100年企業創りレポート

藤間秋男の100年企業創りレポート
vol.281 2021.10月号

2021.09.30 Thu

1.会社が永続する「31の言葉」(創業120年・平山建設4代目 平山秀樹社長)

『会社が永続する「31の言葉」 創業120年・平山建設の隔世教育と思考習慣』平山秀樹(発行:日経BP)

(1)「後継者づくりが長寿企業の基本」

① 社長の最大最高の仕事は、次代を担える後継者を育てておく事だ。長期的視野で後継者を育て、はじめて安定した成長を継続する事が出来る。企業経営の基本に事業の永続を掲げる。レールの斜め継ぎのように前後五年程度は伴走する。

② 新しいことに挑戦する気概のない者はだめだと、(略)跡をとらせるのはやめることを決意した

③ (長女の)いちは、一緒に商売を始めてからあまりに(創業者の)金吉が厳しいので「私は本当にあなたの娘ですか」と聞いたことがあると生前言っていました。一代で商売を築き上げるには、相当な厳しさが必要だったのだと思います。

〈藤間の補足:創業者の金吉は、工場での働きぶりに惚れ込み著者の祖父にあたる清を長女いちの婿(=後継者)としました。その清にも厳しくし、清は体調が悪くても工場に出ざるを得なかったこともあったといいます〉

(2)「企業の永続が最大の顧客サービス」

① 顧客に対しての最大最高のサービスはその企業が永続する事だ。いくら十年保証、三十年保証と謳っても、三十年後にその企業が無くなれば誰が保証するのか。政府国家はそこまでは保証しきれない。

② 十年続いていても、百年続いても、企業に社員の危機感がなくなれば、あっという間に倒れます。最近の企業倒産のケースでも、伝統ある会社があっけなく倒れていく様を目の当たりにします。よくよく自分たちがお客様のお役に立っているか、あってよかったと思っていただいているか、「ありがとう」とお客様から言っていただけているか、自らに問いたいです。

③ 若手の定期採用、成長する職場づくりが不可欠です。大変なことがあっても、すべては永続のための試練であり、成長への糧です。

(3)「早起きの経営者に敗北なし」

(4)「寝る前の反省」

失敗の反省も大切だが、成功の要因を探る反省が成功の秘訣。

(5)「嘆きの人生から、喜びの人生へ」

主体的に生き、人頼りをしない。(略)すべてを自己責任で解決する。

(6)「今日は今日、明日を思い煩うこと勿れ」

今日のことは今日にて足れり。今日の日を精一杯生きれば達成感が得られる。よくやったと自分をほめてやる。明日を思い煩わずに安眠することが明日への活力。

(7)「借り方人生より貸し方人生」

ギブ・アンド・ギブで行く。ギブ・アンド・テイクでは貸借が零。貸越人生になってはじめて福が来る。

(8)「情理円満な人格を養成する」

① 慈悲心、心からの思い遣りで人はついてくる。

② 人を管理する能力、議長役や面接の能力は学ぶことができる。(略)根本的な資質が必要である。真摯さである。(ドラッカー)

(9)「難しくて儲からない職業を選べ」

新規参入が無いだけでなく、創意工夫の余地が多く、遣り甲斐がある。改善により、利幅も多く出せる。楽に儲かる商売は、新規参入が多く忽ち供給過剰になる。

(10)「人づくりこそ経営の基本」

人づくりは我づくり。経営者は社員を教育する前に、自分の人格をどう高めていくのかの修行が先決。(略)人生哲学・経営哲学を持つ。それはどんなものでも良いが、揺るがない、ぶれない事が大切。

(11)「経営は、営業、財務、人事」

トップは、この三つの全てに通ずる事が肝要。 (略) (後継者に)一部門、子会社の経営を立ち上げから経験させるのも手だ。

まだまだありますが、「31の言葉」のうち重要なものを11個に絞ってご紹介しました。私が常に学んで発信していることですが、創業者から引き継いでいる百年企業の話ですので重みが違います。私が学んでいる倫理法人会と通じるものがあります。特に(1)「後継者づくりが長寿企業の基本」と、(2)「企業の永続が最大の顧客サービス」にすごく共感。皆様に伝えたいです。

一倉社長学が、中小企業経営者に絶大な支持を得る理由  作間信司

「〔特別インタビュー〕一倉社長学が中小企業の経営者に絶大な支持を得る理由」

日本経営合理化協会 専務理事 作間信司(「時代を超える不朽の一倉定の社長学シリーズ 本&CD」パンフレットより)

(1)「良い会社とか悪い会社とかはない。あるのは良い社長と悪い社長である」「郵便ポストが赤いのも電信柱が高いのも社長の責任」~一倉先生の有名な言葉~

(2)一倉先生が経営者に伝えたかった三つのこと。

 ①「どんなことがあっても会社を潰さない」

a)高収益企業を目指すのは、潰れない会社にするため。

b)会社は社員の失敗で倒産しません。あくまでも社長の失敗で潰れるのです。社長は自分の失敗で潰れるわけですから、ある意味で自業自得ですが、社員はその道づれとなって家族は路頭に迷います。

