100年企業創り通信
2022.02.04 Fri
確定申告書の提出後に、手続を失念したことや、有利な選択をしていなかったことに気が付くことはよくあります。ただ、後で訂正できるものと訂正できないものがありますので、いくつか例を挙げていきます。
(訂正・適用できないもの)
1.確定申告で上場株式等の配当等を申告しなかった場合(申告不要を選択)
申告不要の選択制度を適用するかどうかは確定申告時に行います。上場株式等の配当等を申告不要として確定申告した場合には、その後に修正申告書を提出し、申告不要をやめて、総合所得として申告を行い、配当控除の適用を受けることはできません。
2.確定申告をしたのに、住宅借入金等特別控除を単に失念していた場合
住宅借入金等特別控除の適用を受けるためには、適用を受けようとする年分の確定申告書に一定の書類を添付して提出しなければなりません(この手続は、期限後申告の場合でも認められます)。
既に確定申告書の提出が済んでいる場合は、「やむを得ない事情」があれば適用が認められますが、判例では、単なる失念については認めていません。
ただし、申告済の年の適用を受けることはできませんが、適用年数内に期限未到来で残っている期間があれば、その期間分は確定申告書に書類を添付して提出することで、適用を受けることができます。
3.控除対象扶養親族の差替え
夫Aが確定申告で子Bを控除対象扶養親族として申告し、妻Cが給与所得者で子Dを控除対象扶養親族として年末調整している場合には、CがDを控除対象扶養親族から外して確定申告し、Aの控除対象扶養親族として更正の請求をすることは認められません。
(訂正・適用できるもの)
1.譲渡所得を概算取得費で申告した場合(実際の取得費への差替え)
概算取得費によって申告していた後で実際の取得費が判明し、その金額が概算取得費の金額を上回ることが証明された場合でも、更正の請求が認められます。
2.給与所得の特定支出控除への選択替え
当初申告要件が廃止されたため、選択替えが認められます。
新型コロナウィルスの変異株「オミクロン株」の世界的な感染拡大。令和3年末より政府の水際対策も強化されました。外国から帰国された方も関係者も大変ですね。
ここでは、次のような米国からの帰国者の所得税の事例を検討してみましょう。
グリーンカードを有していない日本人は、次のSubstantial Presence Test(実質滞在テスト)を満たす場合、米国の税務上、米国居住者として取扱われます。
Aさんは、①と②を満たすため、米国居住者とされ、その年分の課税所得についてIRS(内国歳入庁)に個人所得税申告書(Form1040)を作成し、申告納税を行わなければなりません。申告期限は翌年4月15日ですが、最長10月15日まで延長できます。
日米租税条約14条(給与所得)には、短期滞在者免税の規定があります。Aさんは、12カ月の期間を通じ滞在期間が183日を超えており、この規定は適用されません。
Aさんは派遣期間が予め1年未満とされており、出国時に日本居住者とする取扱いをしている場合には、変更する必要はありません。この場合、Aさんは、日本居住者として、全世界所得につき日本の所得税の申告義務を有することになります。
この場合、米国と日本の所得税が二重に課税されてしまっているので、日本側で外国税額控除を適用できます。ただし、米国の申告期限が4月15日なので、日本の申告期限に間に合わないことも有り得ます。
実務では、当年分の所得税申告で明細書を添付し、翌年分に外国税額控除余裕額を繰越すやり方も考えられます。
個人の所得・控除によって決まる控除上限金額までの寄附なら、自己負担が2,000円で返礼品が貰えるふるさと納税制度。ワンストップ特例を利用しない方は、そろそろ確定申告のご準備をお願いいたします。
今や多くの方に認知されている制度ですが、「総務大臣が指定する自治体への寄附」でないと、ふるさと納税の寄附金控除が受けられないのはご存じでしょうか?
