100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.7

2020.10.02 Fri

コロナ対応休暇助成の期間延長

妊娠中の女性労働者の安全措置を

新型コロナウィルス感染症に関する母性健康管理措置として、休業が必要とされた妊娠中の女性労働者のために、有給の休暇制度を設けて取得させる事業主を助成する制度があります。この制度の運用期間が、一部延長されることとなりました。

延長となるのは、「事業主が対象となる有給の休暇制度を整備し、労働者に周知する期限」で、令和2年9月末までとなっていたのが同年12月末までとなります。

この制度は、正規雇用・非正規雇用を問わず、妊娠中の女性労働者について、年次有給休暇以外に休暇制度を整備し、実際に取得した場合に助成されるものです。具体的には、以下の措置をとった事業主が対象となります。

 

①新型コロナウィルス感染症に関する母性健康管理措置として、医師又は助産師の指導により休業が必要とされた妊娠中の女性労働者が取得できる有給の休暇制度(年次有給休暇を除き、年次有給休暇の賃金相当額の6割以上が支払われるものに限る)を整備し、

②当該有給休暇制度の内容を新型コロナウィルス感染症に関する母性健康管理措置の内容とあわせて労働者に周知し、

③当該休暇を合計して5日以上取得させる。

 

この①と②についての期限が、同年12月末までに延長となります(③の休暇の取得期限については、令和3年1月末までで変更ありません)。

助成金の内容と申請手続き

助成金申請期間は、令和2年6月15日~令和3年2月28日です。

助成内容は、有給休暇計5日以上20日未満で25万円、以降20日ごとに15万円が加算され、上限額は100万円です。1事業所あたり20人までが対象となります。(→https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000639253.pdf)

制度内容を就業規則に規定することは要件とはなっていませんので、まずは12月末までに制度を整備し、周知を行いましょう。

払わないと高くつきますよ 居飛車の税金

どこに払うの?「居飛車の税金」

将棋の藤井聡太さんが棋聖・王位の二冠を達成しました。若い人の活躍は気持ちがよいですよね。ところで、将棋用語に「居飛車の税金」という言葉があります。

「居飛車」とは、将棋の戦法の一つ。最初の配置から飛車を動かさないまま、序盤戦を戦うことです。この居飛車戦法を採用した際に、相手が「振り飛車」戦法で対抗してきた場合には、飛車側の端歩(▲1六歩)を突いておかないと相手の角が出てきて、相手に有利な局面となることが多いそうです。

この一手が「払いたくないけど、払わなければならない」という納税者の気持ちと一緒ということで「税金」なのだそうです。

税金を支払わないとどうなるか

現実に税金を納期限までに納付しなかった場合には、本来納めるべき税金の他に延滞税(地方税は延滞金)が加算されます。

さらに、これを放置しておくと、給与や預貯金、不動産が差し押えられ、差し押えられた財産が換価(公売等)されるなどの滞納処分を受ける場合があります。この手続は国税徴収法その他の法律に基づき行われ、本人の意思に関わりなく執行されます。

国税の徴収手続の流れ

国税の徴収手続の流れは、次のとおりとなります。

① 納税義務の成立、税額の確定

国税の納税義務は、それぞれの税法に規定する課税要件を充たした時に成立し、納税申告などの手続により確定します。

確定した税額は、国税通則法その他の規定に基づき、納付しなければなりません。

② 督促

納税者が国税を完納しない場合には、税務署長から督促状が送付されます。この督促は単なる納付を催告するだけのものでなく、滞納処分の前提手続になります。

③ 財産調査

滞納処分(差押え)の対象となる財産の発見を行う手続で、税務署等が官公署、金融機関、勤務先、保険会社などに調査を行います。この調査は本人に事前の了解を得ずに行うことができます。

④ 滞納処分

差押え、交付請求、換価、配当を経て、差押財産が換金され、滞納された税金に充てられることになります。

令和2年分から本格化 年末調整手続の電子化

所得税の確定申告や消費税、法人税、法定調書に続き、年末調整についても電子化が進んでいます。

年末調整手続の電子化とは

従来、年末調整では各種控除証明書を書面で収集し、各種の年末調整申告書を書面で作成するケースがほとんどでした。令和2年10月以降は、これらの各種控除証明書や各種年末調整申告書を電子データでやり取りし、これらを電子データのまま保存することも可能となります。これにより、手書きによる書類の作成や書類への押印も不要となり、書類保管コストも削減することができます。

勤務先(給与の支払者)の準備

①電子化の方法の検討

年末調整の電子化は義務ではありませんので、従来の方法によることもできます。また、会社の都合にあわせて部分的に電子化していくことも可能です。

②従業員への周知

年末調整のデータを提出する従業員にも事前準備が必要となりますので、電子化する際には、早めに従業員に周知する必要があります。

③給与システム等の改修

電子データを受け入れるには、現在のシステムの改修等が必要となるケースが多くなります。ソフトウェア会社や依頼している税理士事務所等へお問い合わせ下さい。

④税務署への届出

従業員から年末調整申告書を電子データで提供を受けるためには、所轄税務署長に「電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。

