100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.32

2021.04.02 Fri

押印不要の書類が増えています

菅内閣は脱ハンコ、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を進めています。これに伴い、税務書類についても押印が不要となる書類が増えてきました。

 

税務署窓口における押印の取扱い

令和2年12月21日に「令和3年度税制改正の大綱」が閣議決定され、この中で、税務関係書類(国税に関する法律に基づき税務署長等に提出される申告書等)の押印の見直しが行われました。提出者等の押印をしなければならないこととされている税務関係書類について、一部の税務関係書類を除き、押印を要しないこととする方針が示されました。そして、この取扱いは原則として令和3年4月1日以後に提出する税務関係書類について適用する予定となっていましたが、一方で「改正の趣旨を踏まえ、押印を要しないこととする税務関係書類については、施行日前においても、運用上、押印がなくとも改めて求めない」ともされていました。

この閣議決定に基づき、全国の税務署窓口においては、本件見直しの対象となる税務関係書類について押印がなくとも改めて求めないこととしています。

 

振替納税やダイレクト納付の手続も

従来、振替納税やダイレクト納付をしようとする場合には、それぞれ「振替依頼書」や「ダイレクト納付利用届出書」に金融機関の届出印を押印する必要がありました。これらの手続も令和3年1月から、個人の方の振替依頼書及びダイレクト納付利用届出書をe-Taxで提出することが可能となりました。

さらに、振替依頼書等のオンライン提出においては、金融機関の外部サイトにより利用者認証を行うので、電子送信時に電子署名及び電子証明書の添付も不要となります。

 

押印が必要な書類も

とはいえ、担保提供関係書類・物納手続関係書類の一部や遺産分割協議書、特定個人情報の開示請求、閲覧申請手続など、押印が必要な書類もまだまだありますので注意しましょう。

令和3年4月1日から消費税の総額表示義務が再開します

総額表示義務

税抜価格のみの表示では商品代金を精算するまで最終的にいくら支払えばいいのか分りにくく、また、「税抜表示」の事業者と「税込表示」の事業者が混在していると価格の比較がしづらいといったデメリットがあったことから、消費税額を含む価格を一目で分かるようにするという消費者の利便性に配慮する必要がありました。このため、平成 16 年4月1日から、事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合には、消費税等の税込価格を表示することが義務付けられました。

総額表示義務の特例

その後、平成 26 年4月1日及び令和元年 10 月1日の二度、大きな改正が行われ、消費税率の引上げや軽減税率の導入があり、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保及び事業者による値札の貼り替え等の事務負担に配慮するする必要が生じました。このため、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」により特例が設けられ、平成 25 年 10 月1日から令和3年3月 31 日までの間、「現に表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置」(誤認防止措置)を講じている場合に限り、税込価格を表示することを要しないこととされました。

総額表示義務の再開

この特例の失効後の令和3年4月1日以降においては、消費者に対して価格を表示する場合には、消費税法の規定に基づき税込価格を表示することが必要となります。

以前の総額表示義務を経験されている事業者も多いと思いますが、以前とは税率も異なり、軽減税率も導入されていますので、注意が必要です。外食事業やコンビニエンスストアなどで店内飲食とテイクアウトの両方を行っている場合は、それぞれ異なる税率が適用されるため、①両方の場合の総額表示をするか、②片方の場合の総額表示をしつつ、顧客の意思表示により異なる税率が適用され、税込価格が別途計算されることがあり得る旨、店舗内の目立つ場所に掲示して一般消費者に対して注意喚起を行う必要があります。

リモートワークで気を付けたいリモハラとは

リモートハラスメントとは

新型コロナウィルス禍で定着してきたリモートワーク。仕事のやり取りがチャットやメール、Zoom等のビデオ会議になり相手への伝わり方が、対面より厳しくなったり冷たくなったりと感じる傾向があります。

リモートワークが進むにつれ、「リモートハラスメント」(リモハラ)が社会問題になりつつあります。リモハラとはリモートワーク中に起こるハラスメントを指し、業務中に起きるパワハラとセクハラのいずれかに当てはまる発言等をいいます。

例えば上司からオンライン会議に映った部屋の中のこと、服装や化粧のこと(程度の問題はあるが)、子供の声のこと等プライベートに関わる質問等、また、常に仕事をしているかの連絡や確認、やたらWeb会議をしたがる等があり、全てが法的なハラスメントに該当するわけではありませんが、リモートワークに付随する上司の過剰な干渉がリモハラと感じさせているようです。

リモート業務に上司も悩んでいる

リモート業務にストレスを感じているのは部下ばかりではなく、アンケートでは5割の管理職がリモート下で部下とのコミュニケーションで悩んでいるそうです。部下との距離感や指示出しのタイミング等、対面では気を使わなくてもよい場面でも悩んでいます。会社から部下とのコミュニケ―ション強化を言われても、ハラスメントと言われるのが怖く指示を出しにくいということがあります。上司にとってはリモートに伴う業務管理の不安やITツールに不慣れな人もいる中でストレスを引き起こしています。若手達からWeb会議から締め出しをされたケースも耳にします。録画機能があるツールの場合、事前に周知して言葉に気を付ける等注意する必要もあります。