総務省は過熱するふるさと納税に対して、平成31年に返礼品等の調達に対するルールを定めました。いわゆる「お礼の品は寄附額の3割以下で地場産品」というものです。このルールを破った自治体は、2年間指定を取り消され、ふるさと納税の寄附については控除が受けられなくなるため、実質的にはふるさと納税の運用ができなくなります。
皆さんが普段ふるさと納税を行うポータルサイト等では、指定取り消しを受けた自治体への寄附ができないように処置するので、あまり利用者には見えないものですが、直近でいえば令和4年1月17日付で、宮崎県都農町が指定取り消しとなり、翌日18日付の寄附から2年間は、ふるさと納税の寄附金控除が受けられなくなりました。なお、それ以前の寄附については通常のふるさと納税扱いとなりますのでご安心ください。
都農町のケースは「格安な牛肉を返礼品として用意したが寄附が殺到して、当初の取扱い業者の手に負えなくなり、町が割高な代替品を調達してしまい、結果お礼の品の価値が寄附の3割を超えてしまった」という顛末です。
ふるさと納税を集めたい、そしてふるさと納税額を持続してゆくために設備投資等をしてゆくというサイクルの中で、指定取り消しで2年間は多額の取引を失ってしまい、結果として「ふるさとの衰退」を招く可能性があります。節度のある制度の活用を心がけていただきたいものですね。
2年以上に及ぶコロナ禍で採用活動においても例年通りにはいかない企業も多いことでしょう。長期的には人手不足がいわれる中、新入社員の離職率は現在どのような状況でしょうか? 厚労省の調査によれば令和2年度における学卒就職者の離職率は例年に比べて低下しているというものの就職3年以内の離職率は新規高卒では36.9%、大卒では31.2%となっているそうです。事業所規模が小さくなるほど離職率は高くなることは示されていますが、そもそも中小企業に新卒が少ないということもあるでしょう。いずれにしても、人材確保を確実にするためには離職率の低下を重要視すべきでしょう。
長期化するコロナ禍は学生の意識にどのような影響をもたらしているのでしょうか? 就職情報会社ディスコの調査では2021年10月1日の内定解禁日における2022年卒の学生の内定率は88%、12月では95%と昨年のコロナ禍での内定率に比して順当に進んでいます。
また、同社が2023年卒予定学生にモニター調査をしたところ1学年上の先輩と比較して「就職が厳しくなる」、「やや厳しくなる」と答えた学生は51.1%で前年調査93.7%より大幅に減少しています。逆に「やや楽になる」が前年6%から48.8%と急増しています。「厳しくなる」と「楽になる」がほぼ半々で見方が分かれています。
では学生はどこを見て企業を選ぶのでしょうか?(社風・人/仕事内容/給与・待遇/勤務地/企業規模で見てみます)。最も「強くこだわる」のが「社風・人」57.5%で「ややこだわる」も合わせると92%に上ります。「仕事内容」も91.3%、次が「給与・待遇」が86.4%、「勤務地」が68.6%、「企業規模」は56.6%となっています。要約すると「どこでどれだけのことをしてくれるのか(待遇)」よりも、自発的に「どんな企業環境で何がしたいか」を重視しているという結果です。
とはいえ、待遇が悪くては他の企業に見劣りしますね。ハローワーク等で給与や休日などを調べ、待遇を把握し、自社の採用活動に臨みましょう。
有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者等、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取り組みをした事業主に対して取り組み内容に応じて助成する制度です。今までよりもさらに給付が拡充しました。
① 実務経験のない有期契約社員等に研修を実施
② 最低20時間以上のOFF-JT研修を実施
(OFF-JT研修とは通常の生産活動と区別して業務外で行われる事業内または事業外職業訓練)
研修の流れは次のようになります。
① 社内研修は20時間のOFF-JTの受講で1時間につき760円の助成金を賃金助成として申請できます。代表者や社員が講師になっても対象になります。
② 社外での研修費用の70%が経費助成されます(上限15万円/人)。
③ キャリアコンサルタント面談、ジョブカードの作成、訓練日報を作成します。
④ この後キャリアアップ助成金正社員化コースを利用し有期契約社員を正社員に転換し、6か月勤務すると申請できます。通常は1名につき57万円の助成金ですが、研修を経て正社員へ転換した場合は通常の助成金額に加え1人当たり95,000円の加算助成金が受給できます。
例えば有期契約社員で入社から2か月間に合計300時間の研修を実施(OFF-JT 30時間+OJT 270時間)した場合、
ア. 1時間760円×300時間=228,000円
イ. キャリアアップ助成金の申請は通常雇用から最低12か月かかるところ、研修の助成金を受給していると有期雇用期間が6か月から2か月に短縮されます。つまり8か月で申請できます。
キャリアアップ助成金57万円と加算金95,000円で=665,000円受給できます。
新人に研修を必要とする職種であればすでに研修を行っていると思いますし、くり返し使えるので利用されると良いでしょう。