100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.59

2021.10.15 Fri

死亡退職の場合の給与計算

社員の死亡退職の際の給与計算

在職社員の死亡退職に係る給与計算は、通常退職の手続きと、少し違ってきます。死亡後に支給期が到来する給与の振込は、本人口座が凍結されるので、遺族の口座となります。また、社会保険の脱退や埋葬料の請求等で遺族に手続きを依頼する場面も生じます。会社側も慌てず粛々と手続きを進めて下さい。

給与課税は、死亡前に支給されたものが対象となり、「給与所得の源泉徴収票」の「支払金額」欄には、死亡前に支払が確定している給与の合計額を記載します。年末調整は死亡時の扶養等の現況で行います。死亡後に支給期の到来する給与については、相続財産となり、所得税の課税対象となりません。

給与から控除している住民税の特別徴収は、死亡後に支給する給与から一括控除して会社が納付するのか、後日遺族が普通納付するのか、遺族に意向を確認します。それを受け、会社が「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出します。

課税関係の精算は遺族が行う

会社側で年末調整が行われますが、医療費控除等がある場合は、相続人が被相続人の確定申告(いわゆる「準確定申告」)を行うことで、所得税関係の精算ができます。

遺産が相続税の基礎控除額を超えていれば、相続税の申告も必要です。死亡後に支給期が到来して相続人口座に振り込まれた金額も相続財産ですので、申告漏れのないよう留意が必要です。

社会保険ほかの手続き

社会保険と雇用保険で資格喪失手続きを行います。死亡日=退職日となり、資格喪失日は死亡日の翌日となります。社会保険料の給与からの天引きがひと月遅れで、資格喪失前の社会保険料の納付義務が発生していた場合には、最後の給与から控除します。健康保険証は返却してもらいます。

なお、遺族からの申請で、埋葬料・傷病手当金・高額療養費を受け取ることができる場合もあります。これらの申請には、種々の適用要件がありますので、会社もしくは会社の顧問社会保険労務士から遺族側に説明をし、会社が手続きを誘導して、申請漏れで受け取ることができなくならないよう迅速に対応を進めていくことが大切です。

免税会社の適格請求発行事業者 登録のタイミング

取引からはじき出されないための登録?

2021年10月1日から「適格請求書発行事業者の登録申請」が始まっています。2023年10月1日から消費税の仕入税額控除方式が、「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)」となるためです。

消費税で仕入税額控除を取るためには、適格請求書(インボイス)が必要であり、適格請求書を交付することができるのは、税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」に限られます。適格請求書発行事業者となるためには、消費税の課税事業者となって、発行事業者登録をしなければなりません。

免税事業者からの仕入税額控除に関して、6年間の経過措置はありますが、経過後は、インボイスを発行できない免税業者からの商品やサービスの購入では仕入税額控除が取れないため、取引の相手先として選ばれなくなる可能性が高いです。仮に選ばれたとしても、消費税額分の値引きを要求される可能性もあります。

登録すべきかどうかは経営面から検討する

消費税先進国の欧州でもそうですが、インボイスを発行できない事業者から仕入れを続けると自社が負担する消費税額が増えるため、免税業者は敬遠されがちです。よほど優位性がある商品やサービスでない限り、取引の相手先から外されかねません。

この適格請求書発行事業者となるか否かの選択は、経理の問題よりも、むしろ、ビジネスの経営面から考えるべきものです。

登録を決めた場合、2023年10月1日のインボイス制度開始と同時にインボイスの発行をするためには、2023年3月31日までに申請しなければなりません。

「登録における経過措置」利用がおススメ

免税事業者が適格請求書発行事業者となるためには、先に課税事業者登録をしなければなりません。しかしながら、ここにも経過措置があり、2023年10月1日の属する課税期間中に登録を受ける場合には、「消費税課税事業者選択届出書」の提出は不要です。何月が事業年度末月かにもよりますが、同じ事業年度内で、2023年9月30日までは免税事業者、10月1日から課税事業者となることもできます。また、「簡易課税制度」で、納税額が少なくなるようでしたら、その適用も検討してみるべきです。

テレワークの労働時間管理

テレワークでも労働時間の考え方は同じ

基本的には以前と同じ労働時間制度を使うようになるでしょう。1日8時間、週40時間制のスタンダードで固定的な労働時間制を敷いていたならそのままでよいし、今までフレックス制度や裁量労働制を適用していたら導入後もその制度を適用してもよいのです。ただ、通勤時間がなくなるとこれらの制度は変更される場合があるでしょう。

テレワークの勤怠管理

労働時間管理では「テレワークの勤務開始と業務終了が把握しにくい、休憩時間がとりにくい」などを懸念する場合があるかもしれません。ルール決めをしておけば勤務中か離席かわかりやすくなります。

