100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.91

2022.10.07 Fri

職業安定法の改正 ~求人情報の取扱いが厳格化~

職業安定法の改正

2022年10月1日に、職業安定法が改正施行されます。

改正の目的は、求人者が安心して求職活動ができるよう環境を整備し、マッチング機能を向上させることとされています。

主な改正点は、①求人等に関する情報の的確な表示の義務化、②個人情報の取扱いに関するルール整備、③求人メディア等に対する届出制の創設の3点です。

いずれも求人に関する情報の取扱いについての改正で、求人に関して特に影響があると思われる①と②について解説します。

 

「求人等に関する情報の的確な表示」とは

対象となる求人広告や手段は、新聞・雑誌・その他刊行物、文書の掲出・頒布、書面、FAX、ウェブサイト、メール、メッセージアプリ、テレビ・ラジオ・オンデマンド放送など、ほとんどの媒体が対象となります。

求人企業には、求人情報と自社に関する情報について、虚偽の表示や誤解を与える表示をしないことに加え、求人情報を正確かつ最新の内容に保つことが求められます。

例えば、募集の終了や内容の変更があった場合には、速やかに削除し、内容の訂正を行うことなどです。

 

「個人情報の取扱いに関するルール」整備

求職者の個人情報を収集する際には、求職者が一般的かつ合理的に想定できる程度に具体的に個人情報を収集・使用・保管する目的をホームページ等に掲載することによって、明らかにしなければなりません。

例えば、グループ企業の採用選考にも使用するにもかかわらず、「自社の採用選考のために使用します」は、認められません。

これまでは、採用した従業員の個人情報保護が強く求められてきましたが、求人の応募者に対する個人情報管理についても、意識を高める必要があります。

求人メディアを利用する場合でも、届出がキチンとされている業者であるかの確認も必要となります。

消費税の基本的な仕組み

インボイス制度開始まで1年を切った

消費税のインボイス制度開始は令和5年10月1日の予定です。この「インボイス」とは、正確な適用税率や消費税額等を伝える書類のことで、インボイス制度が始まると、仕入先が免税事業者の場合、今まで認められていた「仕入税額控除」が認められなくなります。

免税事業者の方や経理にタッチしない方は「仕入税額控除? なんのことだ」と思われるかもしれません。まずは消費税の基本的な仕組みを理解しましょう。

消費税の内訳

消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く課税される税で、消費者が負担し事業者が納付します。

標準税率10%、食品等の軽減税率は8%となっていますが、そのうちの22/78、標準税率で2.2%、軽減税率で1.76%分は「地方消費税」として扱われ、いったん国の出先機関である税務署に納付され、地方消費税部分は統計数値に基づき各都道府県に分配される仕組みです。

消費税の負担と納付の流れ

消費税は、生産、流通などの各取引段階で二重三重に税がかかることのないよう、税が累積しない仕組みになっています。

 

各取引にかかる消費税の例(標準税率)

製造業:売上50,000(+消費税5,000)

卸売業:仕入50,000(+消費税5,000)

売上70,000(+消費税7,000)

小売業:仕入70,000(+消費税7,000)

売上100,000(+消費税10,000)

消費者:100,000(+消費税10,000)

 

上記の例示の場合、消費者が負担した消費税10,000円を、小売業者は仕入と売上の差額分の3,000円、卸売業者は差額2,000円を、製造業者は5,000円を納付する仕組みになっています。

先に述べた通り、インボイス制度が始まると、免税事業者から仕入れている場合「仕入先に払った消費税」が、差し引けなくなります。例示で言うと、卸売業者が免税事業者だった場合、小売業者は10,000円消費税を納めることになるわけです。

消費税の基本 免税事業者とは?

納税が免除される・されない条件

事業者が国内で課税資産の譲渡等を行う場合、個人、法人を問わず消費税の納税義務者となります。しかし、消費税を計算して申告納付する事務は煩雑であり、税務署にとっても負担がかかるので一定の配慮がされています。次の要件に該当する事業者は、消費税の納税義務が免除されます。

・前々年、前々事業年度(基準期間)の課税売上高が1000万円以下

・前年 1 月~6 月、前事業年度開始日から6か月間(特定期間)の課税売上高(又は給与等支払額)が1000万円以下

・個人事業者の開業年度とその翌年

・資本金1000万円未満である新設法人の設立1期目、2期目の事業年度 など

反対に次の場合に課税事業者となります。

・基準期間の課税売上高が1000万円超

・特定期間の課税売上高(又は給与等支払額)が1000万円超

・資本金 1000 万円以上である新設法人の設立1期目、2期目の事業年度 など

 

免税事業者も課税事業者になれる

免税事業者は、仕入れ等にかかった消費税額の控除ができないので、課税売上に係る消費税額よりも、課税仕入れ等に係る消費税が多い場合でも、還付を受けることができません。課税事業者になるためには「消費税課税事業者選択届出書」の提出が必要です。

例えば輸出業者の場合、輸出に関して消費税はかからないので、仕入れの消費税額の方が経常的に多いため、課税事業者になって還付を受けた方が有利になるわけです。

 

インボイスによって対応を迫られる?

