100年企業創り通信
2021.09.03 Fri
消費税は資産の譲渡、資産の貸付、サービスの提供(非課税のものを除く。「課税資産の譲渡等」という)に課税されます。国内で課税資産の譲渡等を行う事業者は、消費税の納税義務者となりますが、一方で納税義務が免除される事業者もあります。自分が課税事業者なのか、免税事業者なのか改めて確認してみましょう。
事業者が国内で課税資産の譲渡等を行う場合、個人、法人を問わず消費税の納税義務者となります。
しかし、消費税を計算して申告納付する事務は煩雑であり、税務署にとっても負担がかかるので一定の配慮がされています。
次の要件に該当する事業者は、消費税の納税義務が免除されます。
・前々年、前々事業年度(基準期間)の課税売上高が1000万円以下
・前年1月~6月、前事業年度開始日から6か月間(特定期間)の課税売上高(又は給与等支払額)が1000万円以下
・個人事業者の開業年度とその翌年
・資本金1000万円未満である新設法人の設立1期目、2期目の事業年度 など
反対に、免税事業者以外の事業者は、次の場合に課税事業者となります。
・基準期間の課税売上高が1000万円超
・特定期間の課税売上高(又は給与等支払額)が1000万円超
・資本金1000万円以上である新設法人の設立1期目、2期目の事業年度 など
免税事業者に該当する事業者も税務署に申請して課税事業者となることを選択でき、税負担が有利になる場合があります。例えば設備投資を行った年度に、仕入にかかる消費税額を売上に係る消費税額から控除しきれない場合、課税事業者であれば差額の還付を受けることができます。
令和5年10月より課税事業者が仕入税額控除を行うには、仕入先から適格請求書の交付を受けることが必要になります。
反対に顧客に課税資産の譲渡等を行う際、適格請求書を交付しないと顧客の側も仕入税額控除ができません。交付には自ら課税事業者となったうえで、適格請求書発行事業者としての登録番号が必要になります。
昨年JIS規格の履歴書が様式集から削除され、新たに令和3年4月に厚生労働省で新様式が公表されました。
新様式は性別欄任意記載、かつ扶養家族数(配偶者を除く)、配偶者、配偶者の扶養義務、通勤時間の諸項目が削除されました。
① 性別の記載
性自認の多様な在り方に対応するため、性別欄は任意記載とされました。
② 扶養家族数、配偶者の有無、扶養義務の有無及び通勤時間
プライバシーの要素が非常に高いものとして項目欄を削除されました。公正な採用選考として、A応募者の基本的人権の尊重、B応募者の適性・能力に基づいて行うようにし、就職差別につながる恐れのある通勤時間や住居状況、生活環境、家庭環境などの把握は避けるとしています。扶養家族数や通勤時間は本人の能力と直接関係ない事項としています。
新様式の法的拘束力はないとされています。募集したい人材に応じて企業が独自の履歴書を使用することも可能ですが、就職差別につながる項目は避けるべきでしょう。独自の履歴書の場合、今回の改正点をあえて前と同じにすることは時代に沿ってないなと判断されることになるかもしれません。今後特に指定しなかったときは新様式で応募してくる人が増えるでしょう。
しかし採用側から見れば家庭の事情も知らずに働かせ、後でトラブルになっても困りますし、賃金額に影響するのに家族手当や通勤手当の金額が事前に把握できないのも問題です。
例えば扶養家族については「〇時くらいまで残業することがありますが対応できますか?」「全国転勤もあり得ますが対応できますか?」「月、年間の勤務時間の上限など希望はありますか」等を全員に尋ねることで厚労省の指導リスクは減らせるかもしれません。時間外労働や休日出勤、転勤、緊急対応等の可否情報を把握する必要がある場合は求人票、募集要項などに関連する情報を載せておくとよいでしょう。どのような情報が必要か質問を変えることの工夫が必要になるでしょう。
中年になって住宅ローンを終えたり子供が独立したりして家計に余裕が出るころは自分の老後のことが気になる時期でもあります。公的年金や預貯金以外に何に投資しておくのがよいのか、これから老後に備えても間に合うには何がいいのか迷うところです。女性の4人に1人が約95歳、男性は約90歳まで生きる現在、長い老後に備えて自助努力として税優遇制度の利用は外せないでしょう。
DCには企業型と個人型があり、企業型DCの場合、会社が掛金を出しますので会社に制度があれば利用したいところです。上限はDCのみであれば月5.5万円まで掛けられます(他との併用は月2.75万円)。口座手数料も会社持ちです。掛金は会社負担ですので所得控除にはなりませんが運用時は非課税で増やせます。受給時も退職所得控除や公的年金控除の税優遇対象になります。
また、自分で掛金を積み増す「マッチング拠出」の積み増し分は所得控除の対象です。導入している企業にいるなら利用したいところです。
