100年企業創りレポート

藤間秋男の100年企業創りレポート
vol.284 2022.1月号

2022.01.01 Sat

あけましておめでとうございます 本年もよろしくお願い申し上げます

1.セブン&アイの鈴木敏文さんから学んだ大切なこと(ダイソー創業者 矢野博丈氏)

「私がセブン&アイの鈴木敏文さんから学んだ大切なこと 矢野博丈氏 大創産業 創業者」(日本経営合理化協会出版局「愛読者通信」2020年春号)

鈴木さんの助言がなければ、今のダイソーはなかったと語る矢野氏。

大創産業の売上4,757億円、正社員314名(2019年3月現在)、国内3,367店、海外2,175店、28の国と地域で展開

(1)経営者として商品に妥協しない姿勢 (鈴木さんのカレーパンのエピソード)〈〉内は藤間の補足

① 〈試食したカレーパンが美味しくないため、バイヤーを呼んで怒ったところ「それでも、よく売れている」と答えたら〉「お前はセブンを潰す気か!」と前にも増して怒って即刻店頭からはずしました。結果的に、金額にして数千万円単位の損失になったといいます。

② 当時のカレーパンは、セブンに限らず、具と皮がくっついているものがほとんどでした。(略)しかしカレーパン事件から2か月後、セブン・イレブンの店頭に、真ん中の皮がプクっとふくらんだ、美味しいカレーパンが発売されました。そのカレーパンには「具が大きくなって、うんと美味しくなりました」というシールが貼ってありました。

③ 商品に対して絶対に妥協しない姿勢を鈴木さんから学びましたね。

(2)商人の謙虚さ

① 鈴木さんの謙虚さというのは、お客さんに常に満足してもらうために必死になる、そのために社員も叱る。言い換えれば、進化するため、イノベーションを起こすための謙虚さなのです。

② 「今日の否定」をしなければ、進化できません。鈴木さんは「変化対応」の重要性を繰り返し説かれますが、私は「進化対応」という言葉で、社員によく話をしています。

(3)21世紀の小売業のキーワード

① (1999年の暮れに)「鈴木さん、教えてください。小売業が21世紀に生き残るためのキーワードは何でしょうか」(略)鈴木さんはひとこと、「新しさかな」とおっしゃいました。

② 私は、鈴木さんの「21世紀の小売業のキーワードは新しさだ」という言葉を新商品開発に力を入れるということに置き換えました。

③ 現在、ダイソーは多いときは1週間で300点、1カ月に約500から700点の新商品を店頭に並べます。販売総点数は約7万点で、そのうち99%が自社開発の商品です。

④ ダイソーが原価の安い、安かろう悪かろうの他社商品を仕入れて売っているだけだったら、今の成長はなかったと思います。

⑤ アキナイですから、お客を飽きさせないことが第一です。

(4)「鈴木敏文の経営言行録」の中で、矢野会長が印象に残った鈴木さんの言葉

① リーダーは、みんなが出した結論の上に乗っかるものではない。みんなが結論を出せないとき、何らかの結論を出し、方針を示すことがリーダーの役目である。

② 改革はむしろ、経営破綻したあとのほうがやりやすい。まだ大丈夫だと思っているときがいちばん難しい。

③ 懸命に行き当たりばったりに生きる。

セブンイレブンは、セブン銀行を立ち上げ店内にATMを設置したり、コーヒーを100円で販売したり、「金の…」で始まるセブンプレミアムゴールドの商品を展開したり、業界初をたくさんつくってきました。粗利益率も1店舗あたりの売上も、他のコンビニよりもダントツに高いです。スタートの時は、イトーヨーカドーの役員は全員反対だったそうです。それが素晴らしい企業になりました。

ですが今、セブンイレブンの売り場に行っても業界初はありません。コンビニのおにぎりが大好きな私にとってはローソンやファミリーマートの方が挑戦的なおにぎりがあり、セブンイレブンにはないと感じます。

