益だけでは方向が分からないのです。この順序が重要で、あくまでも理念が先です。
⑤ 同じことが今の価値観にも言えます。「Do」の幸せは、何かしら物事を成し遂げた時の喜び。一方、「Be」の幸せは健康である、仲間がいるといった喜びです。これも順序が重要で、Beの幸せがあってその先にDoの幸せがある。コロナ禍は世の中の価値観を大きく変えました。社員が生き生きとして幸せでなければ成長は意味がない。いや、もはや成長してはならない時代なのです。
経営理念のポイントを株式会社ヤマサンの大秦社長がまとめていますので、次ページにて紹介します。
株式会社ヤマサン 代表取締役社長 大秦進氏のメールより 2020.6.12受信
経営理念は経営者の事業に懸ける一念なり!
経営理念は世間(お客様、関わる人々)と自社の公約!
経営理念は事業活動を行う上での決断、判断の本と為す。
経営理念は経営者の態度、行動、言動を戒める憲法なり。
自己の成長とともに経営理念も深まり社内に浸透するのでは。
経営理念を何回も何回も唱和して、考えて、潜在意識にぶち込んだら勝ちだと思います。
「仁王のような顔をして松下幸之助が言い放ったこと」株式会社江口オフィス 代表取締役社長 江口克彦氏
(WEBサイト「テンミニッツTV」)
① かつて赤字続きだったPHP研究所を引き継ぐことになった江口克彦氏。2か月ほど経った頃、毎週行う経営報告の席上で幸之助の「鬼の形相」を目の当たりにする。
② 「わしの言うとおりにやらんかったら、君はいらんで」というのだったら分かります。でも言われたのは「わしの言うとおりにやるんだったら、君はいらん」ということですよね。
③ 私はこの一言で私なりの経営者としての悟りを開いたわけです。要は、仕事すなわち経営というものは、結局、松下幸之助さんからの指示があって、その通りにやる、それでは駄目だということなのです。それは経営者・指導者ではないのですね。指示があったものに、それ以上の成果を上げて持ってこいと、そういうことを言っていたのではないか。赤字、赤字で、みんな頑張っているから仕方がないと言われても、それでよしとするのではなく、松下幸之助さんが思っていることに、さらにプラスした経営というか、仕事というものをしないといけない。だから、Aと言われたらAをやるのではなくて、Aプラスアルファにして返す。(略)何かを付けて返さなければいけない。
④ 指示以上にやることで自分自身が成長する
分かりやすく言えば、この数字の表を作ってくれと言われたときに、分かりましたと言って指示通りその表を作って持っていくだけではなく、指示はないけれども表と一緒にグラフも付けて、これをグラフにするとこうなりますと言って渡すような、そういうことです。
⑤ この本を読んで何が書いてあるか報告してくれと言われた場合に、この本はこういう内容ですというだけではなく、そのさわりの部分や要所の部分をカセットテープに吹き込んで、それも合わせて持っていくということです。カセットテープに吹き込めとか、そんな指示はないのですよ。指示はないけれども、この本の内容を読んで説明してくれという指示に対して、この本はこういうことですと説明をするだけではなく、説明もするけれども、時間があったときにはこれを聞いてくださいという、プラスアルファの仕事をする。
人生、仕事は常に要求されることを、もっと上回ることが必要で、それが相手の満足を高め、自分も、もっと成長します。それを社長や上司は願っています。
特集「挑戦と創造」株式会社致知出版社 代表取締役 藤尾秀昭氏(『致知』2022年5月号)
① 「人間は進歩か退歩かのいずれかであって、その中間はない。現状維持と思うのは、実は退歩している証拠である」昔、森信三先生から言われた言葉である。さらにこうも言われた。「男は無限の前進に賭けなければならない」当時『致知』もある程度の発行部数に到達し、これでひと安心という気分になっていた身にとって、森先生の言葉は重く響いた。以来、箍(たが)を締め直して今日まで歩ませていただいている。
② (ジュポン化粧品の故養田実社長が三遊亭歌之介(現・圓歌)さんに話した)「どんな急な坂道があっても、止まってはだめ。苦しい時には、ああ、なんと有り難い坂道なんだ、この坂道は俺を鍛えてくれていると感謝しなさい。有り難いというのは難が有るから有り難いんだよ」このひと言で迷いは吹っ切れ、自分の人生の目標に向かって黙々と歩き続けようと思った、と歌之介さんは言っている。人生も経営も挑戦と創造の連続である。人は挑戦することで新しい一歩を踏み出し、新たな現実を創造することができる。挑戦と創造なくして生命の躍動、成長はない。ただし、挑戦するには踏み外してはならないセオリーがある。お二人の話は、そのセオリーを私たちに教えてくれている。
③ 私たちもまた生ある限り、先達に学び、情熱をもって、果敢に、挑戦と創造に生きる人生を全うしたい。
二度とない人生。挑戦と創造に生きたら、すばらしい会社や人生ができますね。
特集「一を抱く」 田中真澄氏(社会教育家)の記事(『致知』2015年4月号)
