明るく楽しく元気前向き情熱ありがとう通信

『目明き千人めくら千人』(松下幸之助)第4118号

2022.09.20 Tue

世間というのは、厳しくもあるし、また暖かくもある。

そのことを、昔の人は「目明き千人めくら千人」という言葉であらわした。

いい得て妙である。

世間にはめくらの面もたくさんある。

だから、いいかげんな仕事をやっていいかげんにすごすことも、時には見逃されて過ぎ去ってしまうこともある。

つまりひろい世間には、それだけの包容力があるというわけだが、しかしこれになれて世間をあまく見、馬鹿にしたならば、やがては目明きの面にゆき当たって、身のしまるような厳しい思いをしなければならなくなる。

また、いい考えを持ち、真剣な努力を重ねても、なかなかにこれが世間に認められないときがある。

そんなときには、ともすると世間が冷たく感じられ、自分は孤独だと考え、希望を失いがちとなる。

だから悲観することはない。

めくらが千人いれば、目明きもまた千人いるのである。

そこに、世間の思わぬ暖かさが潜んでいる。

いずれにしても、世間は厳しくもあり、暖かくもある。

だから、世間に対しては、いつも謙虚さを忘れず、また希望を失わず、着実に力強く自分の道を歩むように心がけたいものである。

(松下幸之助 著『道をひらく』より)