令和5年10月1日から始まるインボイス制度では、今まで可能だった免税事業者への「仕入れで払った消費税」の仕入税額控除ができなくなります。免税事業者自身については今までと変わりはないのですが、免税事業者から仕入れがある課税事業者については、そのままの取引内容では納める消費税が高くなります。

ただし、経過措置があり、制度実施後3年間は免税事業者からの仕入れは消費税相当額の8割、その後3年間は5割を仕入税額控除できることとなっています。

男女賃金格差の公表義務化 ~対象は301人以上の企業~

男女賃金格差の公表が義務化されます!

厚生労働省は2022年7月8日、労働者301人以上の企業を対象に、男女の賃金格差の公表を義務づける女性活躍推進法の省令を改正施行しました。

常時雇用する労働者301人以上の企業は、事業年度終了後3か月以内に公表が求められ、最も早い7月決算の企業は、2022年10月末までに初回の公表が求められます。

 

「全労働者」「正規」「非正規」の3区分で

男女賃金格差は、「全労働者」「正社員」「非正規労働者(パート・有期労働者)」の3区分ごとに、男女別に平均年間賃金を算出し、男性の賃金に対する女性の賃金の割合を%で公表(小数点第2位を四捨五入、小数点第1位まで表示)します。

対象となる賃金は、労働基準法11条に規定する賃金、即ち「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払う全てのもの」です。退職手当及び通勤手当は除外しても構いませんが、算出方法は男女で同一に揃えなければなりません。

公表の方法は、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」や自社ホームページ等で、求職者が容易に閲覧できるようにすることが求められています。

 

具体的な公表のイメージ

厚生労働省が公表している「男女の賃金の差異の算出及び公表の方法について」によれば、具体的な公表イメージは、以下の通りです。

※男性の賃金に対する女性の賃金の割合

 

ちなみに2017年の日本の男女賃金格差は24.5%でOECD加盟国ワースト2位でした。更なる縮小が求められるところです。

働く高年齢者年金額増額 在職定時改定

60代後半の在職者に毎年年金額が増える

老齢厚生年金の受給権者が厚生年金保険の被保険者であった場合、今までは65歳以降の被保険者期間は資格喪失時(退職時、70歳到達時)にのみ年金額が改定されることになっていました。しかし働く高年齢者が増えて、就労を継続していることの効果が退職を待たずに年金額に反映されることになりました。年金を受給しながら働く人の経済基盤の充実を図るため、令和4年4月からは在職中であっても年金額を毎年10月分から改定する制度が導入されました。

在職定時改定とは

在職定時改定は毎年9月1日の基準日において被保険者である老齢厚生年金の受給者の年金額について、前年9月から当年8月までの被保険者期間を算入し基準日のある月の翌月(毎年10月)分の年金額から改定されます。

令和4年10月分については65歳到達日から令和4年8月までの厚生年金保険に加入していた期間も含めて年金額が改定されます。対象者となるのは65歳以上70歳未満の老齢厚生年金の受給者です。65歳未満の人は、老齢厚生年金を繰り上げ受給していた場合でも在職時改定の対象外です。    この在職定時改定は基準日の9月1日に厚生年金保険の被保険者である必要がありますが、9月1日に資格喪失をしてそこから1か月しないうちに被保険者の資格を取得した場合、9月1日の時点では被保険者ではないのですが、在職定時改定として年金額の再計算が行われます。

年金の一部か全額が支給停止の可能性も

年金の再計算が行われる結果、報酬との調整で年金の一部又は全額が支給停止になる場合がないとは言えません。年金支給停止額は次のようになっています。

停止額の計算

・基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以下の時=支給停止なし

・47万円を超える場合

(総報酬月額相当額+基本月額-47万円)×1/2 = 支給停止額 となります。

60代後半で新たに支給停止になる方は元々給与額が高めの方であったとも言えるでしょう。