100年企業創り通信
2021.08.20 Fri
賃借人がアパートやマンションを退去する時、次の入居者に貸せる程度にきれいすることが、賃貸借契約書では謳われております。これを原状回復工事費用と言います。
一昔前は、その費用は立場の弱い賃借人がすべて負担しておりましたが、裁判で争った事例もあり、現在では年月を経ることによる通常損耗(壁紙の劣化等)は賃借人が賃貸人に支払った家賃で填補されているとして、賃貸人の負担となっております。それを超える損失(備え付け器具等の破損等)は賃借人の負担となります。
実務では賃貸借契約時に詳細にどちらが何を負担するかを取り決めている場合がほとんどです。
アパート・マンションの家賃収入は居住用ですから消費税は当然非課税です。
賃貸人の負担する原状回復工事費用は家賃収入を得るための費用ですから、非課税対応仕入れとなり当然にも支払った消費税は消費税としては認識されず修繕費となります。賃借人の負担する原状回復費用は多くの場合、賃借時に賃貸人に預けた敷金や保証金で支払われ、残金が賃借人に戻ってきます。この賃貸人が賃借人の負担する原状回復工事費用を差し引いて敷金や保証金を返却した場合、差し引いた原状回復工事費用は賃貸人の役務の提供にあたるから賃貸人の収入で、なおかつ消費税の課税取引だと国税当局は言っております。
賃貸人は原状回復工事を請け負った工事会社にかかった費用を便宜上まとめて支払い、賃借人の負担分を預かっていた敷金や保証金から差し引いて返しただけです。
常識としては単なる「立替金」です。
上記取引を経理処理すると、以下になります。
原状回復工事費用を工事会社に支払時
(修繕費)全額/(現預金)全額
賃借人に負担分を差し引いて返却時
(保証金)全額/(雑収入)負担分
/(現預金)差額
(雑収入)が(修繕費)となる場合もあります。いずれにせよ費用と収入で処理されます。この辺からの非常識と思われます。
厚生労働省は夫婦共同扶養(いわゆる共働き世帯)における被扶養者の新認定基準を公表しました。
従前の取り扱いでは夫婦共同扶養において子供などを健康保険上の被保険者とする場合には、年間収入(当該被扶養者届が提出された日の属する年の前年分の収入)の多い方の被扶養者とすることが原則となっていました。
この度、年収がほぼ同じ夫婦の子について保険者間(それぞれの健保組合)いずれの被扶養者とするかを調整する間、その子が無保険状態になるのを避けるため、新たに基準が設けられました。
① 被扶養者とすべきものの員数にかかわらず被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする)が多い方の被扶養者とする。
② 夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は被扶養者の地位の安定を図るため届け出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。
③ 夫婦双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であって、その者に被扶養者とすべきものに係る扶養手当又はこれに相当する手当の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えない。なお扶養手当等の支給が認定されていないことのみを理由として認定しないことはできない。
④ 被扶養者として認定しない保険者は当該決定に係る通知を出し、その理由、標準報酬等を記載し通知する。
⑤ ④により不認定に係る通知を出した保険者と次に届け出された保険者との間で協議を行い、協議が整わない時は初めに届け出を受理した時点の標準報酬の高い方の被扶養者とする。標準報酬が同額であれば主として生計を維持する者の被扶養者とする。
⑥ 夫婦の年間収入に係る添付書類は保険者判断として差し支えない。
以上のように、過去の収入だけでなく過去現在、将来の収入も見越して扶養の判断がなされることになりました。
雇用契約で期間の定めある人が契約を更新し、その後退職した場合に自己都合による退職、契約期間満了の退職、雇止めによる会社都合退職いずれになるのか、離職理由で雇用保険の所定給付日数にも影響があるのでその内容を知っておきたいものです。
会社都合退職による離職は倒産解雇等による離職の場合ですが、契約期間満了の場合でもその事由によっては会社都合退職と同等の特定受給資格者に該当する場合があります。期間の定めのある労働契約が更新されなかったこと等特定理由離職者に該当することもあります。
この場合は所定給付日数が通常の自己都合退職の場合より多くなります。
契約期間の満了による離職は雇用期間の年数や契約更新の確約があったのか、労働者本人の更新希望の申し出はあったのかなどによって特定受給資格者、特定理由資格者、一般の受給資格者に分かれます。
① 雇用契約書に「更新する場合がある」と記載されているときは更新の確約はされていないと判断されます。