私(田中真澄氏)はそういう父の後ろ姿をとおして「人間は命懸けで打ち込めば生きられるのだ」と教えられたのです。父は軍人だっただけに商売には全く不慣れでしたが、ある人からこう教わったそうです。「田中さん、商売というのは簡単なんだよ。太陽のように生きればいいんだ。太陽は2つのものを人に与えてくれる。1つは熱。熱意を持って人に接すれば、その熱は自然と相手に伝わる。もう1つは光。光を与えて相手を照らし、関心を持ってその人の存在を認めてあげることが大事なんだ」父は生前、「俺は商いのことは何も知らないが、この2つだけは心の支えにしてきた」と私に話していました。
TOMAの経営理念は、「明るく・楽しく・元気に・前向き」です。太陽のように生きることと通じていると思います。皆さんも太陽のように生きませんか。
「成功への道しるべ」605号 サクセスなにわ株式会社 代表 田中得夫氏 (2022年4月14日号)
下記は稲盛和夫氏の母校鹿児島玉龍高校での講話の一部です。
人間の「思い」というのは、素晴らしい力を発揮するものです。第二電電の創設、日本航空の再建も、最初から達成するための考えやアイディアがあったわけでは全くありません。いずれも最初は空想みたいな「思い」から始まっていったものです。その「思い」を明確にし繰り返し、繰り返し思い続けることで、空想みたいな「思い」が、想像を遥かに超えた素晴らしい未来をもたらしてくれるのです。「思い」というのは、それほど凄いパワーを持っているのです。ですから「こんなこと思っても高望みではないか」とか「どうせ実現しないだろう」などと決して思ってはいけません。実現したいことを鮮明にし思い続ければ、それは必ず実現されるものと信じることです。それが「世のため、人のために尽くす」純粋で美しい「思い」であれば、自分の能力を超えて周囲の人々、さらには自然の力も得て実現する可能性も高まっていきます。ただ、すぐに実現するわけではありません。やはり時間がかかります。私は今82歳になりますが、社会に出てから、これまで60年以上も「こうしたい」「こういう人間になりたい」という「思い」を強く持ってやってきました。その結果、いまは素晴らしい人生を全うできたと思っています。
こういう講話を聞くと、成功するには思うこと、強く思うこと、それなら私も出来そうだと勇気づけられます。ところが新しい実現したいことを前にすると、出来るかどうか、どうしたら出来るかと考えます。考えれば考えるほど問題点が次々出てきます。結局、出来ないと「思う」ことを止めてしまいます。稲盛氏のいわれる真髄は、どうしたら出来るかを考えるようにということではなく、実現したいと強く「思う」ことです。
◆電電公社の時代、通信事業は独占で、日本の電話料金が海外に比べて異常に高いことが問題になっていました。そこで自由化され、どこでも参入することが出来るようになりました。ところが巨大な電電公社に対抗して、リスクを冒して参入しようとする企業は現れません。稲盛氏は、日本のために、どこかがやらねばと第二電電を創設することを決意されるのです。セラミックを作っていた京セラに、通信に関する技術も技術者もゼロです。資金も電電公社に比べたら無いに等しい状態です。出来るかどうかよく検討したうえという発想なら、間違いなくやるべきでないという結論になります。
◆私達が認識すべき大切なことは、「強い思い」は、必要なものを吸引し続け、徐々に実現する環境が整えられていくということです。どんなこともすぐに実現するわけではありませんが、最後には実現されるのです。第二電電の創設や日本航空の再建などの例を取り上げると、私達とは次元が異なる世界の話のように思えますが、次のような方法で、「思い」の力を活用すればいいのではないでしょうか。
◆「アファーメーション」とは実現したいことを簡単な一文にし、反復することです。
実現したいことを、次のような一文にします。「〇〇〇が達成できました。ありがとうございます」
※ 〇〇〇の内容は明確に(漠然と達成されるということはありません)
※ 達成できました、と完了形で(既に達成されたものと思うために)
※ “ありがとう”を付ける(否定的な思いにならないため)
このアファーメーションを繰り返し、繰り返し、自分に言い聞かせ続けるのです。反復によって「潜在意識」に摺り込まれ、目標は心の中では既に達成されているのです。信じるとは、このような状態をいいます。そして信ずれば成る(信成万事)、信じる者は、どんなことでも出来るのです。
神様に願い事をする時
多くの場合「〇〇〇が、実現しますように」とお祈りします。神様はいずれ達成してやろうと思われるでしょうが、「〇〇〇が達成でき、ありがとうございます」とお祈りされ、その達成の感謝までされると、神様は急いで実現しなければと働いてくださいます。実際神様にお祈りする時は、もう既に達成されたものとして「感謝の祈り」を捧げるのが効果的だといわれています。「潜在意識」を、全能の力を持つ神と考え反復すればより効果的です。
倫理法人会でも、「予祝」といい、できたと宣言してお祝いを事前にするのです。何度も何度も潜在意識に入れ込むと、本当に本気になって実現するのです。