100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.77

2022.02.25 Fri

転職者の5割以上が 新しい職場に満足

転職者実態調査

厚生労働省は昨年11月に令和2年の「転職者実態調査」の結果を公表しました。

この調査は転職者の採用状況、就業意識などの実態を把握するために行われていますが、今回の調査は常用労働者を5人以上雇用する企業17,000件の中で働く転職者から1万人を無作為で選び令和2年の転職者について実施しました。

現在の勤め先には満足ですか?

転職者の現在の職場の満足度については「満足」「やや満足」とした人は53.4%、「不満」「やや不満」の人は11.4%で、その差で表す「満足度指数」は42.0ポイントとなっています。また、満足度の内容はどの項目でも全体的にみて事業所規模が大きいほど満足度は高く、中でも「仕事内容・職種」が最も高く60.5ポイントでした。

転職者の離職理由と転職先選定の理由

転職者の直前の勤務先からの転職理由は「自己都合」が76.6%ですが、そのうち「労働条件(賃金以外)が良くなかった」が28.2%と一番多く、「満足のいく仕事内容でなかった」が26.0%、「賃金が低い」が23.8%となっています。

転職先に現在の勤務先を選んだ理由は「仕事内容・職種に満足できるから」41%で最も多く「自分の技能、能力が生かせるから」が36.0%、労働条件(賃金以外)が良いから」が26%となっています。

転職者の応募方法、企業の募集方法

転職者はどのような方法で転職活動(複数回答)を行っていたのでしょうか?

「求人サイト・求人情報専門誌・新聞・チラシ等」が39.4%と最も多く、次に「ハローワーク等の公的機関」34.3%、「縁故」26.8%となっています。

一方で転職者を採用した企業の募集方法(複数回答)は「ハローワーク等の公的機関」が57.3%、次いで「求人サイト・求人情報専門誌・新聞・チラシ」が43.2%、「縁故」が27.6%となっています。

転職先になる企業も求人の職種や欲しい年齢層にもよりますが、自社にとって有効な求人媒体で企業アピールし、来てほしい人材に応募してもらえる努力が必要ですね。

令和3年分確定申告書 すぐ消える変更点

提出が楽になった配当所得の選択制度

上場株式の配当金は、所得税15.315%と住民税5%が源泉徴収済の状態で支払われますが、実際の申告は総合課税・分離課税・(特定口座の場合)申告不要と課税方式が選択できます。

また、課税所得900万円未満の場合、配当控除の控除率の関係で、所得税と住民税で申告方式を変えることによってかかる税金を減らせるというテクニックが存在します。

所得税等の確定申告時には総合課税を選択し、その後市区町村に住民税の申告書提出等の所定の手続きを行うことで、住民税側は申告不要を選択、という手続きが取れるようになっていました。さらにこの申請の二度手間を無くすため、令和3年分確定申告からは、申告書第2表の「住民税に関する事項」に「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」というチェック欄が新設され、ここにチェックを付けておけば、市区町村に手続きを取る必要がなく、住民税については申告不要を選択できるようになりました。

 

ただし、将来選択できなくなります

令和4年度税制改正大綱で「上場株式等の配当所得については個人住民税において、課税方式を所得税と一致させる」という一文があるため、この改正を適用する令和5年分の確定申告書は、おそらく今年新設された「申告不要」のチェック欄は無くなっているものと思われます。

 

健康保険料等にも影響がある選択制度

この申告方式の所得税・住民税個別選択については、健康保険料や医療費の窓口負担割合についても有利な選択ができるため、社会保障制度の公平な負担という面で見ると課題があるため改正されたとする報道もあります。また、金融所得課税全体の見直しは、令和4年度の税制改正では見送りとなりましたが、その一環であることも事実でしょう。

今後の税制見直しでも、どの程度、どんな所得や資産を持つ人に、どのくらいの負担を求めてゆくのかという「公平性」の判断については、議論を重ねて慎重に決めていただきたいものですね。