鈴木さんが退任した理由の一つに、当時の社長は革新ができないから社長を退任させる案を出したが、取締役会で反対され認められなかったということがあるそうです。セブンイレブンは、今いろいろな挑戦が感じられず、対応遅れを感じます。普通のコンビニになってしまった感じがします。ファミリーマートもローソンも社長が変わり、どんどん追い上げています。そちらの方が楽しみです。リーダーの革新性が無くなるとダメになってしまいますね。

2. 誰もが「起業家」「マネジャー」「職人」という三つの人格をあわせもつ

『成功する人たちの起業術 はじめの一歩を踏み出そう』 マイケル・E・ガーバー(世界文化社)

(1)「起業家」「マネジャー(管理者)」「職人」―三つの人格

① 私たちの誰もが、起業家とマネジャー(管理者)と職人という三つの人格をあわせもっている。そして三つのバランスがとれたときに、驚くような能力を発揮するのである。

② 起業家は新しい世界を切り開こうとし、マネジャーは事業の基礎を固めてくれる。そして、職人は専門分野で力を発揮してくれる。

③ しかし残念なことに、私の経験から言えば、起業した人の中で三つの人格をバランスよく備えてる人はほとんどいない。それどころか、典型的なスモールビジネスの経営者は、10%が起業家タイプで、20%がマネジャータイプで、70%が職人タイプである。

④ 職人(手に職をもった個人主義者)にとって、自分が主導権を握っていることは理想である。しかし事業全体から見れば、それは最悪の結果を招く。(略)職人は決して主導権をもつべきではないのだ!

(2)起業家 -変化を好む理想主義者

① 起業家とは、ささいなことにも大きなチャンスを見つける才能をもった人である。ときには理想主義者と呼ばれながらも、将来のビジョンをもち、周囲の人たちを巻き込みながら、変化を引き起こそうとする人物こそが起業家である。

② 起業家とは未来の世界に住む人でもある。決して過去や現在にとらわれることはない。起業家は「次に何が起きるだろうか?」「どうすれば実現できるだろうか?」といった問題を考えるときに幸福を感じる。起業家は革新者であり、偉大な戦略家である。そして新しい市場を創り出すための方法を発明する。企業家を代表する人物としては、(略)自動車王と呼ばれたヘンリー・フォード、IBMのトム・ワトソン、マクドナルドのレイ・クロックをあげることができる。

③ 起業家にも弱点はある。(略)現実世界の出来事や対人関係は、誰かのサポートが必要になる。

④ 起業家にとっての課題は、いかにして足を引っ張る人たちから逃れ、チャンスをものにできるかである。起業家にとって、周りの人たちは夢を邪魔しようとする障害物なのである。

(3)マネジャー ―管理が得意な現実主義者

マネージャーがいなければ、計画さえ立てられずに、事業はたちまち大混乱に陥ってしまう。

(4)職人 ―手に職を持った個人主義

① 自分で手を動かすことが大好きな人間である。「きちんとやりたければ、人に任せず自分でやりなさい」これが職人の信条である。

② 職人にとっては、マネジャーもやっかいな存在である。なぜならマネジャーは職人を管理し、仕事での個性を否定しようとするからである。

(5)起業家の仕事

起業家の仕事は、疑問を持つこと、想像すること、夢を見ること。そして、ありとあらゆる可能性を追求すること。もちろん過去ではなく未来を見なきゃならない。これがきみの中の起業家がやるべき仕事なんだ。そのためには、「なぜ?」「なぜ?」「なぜ?」という問いかけを、いつも続けなきゃならない。問いかけを続けることは、未来のための仕事なんだ。これが君の心の中にいる起業家の本当にすべき仕事なんだよ。

スティーブ・ジョブズ、孫正義、アリババのジャック・マーなど変革の成功者、本当に革新できる人というのは、1%の可能性でも、地球のため、お客様のため、社員のためになると思えば突入することができる人だと思います。

