100年企業創り通信
2022.02.18 Fri
令和5年10月1日から、適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が新たに始まるわけですが、インボイス番号を持たない免税事業者も消費税を請求出来ることが制度の前提になっています。そして、令和5年10月1日から最初の3年間は免税事業者の請求する消費税額(110分の10)の80%を、取引相手は、仕入税額控除可能とし、次の3年間は当該(110分の10)の50%を仕入税額控除可能とし、その後は0%としています。
取引相手の仕入側としては、110分の8又は5が仕入税額で、税抜き購入価格は110分の102又は105となり、6年経過後は110となります。従って、購入価格の値上げが起きたことになります。
BtoBでの取引弱者に該当する多くの免税事業者は、少なくとも、値上げとなる部分の取引価格の減額を要求されるはずです。
公正取引委員会は、「インボイス対応Q&A」を発表し、取引上優越した地位の立場で、免税事業者である仕入先に対して、発注時に定めた下請代金の額を減じた場合には、下請法で禁止している下請代金の減額や買い叩きとして問題となるとしています。
そう言いながら、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者に対して取引価格の引下げを要請し、交渉において、仕入税額控除が制限される分について、双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではない、としています。
公取委の態度は実効性を無にする
公正取引委員会のスタンスは、仕入側の控除消費税額の制限による損失分の値下げは問題なしではあるが、免税事業者自身が負担している仕入消費税分にまで食い込むようなことになってはならない、との、幅のあるものです。免税事業者が、消費税の損税化(不転嫁による自己負担化)という事態に陥ることは、独禁法上としても見過ごせない問題なのでしょう。
しかし、消費税の請求額をゼロとして、免税事業者に於いて発生している前段階消費税を取引価格へ上乗せする(値上げ)というような話し合いは、現実性が乏しく、公取委の見解表明は実効性を伴わないアリバイ作りのように感じられます。
新型コロナウイルスのオミクロン株による感染の急速な拡大に伴い、確定申告期間(2/16~3/15)にかけて、感染してしまった方や濃厚接触者認定で自宅待機を余儀なくされてしまった等で、令和3年分の確定申告が遅れてしまう人が増加することを想定し、国税庁は令和4年4月15日までの間については「簡易な方法による個別延長」を認めることとしました。
「簡易な方法」というのは文字通りで、本来ならば提出が必要な「延長申請書」を必要とせず、申告書を提出する際に余白等に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と書き添えるだけで、4月15日までの間であれば、申告・納付期限を延長することができます。
なお、個人の所得税・消費税の申告だけではなく、法人税や相続税といったその他の税目についても、4月15日までなら簡易な方法で延長の適用を受けることができます。
あくまでも今般のオミクロン株による感染の急拡大に向けての措置なので、令和4年1月以降に申告等の法定期限を迎える手続が対象となっています。例えば新型コロナウイルスによる影響であっても、令和2年分の確定申告を令和4年4月1日に提出する場合は簡易な方法による個別延長の対象にはならず、延長申請書に申請理由等を記載の上、提出する必要があるのでご注意ください。
また、令和3年分の確定申告であっても、4月15日を過ぎて申告する場合は同様に、延長申請書が必要となります。
4月15日までの簡易な方法による申告期限の個別延長を申し出た場合は、原則申告書を提出した日が申告と納付の期限となりますので、3/16日以降の申告を行う場合は、納付が可能になった時点で提出するようにしましょう。
納付が困難な場合については、納付の猶予制度も適用可能ですから、納税資金に不安がある場合は、活用を検討してもいいかもしれません。
M&Aでの企業の規模拡大戦略が模索される中、新たに子会社になった企業に、役員や幹部社員として出向や転籍をさせる要員が必要となります。そして、一定の期間経過後に、出向元や転籍元に復帰することも普通に想定されることです。
復帰に際して、出向先や転籍先での功績顕著な場合、退職金等で報いる、という選択肢もあり得ます。そんな場合、出向・転籍先での役員又は使用人としての勤続期間が5年以下の場合は、課税関係が複雑になります。
現在の退職所得課税での税額計算式は次の3つに分かれています。
①(収入-退職所得控除額)÷2×税率=
②(収入-退職所得控除額)×税率=
③(収入-退職所得控除額-150万)×税率=
上記の②は、勤続年数5年以下の短期役員退職給与(法人役員・議会議員・公務員)に対する課税方式で、2分の1計算が適用除外です。この②は、平成24年改正で措置されたものです。