成年年齢の引下げの 法令施行と未成年者控除

民法の成年年齢の改正と税法

平成30年(2018年)6月13日に民法改正法が成立し、成人年齢が20歳から18歳となりました。

それを承けて、税法上の対象年齢を20歳から18歳に引き下げる様々な規定の改正が平成31年にありました。

以下、一覧列挙してみます。

①相続税の未成年者控除の対象相続人

②相続時精算課税制度における受贈者

③直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例における受贈者

④非上場株式等に係る贈与税の納税猶予における受贈者

⑤NISA非課税口座開設可能居住者

⑥ジュニアNISAの開設並びに非課税管理勘定及び継続管理勘定の設定可能居住者

⑦国税犯則調査手続における臨検等及び国税徴収手続における捜索の立会人並びに税理士となる資格を有する者

上記⑤と⑥は令和5年(2023年)1月1日からの適用で、他は改正民法の施行日と同一の令和4年(2022年)4月1日からの適用です。

未成年者控除の改正内容

この中の未成年者控除については、平成25年度税制改正で、成人に達するまでの1年あたり6万円から10万円に増額されています。

今年の4月からの控除額の計算式は、

(18歳-相続開始時の年齢)×10万円=

になります。

また、未成年の内に何度かの相続を経験する場合での2回目以降の未成年者控除額は、過去の相続での負担すべき相続税額が少なくて控除仕切れなかった場合の控除未済額となります。

控除未済額の修正計算

1回目の相続が令和1年(11歳、相続税額50万円)に開始したとした場合、1回目の控除可能額は90万円(=(20歳-11歳)×10万円)となり、相続税額を超えているので相続税額全額が控除され、控除未済額40万円あったことになります。

2回目の相続が令和4年(14歳、相続税額100万円)に開始したとした場合、1回目相続時の控除未済額を、18歳に達するまでの年齢で計算し直し、20万円(=(18歳-11歳)×10万円-既控除額50万円)とします。これが、2回目の控除額となります。

相続税額の取得費加算の特例

相続で土地、建物、株式などの財産を取得した後、これらを譲渡した場合、譲渡所得に所得税が課されます。この場合、相続財産の譲渡に係る「取得費加算の特例」を利用することにより譲渡した資産に対応する相続税額を取得費に加算し、譲渡所得を減らすことができます。

相続人の譲渡所得税の負担を軽減する制度

この制度は、相続により財産を取得した者が、納税資金の捻出などのため、相続財産を売却しようとする場合、被相続人の取得時から蓄積されたキャピタルゲインに課税されることから、納税者の所得税負担に配慮した調整措置として設定されています。

適用要件は3つ

この制度を利用する要件は次の3つです。

①  相続または遺贈により財産を取得した者であること。

②  その財産を取得した者に相続税が課税されていること。

③  その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後、3年を経過する日までに譲渡していること。

上場株式の譲渡で申告不要の選択に注意!

上場株式を譲渡した場合、申告分離課税で申告するか、申告不要とするかを選択することになりますが、先に申告不要を選択したときは、後で「取得費加算の特例」を適用した方が有利であることに気付いたとしても、既に申告不要で確定申告しているので更正の請求は難しくなります。

租税特別措置法には、やむを得ない事情がある場合に「取得費加算の特例」を認める宥恕規定があります。しかし、確定申告で申告不要を選択したことだけでは、その申告が計算の誤りや国税に関する法律の規定に従っていなかったとされず、宥恕規定の適用が認められなかった判例があります。

相続空き家の特例とは重複できない

相続で空き家を取得した後、譲渡した場合、一定の要件を満たせば3000万円の特別控除ができる「相続空き家の特例」を適用できますが、適用した家屋と敷地に「取得費加算の特例」は重複適用できません。

なお、相続した土地に居住用家屋と倉庫がある場合、被相続人の居住用家屋とその家屋に対応する敷地の譲渡には「相続空き家の特例」を適用し、「相続空き家の特例」が適用されない倉庫とその倉庫の敷地の譲渡には「取得費加算の特例」を適用する使い分けができます。