書籍から3つの人格の特徴を以下にまとめました。皆様は、起業家、マネジャー、職人のどの割合が高いでしょうか。

私の性格は、起業家の割合が非常に高いと思います。常に何か革新できないか、社員の幸せがつくれないか、お客様の幸せがつくれないか、ばかり考えています。後は好奇心のかたまりです。

いろいろな提案をしてくる業者ともたくさん会います。失敗も多いですが、サイボウズ、チャットワークを導入するきっかけなどをつくりました。これからも、セミナーの他に、本格的にFacebook、LINE、インスタグラム、note、Twitter、TikTok、世の中の話題となる出版、有名人インタビュー、 YouTube などを実施していきたいと思います。

最終的にはTOMAの新商品を新たにつくり、世の中に新しい風を吹かせたいです。皆様も各性格がありますが、起業家精神がないと成長・発展しません。各取締役、各部門長も同じだと思います。そのために、常に「なぜ?」「なぜ?」と好奇心を持ち続け、色々な人と会ってみることが重要だと思います。

3. 今こそ、会社の原点と経営戦略の在り方を見直す時

「今こそ、会社の原点と経営戦略の在り方を見直す時」加護野忠男 神戸大学システムイノベーションセンター特命教授(「理念と経営」トップインタビュー 2021年8月号 コスモ教育出版)

今、経営者は、どんなことに留意すべきだとお考えですか? 以下加護野氏の回答の要約です。

(1)経営の基本的なスタンスを確認し直すこと

① キーワードは「幸福経営」だと思うのです。(略)従業員の幸福を大切にする経営です。

② 福利というのは辞書を調べると、まず「幸福」があって、次に「利益」です。危機の時だからこそ従業員の幸福をもう一度考えて、会社の原点を見直していただきたいと思います。

(2)「範囲の経済」をうまく利用して、事業の範囲を広げておく

① どれか1つの事業で危機的状況が生じたとしても影響を小さくできます。リスク削減効果です。

② 商品の幅を広げることで、1つの商品だけを扱っているのでは不可能だった大規模な投資ができます。

③ 一部の客層に特化して開発した商品を他の客層にも売ることができる。

このレポートでもよく言っていることですが、一本足打法というのはダメで、やはり色々な形で広げていくことが、これからの生き残りのための策かなと思います。是非、一本足打法でない経営を目指していただきたい。それから、もう一つは幸福経営。社員を幸せにする経営をしないと、今の時代、生き残れないというように思います。

4. 大人になると、どうして早く時間が過ぎたように感じるの?

「『ジャネーの法則』(時間の感じ方)」株式会社タニサケ代表取締役社長 清水勝己(社内報「フレッシュタニサケ」(2021年12月号))

① 例えば5歳の子供にとって、1年という時間の長さは5年のうちの1年ですから、(略)1年は子供の人生の 20%を占める時間になります。一方で50歳の人にとっての1年は、50分の1にあたり、2%にしか過ぎません。

② この法則によると体感的に人生の折り返し地点は20代前半だそうです。

③ 作家の渡辺淳一さんは、時間の流れの速さを「川の流れ」に例えてこう言いました。「20代はちょろちょろ流れる小川、30代で川になり、40代で急に速くなった流れは、50代では激流、60代では滝のごとし」と。

時間は誰にでも平等ではないようです。時間の感じ方は年をとるにつれて加速していきますので、時間は少しでも無駄にできないと思いました。まだまだ余裕があると油断せずに、

1日1日を一生懸命に過ごして悔いのないようにしていきたいものです。

ジャネーの法則は「生涯のある時期における時間の心理的長さは年齢の逆数に比例する(年齢に反比例する)」。例えば、60歳は30歳の2倍、時間の速さを感じるということです。だから、人生、今日を大切にすることです。倫理法人会の万人幸福の栞の1条は「今日は最良の一日、今は無二の好機」です。気付いた時が、そのことを処理する最高のチャンスであると言われています。今日を世界一大切にした人が世界一幸せになる人。今日を大切にしましょう。