従業員(給与所得者)の準備

①年末調整申告書作成用のソフトウェアの取得

どの種類のソフトを利用するかは、勤務先の指示に従います。国税庁が無償で提供するソフトウェアは、10月頃リリースの予定です。

②控除証明書等データの取得

保険会社等から控除証明書データを取得します。マイナポータル連携を利用して一括取得する方法もあります。

増えている簿価修正規定

寄附の場合の簿価修正

100%支配関係下のグループ法人税制適用の状態に於いて、子会社同士で寄附が行われた場合、それらの会社の関係が寄附の受取法人・寄附の支払法人いずれにおいても益金不算入・損金不算入です。そして、親会社に於いて、寄附の受取法人の子会社株式の簿価をその受取寄附金の額だけ増額修正し、寄附の支払法人の子会社株式の簿価をその支払寄附金の額だけ減額修正します。

資本剰余金分配の場合の簿価修正

また、寄附ではなく、子会社から親会社に対して、資本剰余金の分配がある場合には、その資本剰余金の分配の割合相当の株式の発行会社への譲渡があったこととされ、その譲渡とみなされた割合だけ株式の譲渡原価が認識されるので、税務上の株式簿価は減額修正されることになります。

子会社株式簿価修正は、グループ法人税制で初めて出現したかのように見えますが、資本剰余金の配当の場合を見ると、法人税法の定めとしては、以前から株式簿価の減額修正を規定しており、それに、企業会計基準適用指針でも同じく定めるところでもあったので、この手法が援用されたものと言えそうです。

M&A会社配当の場合の簿価修正

さらに、子会社株式簿価減額修正の規定は、外国法人や非居住者が関わる会社をM&Aで子会社にした後、その子会社から一定の配当を受けた場合にも、配当益金不算入額相当額の子会社株式の簿価からの控除として、今年新たに立法されています。

ここでの一定の配当とは、株式簿価の10%を超える年配当で、M&A後の子会社の利益純増額を超え、かつ、2000万円超で、M&A後10年以内に受ける配当を言います。相当に大型の配当が対象です。

回避のための要件の株主名簿

なお、株式簿価減額修正規定の対象となる子会社は内国法人で、株式の50%超を親会社が保有し、かつ、設立時からM&Aまでの間において外国法人もしくは非居住者の株式保有割合が10%以上だった法人です。

この保有割合10%未満を主張するには、それを証明する書類を保存していることが要件とされていますので、親子関係が10年未満という場合で大型配当する時には、設立時からの株主名簿を揃えて置く必要があります。歴史のある会社の場合は、困難な課題になりそうです。

代表取締役の監督

代表取締役の贅沢

以前からその線引きが議論されてはいますが、代表取締役の行き過ぎた行動、例えば過度に華美なオフィス調度品や高級車、昨今ではカルロス・ゴーンのベルサイユ宮殿を借り切った結婚披露宴の一部を日産自動車が負担する等について、会社法ではどう監督しようとしてきたのでしょうか。

監督者としての取締役会

会社の所有者である株主は、株主総会で取締役を選び、取締役は取締役会で代表取締役を選任します。このため、取締役会は代表取締役の職務執行を監督するとともに解任する権限も持ちます。ただし、代表取締役の細かな個々の経営判断や指図までは踏み込まず、代表取締役の行動に特別な利害関係が認められる場合や、忠実に業務を執行していないと認められる場合、あるいは利益相反が起こっている場合等に限られます。

カルロス・ゴーンの日産取締役会での解任は逮捕後、つまり不法行為が明るみに出た後でしたが、取締役会の監督機能がうまく働いていたならば逮捕前に自ら解任していたのではないでしょうか。この反省を踏まえて日産自動車は取締役会の改革も行っているようです。

会社の不正が明るみに出た時にしばしば言われるのが、「監査をしていた公認会計士は会社の不正を見つけなかったのか」という疑問ですが、公認会計士は会計監査を行っているので関与先の業務上の不正については直接調査しないことと、監査中に発見した不正は取締役会に報告する義務がありますが、積極的に不正を見つけようとしているのではないのが実情です。

会社の不正行為の発見や防止については法務部や内部監査室がまずは関与しています。一方で取締役会は、取締役の不正を防止し会社業務全般の適正性をするための体制構築を決議しなければなりませんが、これを内部統制システムといいます。会計監査人の会計監査はこの内部統制システムに依拠する部分が多く、現代の監査手法ではその評価が極めて重要です。