だから、どんなことがあっても会社を潰してはいけない。そのために口を酸っぱくして「手形を切るな」と社長に言い続けました。

 ②「中小企業は、毎日が生き残りをかけた戦いである」

a)社長は競争の中でいかに戦い勝つかを理づめで考え、経営計画書を作って全員で実行する体制をとる。それが社長の大事な仕事です。

b)先生が烈火のごとく叱ったのは、事業がうまくいかない理由を社員のせいにしたときでした。業績責任は社長ただ一人が負うものであり、それこそ「社長の怠慢だ」と。会社の中で、社長を叱ることができる人は誰もいません。一倉先生に怒鳴られて、社長業に邁進し、立派な会社に成長させた方が大勢おられます。

 ③「経営は数字で考える」

a)なぜなら、会社は資金が枯渇した瞬間に潰れるからです。

b)7泊8日の長い合宿(一倉経営計画作成合宿ゼミ)で、参加された社長は、一倉先生の指導のもと、自社の経営理念を明文化し、自社の未来像とその実現のための行動指針「方針書」を書きあげます。さらにその裏づけとなる「目標貸借対照表」「売上利益計画」「資金運用計画表」の3表を作成し、高収益と強い財務体質づくりを目指します。

c)「仏造って魂入れず」という言葉がありますが、「仏」が「数字」だとすれば、「魂」が「方針書」に当たります。

d)また書くことは思考することであり、社長が深く、現場やお客様の動向を自分の足と目を使って見ないかぎり具体的に書けないので、現場を知らない社長は大変苦労します。

e)社長がお客様のところに行かず、社長室にでんと構えて指示を出す社長を「穴熊社長」と呼んで、穴熊社長にも烈火のごとく叱りました。

(3)社長の覚悟とは、「会社で起きることはすべて社長の責任」という覚悟であり、「自分以外はすべてお客様である」という地動説の経営観です。

会社経営はすべて社長の責任であり、景気や他人のせいにしてはならない。ポストが赤いのも電信柱が高いのもすべて社長の責任という考え方は絶対に必要な考え方です。

役員や社員は退職して逃げられますが、社長は逃げることはできないのです。この「覚悟」ができているかです。寝ても覚めても、どうやったらお客様に喜んでいただけるか、社員に喜んでいただけるか、社会の役に立つかと年中考え続けるのが社長だと思います。

TOMAも経営理念を作って20年。経営計画を立て始めて30年経ちます。社員、役員も育ち、私が会長になっても後継社長が育ち、成長し続けています。それは一倉先生のお話にあるように、経営理念の確立と浸透と、経営計画の立案と実行を続けているからだと思います。

3.部下に「使えない上司」のレッテルを貼られないための4カ条

「部下に『使えない上司』のレッテルを貼られないための4カ条とは?」

秋山進 プリンシプル・コンサルティング・グループ代表取締役(週刊ダイヤモンド 2021/09/04)

使えない上司とは、つまるところ「役に立たない上司」である。上司には、目標遂行のために業務のコントロールタワー的な役割と、組織全体をまとめていく役割が求められるが、昨今、特に「使えない」と言って不満が述べられるポイントは以下の四つだ。

① 情報伝達能力の欠如

a)必要な情報を必要な人にもたらしていない。

b)リモートワークでメンバーが毎日顔を合わせないことが普通になった。そのため、上司がコントロールタワーとして、必要な情報を必要な人に伝達するハンドリング能力が大変重要になっている。

c)管理職にはその立場にあるというだけで会社の経営戦略、新しい技術、競合や重要顧客の動向、政府関係の規制など、ありとあらゆる情報が会社から提供される。「使える上司」は、その中から自分の部署の特定のメンバーに関係しそうな情報を取り出し(略)適切な指示とともにその情報を流す。一方「使えない上司」は、自分に送られた情報を無差別に部下全員に全部転送するか、何もせずに放置する。

② 企画推進の方法論の欠如

a)小さな成功事例の応用や横展開などで新規企画を進められない。

b)(小さな成功事例の応用とは)小さな成果を打ち立てる。その成果を例に、同様の価値が他の顧客向けにも実現可能であることを上司や他の関係各位に伝達してプロジェクトに対する期待感を高め、さらに多くの経営資源を獲得。それによって実行して成功させ成果を生む……。

c)部下が新しい価値の可能性を見つけても、上司が企画推進・増幅力がなければ、一つの顧客に一つの価値を提供するだけで終わってしまう。せっかくチャンスがありながら、上司のせいで価値を増幅させられないとなると、やる気のある部下からは、使えない上司に見えてしまう。

③ 上通性の欠如

a)上層部につなぐ力がない。

b)上通性とは自分よりも上に対して、きちんと意見を言い、獲得すべきものをしっかり獲得してくることだ。

c)上司が説得力のないプレゼンをして全員から無視され、せっかく提出した企画が何ら進展しない状況を味わうと、部下は「うちの上司は本当に使えない」と嘆くことになる。

④ 公平性の欠如

公平に接しない、評価しない上司は、社員から尊敬されず、使えない上司になる。退職の本当の理由のほとんどが、直属の上司と言われています。直属の上司が、明るく、元気で、尊敬でき、仕事もでき、上記の情報伝達力があり、企画推進力があり、上通性を持ち、公平性のある上司であったら、退職率はもっと減ります。

ですが、上記のようなトレーニングをしていないので、会社でトレーニングをすべきと思います。また上司がやはり「惚れられる」人間になるために、人格を高めること。「やり方」でなく「あり方」を学び、実践していくことが大切です。惚れられる上司になると、お客様、仕入先、地域の人々にも惚れられるような人間になります。