② 退職する有期雇用契約者は会社へ契約更新の申し出はしたのか。していれば特定理由離職者、していなければ一般の受給者になります。この場合は一般受給資格者でも給付制限はありません。
③ 雇用保険の受給資格は原則離職の日以前2年間に12か月以上の加入が必要です。会社都合退職は離職の日以前1年間に6か月以上の加入期間が必要です。
有期雇用の人がどの区分になるかを見る前提として次のA・Bがあります。
A. 会社と雇用期間の更新確約の有無
B. 労働者からの更新の申し出の有無
・A無B有(当初より「更新無」の場合)
契約期間満了による一般受給資格者
・A無B無……同上
・A無B有(当初より「更新する場合がある」の場合)……特定理由離職者
・A無B無(同上)……契約期間満了一般受給資格者
・A有B有(特定受給資格者2022/3/31迄)
・A有B無…契約期間満了による一般受給資格者
今年7月、OECDでGAFAなど多国籍企業に対する新たなデジタル課税の導入が大枠で合意され、同月、イタリアで開催されたG20においても承認を受けました。合意内容はこれまでの国際租税法の枠組みを超える画期的なものとなっています。
課税権はそれぞれの国が持ち、課税対象、税率などを定めます。国際的な経済活動には2国間で租税条約が締結され国内法に優先します。外国法人は国内源泉所得に課税され、事業所得は国内に有する恒久的施設(PE)に帰属する所得のみに課税されます。
一方、経済は国家の枠組みを超え、グローバル化、デジタル化が進み、多国籍企業は法人税率の低い国に拠点を構え、日本などサービス消費国にPEをもたずに事業展開することにより租税を回避できます。
OECDで合意されたデジタル課税は、多国籍企業に新たな課税の仕組みを設け、PEが設置されない消費国においても売上に応じて法人税を課税できるようにするものです。
第1の柱:グローバル収益に課税
グローバル収益が200億ユーロを超える多国籍企業を対象に、通常利益(税引前利益率を10%として算定)を超える残与利益(10%を超える部分の利益)の20~30%に対する法人税を、PEの有無にかかわらず、サービス消費国の間でそれぞれの売上に応じて按分します。
第2の柱:最低法人税率の導入
グローバル収益が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業を対象に、最低税率(少なくとも15%)による法人税を課し、子会社等が軽課税国にある場合は、子会社等に帰属する所得を親会社で合算し、最低税率までの上乗せ課税を行い(所得合算ルール)、親会社等が軽課税国にある場合は、子会社等の支払う使用料等は、最低税率の課税に服さない範囲で損金算入を否認する(軽課税支払ルール)など追加納税を課します。
これまで経済のグローバル化の中で企業を自国に誘致すべく租税競争が行われ、世界中で法人税率の引下げが行われてきました。今回のデジタル課税で設定される最低税率は多国籍企業に対するものですが、感染症の影響により世界中で財政支出が増大する中、財源確保のため法人税率の国際的な引下げ競争にも歯止めがかかりそうです。
税務署や銀行での窓口納付が基本だった納税方法も、24時間対応のコンビニ納付が導入され、平日の勤務時間以外にも納税ができるようになりました。そして手元のパソコンからインターネットバンキングで納付できるPay-easy(ペイジー)が使えるようになり、わざわざ納税のために外に出掛ける必要もなくなりました。さらに、クレジットカードでの納付制度の導入で、いま手元資金がなくとも、納付期限までに納税できるしくみも導入されました。最新の方法としては、スマホで納付書のバーコードを読んで納付が完結するモバイルレジがあり、これだと納付に必要な納付番号や確認番号の入力も不要の簡単版です。
モバイルレジとは、請求書に印刷されたバーコードをスマホで読み取り、ネットバンキング・クレジットカードでの支払いや、口座振替の申込みができるサービスです。コンビニや支払い窓口へでかけることなく、自宅で簡単に支払いができます。
税金のみならず、国民年金や国民健康保険、通販の請求書など、各種の請求書に対する納付にも使えます。
新しい方法がいつもお勧めというわけではありません。それぞれ長所(メリット)と短所(デメリット)があり、それを比較してご自身で決めることになります。
モバイルレジの場合、アプリ導入が必要です。ネットバンキングを使う場合、金融機関との事前契約が必要です。スマホ機器がモバイルレジ対応であることが必要です。支払金額は30万円以下に限られます。
クレジットカード払いの場合、税額の他に決済手数料がかかります。納税証明書(車検用含む)の発行は、別途申請が必要です。資金繰りからすると、実際の現金引落日は利用するカード会社との契約となりますので、納期限日よりも資金決済が後となります。また、クレジットカードで付与されるポイントの有効活用ができる場合もあります。
コンビニ決済も支払金額は30万円以下に限られます。
銀行等での窓口納付では、クレジット納付はできません。ただし、手数料は発生しません。