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『人を育て、活かすしくみ』(片山修)第3974号

2022.02.17 Thu

伊那食品の人財育成は「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」の徹底、「100年カレンダー」を通した人間教育など新入社員研修、さらに「月例会」の企画、運営、司会を若手社員に任せる制度などがあげられる。

なかでも、全社員の人財育成の場であると同時に、もっとも社員に浸透しているのが「掃除」である。

本文で紹介したように、毎朝、始業までの時間に、全社員が30分から40分、自主的に会社敷地内の清掃を行っている。

伊那食品工業に限らず、「掃除」に力を入れる経営者は多い。

ホンダ創業者の本田宗一郎は、工場の整理整頓を説き、「工場を汚くし、不整理、不整頓のままにしておいて顧みないような心からは、決して、優れた製品は生まれない」と語っている。

また、松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助も、掃除を推奨した経営者として知られるが、製造業ではとくに、「5S」を徹底して教え込む企業はたくさんある。

掃除は、チームワークを育む。

また、継続して社屋や工場、トイレなどを自分の手で磨き上げることは、愛社精神や帰属精神の醸成につながる。

掃除の段取りを行うことによって、仕事において段取り力がつく。

さらに、どこか汚れているか、いつもと違うところはないかなど、小さな変化が目に留まるようになる。

つまり「気づき」の力が養われる。

客人から見て、社屋や工場がどう見えるかなど、会社を客観的に見るトレーニングにもなる。

伊那食品工業は、会長の塚越寛の唱える「凡事徹底」の一環として、社員が自発的に毎日の掃除を続けている。

当たり前のことを、当たり前にきちんと続けることが、社員の士気や道徳意識の向上、すなわち人財育成につながると考えている。

さらには、毎日自主的に掃除を続ける行動が世間の尊敬を集め、ファンづくりにつながるのである。

(片山修 著『社員を幸せにする会社』より)