③は、②以外の勤続5年以下の短期退職給与で、退職所得控除後の額が300万円超の場合の課税方式です。300万円超過部分についての2分の1計算を適用除外とするとの趣旨の算式です。③は、令和3年度の税制改正で制度創設され、令和4年分以後の短期退職給与について適用されます。
①は、それら以外の一般退職給与及び退職所得控除後の額が300万円以下の短期退職給与に対しての課税方式です。
その年中に支払われる退職給与が、①、②、③の複数ケースに該当する場合の退職所得控除額の計算方法は、それぞれ期間の重複がなく、20年以内の場合には、②では〈40万円×役員勤続年数〉です。①③では、〈40万円×総勤続年数-②の額〉です。使用人兼務役員としての勤続期間がある場合は、役員と使用人との期間の重複があることになるので、その重複期間についての②は、〈20万円×重複年数〉となります。
なお、①②③のそれぞれで計算される退職所得控除額がそれぞれの収入金額よりも少なくマイナスとなるケースがある場合には、そのマイナス額は、他のプラスとなるケースから控除されます。
昭和の土地バブルの時代には、頻繁に住宅を買い替えることにより、よりリッチな物件に住み替える、という事例が沢山ありました。所有によりアパート賃料分が留保されるだけでなく、所有により含み益が蓄積される、という効果が人の心を動かしました。
現在は、マンションバブルの傾向を示しています。首都圏では2000年以降、近畿圏では2010年以降に建築した中古マンションの譲渡価格が新築時の価格を上回る傾向にある、との民間公表データもあります。譲渡益も、建物の減価償却があるから譲渡益が出るのではなく、その償却額を超える譲渡益が出る、という事です。
令和2年の税制改正で、住宅ローン控除の規定の「翌年又は翌々年中」という文言が「翌年以後3年以内」という文言に改正されました。これは、会計検査院が措置法特典の不適正な重複適用として実態報告をしたことに端を発しています。会計検査院の検査報告によると、新居を購入して住宅ローン控除を受けている人で、旧居に居住しなくなってから3年目に旧居を売却して居住用資産譲渡の3000万円特別控除の特例の適用を受けていた人が平成28年、29年の2年間で37人いたとしています。そして、この37人の重複減税額の合計が5011万円であった、としています。税率で割った一人当たり平均譲渡益は900万円前後です。会計検査院の検査した事例も、最近の不動産バブルを反映しています。
今はマンション住み替えの都度、譲渡益が発生する時代になっています。そして、期間が3年超ならば、3000万円控除の連続適用が可能です。さらに、住宅ローン控除の適用を受けていたとしても、その居住物件の譲渡による譲渡益に対する3000万円控除の適用も可能です。
会計検査院の指摘と紛らわしいところですが、同一物件に係る譲渡益に対する3000万円控除の適用と住宅ローン控除の適用には、特例併用の制限はされていません。会計検査院の指摘したのは、異なる物件での住宅ローン控除と3000万円控除の重複適用の場合の事なので、同一物件での重複適用に対する注文ではなかったのです。
勤務する前の雇用契約時には労働日や勤務時間を確定的に決めず、一定期間ごとに作成される勤務割りや勤務シフトなどにおいて初めて具体的に労働日や労働時間が知らされるような勤務形態があります。
このような形態は柔軟に労働日や労働時間を設定できる点で当事者双方にメリットがありますが、事前にはいつ働くか、何時間くらい働くかおおよその情報はわかっているものの、シフト表ができて初めて知るケースも多いものです。そのため労使紛争になってしまう場合もあります。
厚生労働省でこのような形態で働く人のための雇用管理について留意すべき点をまとめました。
労働契約の締結時にすでに始業・終業の時刻が確定している日については労働条件通知書などに「シフトによる」等と記載するだけでなく労働日ごとに始業・終業時刻を記載するようにして、労働契約の締結時にその時の一定期間のシフト表等も併せて労働者に交付しましょう。
休日についても事前に具体的な休みや曜日が確定していない場合でも、休日の設定に決めている事項は明らかにしておかなければなりません。
アルバイトやシフト制で働いていても年次有給休暇は発生します。所定労働日数や労働時間数に応じて法定の日数の年次有給休暇が発生します。原則は本人の請求する時季に与えなくてはなりませんがシフトで出る日だから休ませないということはできません。もちろん使用者には時季変更権もありますから話し合って調整はできます。
休む労働者側もシフト表ができる前に休む予定がわかっているなら、休む日はシフトから外してもらうなど事前に申し出することは必要でしょう。
また、シフト制労働者を会社都合で休ませる時は平均賃金60%以上の休業手当が必要です。
しかし、昨今のコロナ禍の状況でシフト制労働者に賃金を支払えない場合であれば給付金の申請等をしてあげるなり、申請を本人に知らせてあげるのがよいでしょう。