生産性とハラスメント対策の両立

リモートワークの急速な導入は便利でもありますがストレスを感じる面も多くあります。そのことがハラスメントにつながる場合があると言えます。同じ行動・対応でも世代間ギャップがあることを認識しておき、上司の許可や報告が必要な事項はリモートワークルールで取り決めましょう。

ルールは監視強化等厳しくしすぎないこと、プライベートには立ち入りすぎないこと、不満の声には耳を傾ける等、ストレスを減らしコミュニケーションを円滑に進める環境を目指すのがいいでしょう。

法人会の「自主点検チェックシート」を活用していますか?

法人会とは

「税を味方に、強い経営を。」のポスターを目にしたことがありますか? そうです、企業を支える80万社の経営者ネットワーク法人会のポスターです。これを見て“なぜ税を味方にすると経営が強くなるの?”と疑問に思ったことはないでしょうか?

法人会は、昭和22年(1947年)4月の法人税の賦課課税制度から申告納税制度への移行を機に、申告納税制度の定着には納税者自身が団体を結成し、帳簿の整備、税知識の普及などを図る必要性が生じ、企業の間から自発的に誕生しました。そして、「法人会は税のオピニオンリーダーとして企業の発展を支援し地域の振興に寄与し国と社会の繁栄に貢献する経営者の団体である」ことを理念としています。さらに、研修活動や情報提供を通じて企業の健全な発展を支援し、税制提言等の活動を通じて、企業の事業継続を支援しています。

自主点検チェックシート活用のススメ

企業が発展し存続するためには、売上を増やして利益を上げることが必要ですが、同時に、内部統制面の強化や経理面の質を向上させることも重要な要素です。たとえば、せっかく売上を上げても適正に代金を回収できなければ利益は実現できませんし、内部の不正行為で蓄積された利益留保が食いつぶされるなどの、経営上の大きな問題に発展してしまうこともあるからです。

法人会では、企業の税務コンプライアンス向上のための取り組みとして、企業における内部統制面や経理面に関する自主点検を推奨しています。「自主点検チェックシート」や「同ガイドブック」は法人会のホームページ(http://tax-compliance.brain-server2.net/compliance/units/)からダウンロードできます。税のみならず、管理の点検項目も勘所をきちっと押さえていますので、使うことおススメです。

内部統制や管理は会社がする重要業務です

“経理は顧問税理士に任せているから当社は安心”という態度では、安全ではありません。会社自らがきちんと内部統制の体制を組み、管理を行うことが肝要です。

もちろん、こうした内部統制の構築や管理の運用については、顧問税理士に相談するとさらに貴社特有の観点についてアドバイスとサポートが受けられると思います。まだなら始めてみませんか、“自主点検”。

リモートワークでの人事評価

改めて人事評価の基本を

リモートワークが推進される中、決算期を迎える企業では、人事評価の時期が近づいてきていると思います。部下の姿が見えない中で、どのように評価を行えばよいのか、とまどっている管理職も多いと思われます。

一方で、部下の姿が見えないからこそ、仕事の成果や組織への貢献そのものに着眼して評価を行える状況ともいえます。これを機会に、管理職に対して、改めて評価基準や適正な評価方法を徹底しましょう。

一般にいわれる陥りやすい評価エラーとしては、ハロー効果(ある部分だけを見て全体を評価してしまう)や、近接誤差(評価時期に近い出来事を過大に評価してしまう)などがありますが、リモートワーク下において特に気を付けるべきは、以下の2つと考えられます。

<中心化傾向>

複数人に対して評価を行った際、優劣の差がつけられず標準評価によってしまうこと。評価対象の部下についてよく理解していない場合に起こりやすい。

<論理的誤差>

「後輩の面倒見がよい人間は、リーダーシップもとれている(だろう)」など、関連がありそうな項目について、類似した評価をしてしまうこと。具体的な事実やデータを重視せず、評価者の頭の中だけで考えてしまうと起こりやすい。

 

評価エラーを回避するために

前述の2つの評価エラーは、部下が仕事をしているプロセスが見えにくいことによって発生しやすいと考えられます。これらを回避するために、まずは評価基準に照らして、評価すべき具体的な事実や対象を見定めましょう。オンラインの利点は、メールなど文字での記録が残るため、あとから事実確認をしやすいということがあります。

やはり、部下とのコミュニケーションも大切です。結果だけではなく、そのプロセスを確認しましょう。どのようなことを考え、工夫したか。誰と協働して、どういった困難があったか。評価は、能力開発の機会でもあります。面談を制度化していない場合には、ぜひ対話の時間をとって、今後期待することも話してみてください。