勤務先に企業型の制度がないなら個人型のイデコ(iDeCo)の利用で掛金の所得控除を受けながら運用することになります。
自営業なら月6.8万円、会社員、主婦、公務員は月1.2万円~2.3万円が掛けられます。
確定拠出年金で積立てができるのは企業型が65歳未満、イデコは60歳未満でありますが22年5月からそれぞれ70歳未満、65歳未満に引き上げられます。ただし、イデコも60歳以上でも公的年金に加入する必要があります。加入年齢上限改定により受給開始年齢上限も70歳から75歳になります。
また、制度改正で企業型DCとイデコの併用は労使合意が必要でありましたが、22年10月からは原則併用できます。年齢が50代であれば給与がある程度高いので税制優遇による節税効果は大きくなるでしょう。
将来の年金受給見込み額が「年金定期便」に記載されてくるのでリタイア後の収入の予想で現在の生活費を基準とした老後資金の必要額を積立てで補いたいものです。
労働安全衛生法66条により、「事業者は、労働者に対し医師による健康診断を行わなければならず、労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければならない」とされています。こうした健康診断の受診費用は、通常必要と認められる範囲を超えるものを除き、会社の福利厚生費として扱われます。
なお、労働者ではない役員は、厳密に言うと労働安全衛生法の対象者ではありません。しかしながら、健康管理義務がないわけではありませんので、法律上での義務がなくても健康診断を受診してもらうことで、実務上のリスクを下げることができるため、同様に会社の福利厚生費となります。
ただし、受診費用の負担対象者が役員や特定の地位にある者だけとされている場合には、その者に対しての給与として課税されます。この場合には、経済的利益に係る給与として源泉徴収を行う必要が生じます。さらに、役員の場合、定期同額給与に該当しない給与(賞与)として法人税の課税対象として扱われることにもなります。
会社が役員または使用人の配偶者分の健診費用を負担している場合には、その役員または使用人の給与(経済的利益の供与)として扱われます。課税扱いとなる理由は、会社は、法律上、配偶者の健康診断の実施義務を負っているわけではないためです。
また、一部大企業では配偶者分も会社負担となっているところもあるようですが、まだまだ社会一般的に行われているとは認められていないため、経済的利益の供与=給与扱いとなります。給与扱いとなるわけですから、それに係る所得税の源泉徴収を忘れないようにしなければなりません。
会社の福利厚生費として扱われる健診費用は、自由診療に該当するため、消費税が課税されています。消費税の計算においては課税仕入れとして扱います。
一方、給与扱いとなる健診負担分(配偶者や特定の地位にある者だけへの負担)にも、消費税は課されています。しかしながら勘定科目上は給与扱いですので、消費税の計算においては給与=不課税となります。領収書に消費税額の記載があるからと言って、課税仕入れとして扱わないように注意が必要です。
厚生労働省は2018年1月以降、「モデル就業規則」に「副業・兼業」という章を追加し、副業・兼業を原則容認する内容に変更しています。
厚生労働省によれば、副業を希望する雇用者数(雇用者に占める割合)は、1992年の235万人(4.5%)から2017年385万人(6.5%)へ右肩上がりで伸びており、副業雇用者数も、1992年の76万人から2017年には129万人へ増えています。
中小企業には2020年4月(大企業は2019年4月)から、時間外労働の上限規制(罰則あり)が適用されています。
36協定による原則の上限時間(月45時間、年360時間)を超える場合は、36協定で特別条項を締結することにより、月100時間未満、2~6月平均80時間以下、年720時間以下までの時間外労働が認められます。
労働基準法38条1項では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、(中略)通算する」としており、事業主(会社)が異なる場合でも通算されます。
なお、労働基準法上の労働者でない場合(フリー、独立・起業、共同経営など)や、労働時間規制が適用されない場合(農業・畜産業・水産業、管理監督者など)は、労働時間を通算する必要はありません。
副業・兼業における原則的な労働時間管理のポイントは雇用契約を結んだ順番です。
例えば、A社(1日5時間、残業なし)で雇用されている労働者が、新たにB社(1日3時間、残業2時間)で雇用された場合、1日のうち、B社で勤務後にA社で勤務したとしても、後で雇用契約を結んだB社の2時間が時間外労働となります。
なお、副業・兼業開始前に両社の合計所定労働時間を法定内で設定する「管理モデル」を導入した場合は、法定労働時間を超えた時間に働いている会社で割増賃金が発生することになります。