①  始業時

業務開始時に「業務を始めます」という開始報告メール、チャットツール、電話等所定の方法で行います。

②  休憩時

休憩開始時に「休憩に入ります」という報告メールをします。

③  休憩終了時

休憩終了時に「休憩終了します。業務に戻ります」というメールをします。

④  業務終了時

業務終了時に「業務を終了します」という終了報告をメールでします。

近年は社員が勤怠打刻をスムーズに行えるようなクラウドのシステムもあります。

中抜け時間の取り扱い

在宅勤務で子供の送迎があったり病院などへ連れて行ったりと、私用で就業中に外出等があった場合は賃金支払いの対象外ですが、賃金カットでなく、始業終業の繰り上げ繰り下げで1日の所定労働時間は満たすことを認めている企業も多いようです。中抜けの際も連絡メールするようにルール決めは必要です。

時間外労働の取り扱い

在宅勤務では長時間労働になりやすい要素があります。夕食後に仕事を再開したり休日でも仕事をしたり、オンとオフの区別がつきにくくなりがちです。目に見える成果を上げたいと頑張って長時間になる場合もあるようです。このため一定のルール(時間外にメールの送受信を控える、アクセスの制限、残業の申請等)が必要になるでしょう。従業員の健康面と割増賃金のコストに留意しましょう。

オンライン会議 会議の効率を高めるには

コロナ禍でオンラインによる会議増加

テレワークに移行したものの平均で約17%も労働時間が増えたという調査結果がありました。特に社内会議が増えたそうです。オンライン会議は気軽に予約や招集ができるため社内会議の増加になっているのです。1週間の稼働時間の内4割程度が社内会議に費やされていたという調査結果もあります。社内会議に費やす時間を減らすには不要な会議をなくすことです。

会議の目標をはっきりさせておく

会議の目標をはっきりさせることが不要な会議を減らすために必要です。必要な会議でも出席者がその目標をきちっと把握していないと無駄になります。事前に会議の目的を全員が共有することが必要でしょう。

社内会議は「共有」「決定」「アイデア」に分類できますが、3分の2は共有に費やされている状況です。定例会議などはほとんどがこれに該当します。次に多かったのはアイデアであり、決定はわずか1割余りで決定を後にしていることが多いともいえるでしょう。

会議の良し悪しは準備次第

会議の出来は準備がしっかりできているかにかかわっています。しっかり準備して短い時間で成果の出る会議にすることが大事です。準備には何が必要でしょうか。

①  資料のフォーマットを統一

時間をかけて資料を作っても活用されなければ無駄になります。資料を見る方も多すぎると頭に入りません。会議資料は様式を統一して時数制限を設け入力も多すぎないようにします。事前に送っておくときに資料の意味、目的なども知らせ、見ておいてほしい場合は全体か特定の場所かを指示します。参加者のレベルがそろうと本題に早く入れます。

②  招集文の件名で参加者意欲を持たせる

会議に参加してもらうだけでなく受け身で参加するのでない、自分の役割を意識してもらう動機づけとなるようなタイトルをつけるのが必要です。会議目的が記載され、10文字後半から20文字前半位の文字数で参加者へのメッセージを伝えると会議がうまく進むそうです。

③  会議時間は内容にもよりますが45分程度がベストという結果が出ています。

嫁が養子となる事情

相続税の解説書を読むと、相続人の配偶者が被相続人の養子となっている事例に遭遇することがあります。養子縁組は相続人の数を増やすことにより、遺産に係る基礎控除額が増えるなど相続税対策として有用となりますが、配偶者を養子縁組する現実には、もっと切実で厳しい背景があります。

夫が親より先に死亡するリスク

たとえば夫が財産を持たずに高齢の親より先に死亡した場合、夫の配偶者にとっては将来、親の2次相続で親の財産が代襲相続人となる子供に移転してしまい、配偶者には引き継がれません。子供が将来、生活の面倒を見てくれるのであれば特段の問題は生じませんが、子供世帯の事情によっては自宅を売却することとなり、配偶者は家もなく財産もなく窮地に陥るリスクを負ってしまうことにもなりかねません。

嫁を守る養子縁組

夫の両親と同居している場合、自宅建物や敷地は、夫の親の所有となっていることが少なくありません。嫁が夫の両親の介護に努め、財産の維持管理を通じて貢献したにもかかわらず、夫に先立たれた途端、生活の保障がなくなってしまうというのでは、あまりにも可哀そうです。

この場合、夫が嫁をあらかじめ夫の親の養子にしておけば、親の遺産分割の際、相続人として財産分与を受けることができます。自宅や現預金を相続できれば、夫に先立たれたとしても自分の生活する場所と経済力を確保できることになります。

養子の課税上の扱い

民法では、養子は何人でも可能ですが、相続税法では、法定相続人の数に算入される養子の数は、被相続人に実子がある場合は1人まで、実子がない場合は2人までとされ、相続税額計算上のメリットは限定されるので留意が必要です。

夫の親が気持ちを伝える

長年の生活の中で嫁と夫の親との間に信頼関係が醸成されていても、夫が既に死亡している場合は、嫁から夫の親に養子縁組を言い出すのは難しいでしょう。

夫の兄弟も嫁が自分たちの親の面倒を見てくれていることを知ってはいるものの、各個人の置かれている状況によっては養子縁組に反対はしない、とは言い切れません。

とはいえ、夫の親が先に夫の兄弟たちに自分の気持ちを伝えれば、その想いも無碍にはできないのではないでしょうか。