100年企業創りレポート

藤間秋男の100年企業創りレポート
vol.277 2021.6月号

2021.06.01 Tue

1.孔子とは、論語とは(安岡定子氏)

「安岡郷学と『論語』」安岡定子氏(致知出版社主催 致知人間学Web講演会 2021年5月8日講演)

(1)孔子はどんな人?(前551年~前479年)

① 2500年前中国の春秋時代に魯の国に生まれた大思想家・学者・教育者です。

② 54歳の時に大司冦(司法と警察を司る長官)になります。魯の国の大改革をしようとしますが、反対派によって失脚させられます。その後の10数年は諸国を遊歴し、諸侯に自分の思想・哲学を説き、理想の政治の実現を目指しました。しかしその思いはなかなか受け入れられず、晩年は故郷の魯に帰り、門人の教育と古典の整理・編纂に力を尽くしました。

③ かなりの苦労人であり、人間味豊かでユーモアもある人物像は、とても魅力的です。人間にとって一番大切なものは、仁(思いやりの気持ち)であると語り続けました。

(2)『論語』について ・・・古典中の古典。人生必読の書

① 中国の古典、四書五経のひとつです。〈藤間の覚書:四書…論語、大学、中庸、孟子、 五経…易経、書経、詩経、礼記、春秋〉

② 孔子の言行や、弟子たちとの問答などを記録した書物です。20編約500章からなり、孔子の思想の真髄を伝えるものとして後世に大きな影響を与えてきました。

③ その中心的主張は「仁」(思いやりの心・愛情)の重要性です。戦乱の世にあって、理想の人物像・理想の政治の実現に最も大切なものは、「仁」であると孔子は説いています。

④ 日本では、江戸時代に藩校や寺子屋で盛んに読まれていました。大きな声で元気に繰り返し読んでいるうちに、名文・名句が体に心に染み込んでいきます。成長と共に経験や知識が加わり意味を理解できるようになり、やがてその言葉の魅力に気づきます。

⑤ 日本人の豊かな感性、優しい心、清く強い精神力、あるいは困難や悲しみを乗り越える力は、こうしてゆっくりと育まれてきました。そして往くべき道に悩んだ時、挫けそうな時、様々な場面で心の拠り所となってきました。実業家・渋澤栄一氏や湯川秀樹博士をはじめとする、多くの実業家や学者、政治家、作家なども影響を受けています。私たち日本人には、とても身近な書物だったのです。

(3)論語の名句と安岡定子氏による解説

【まず志を持つ】「道に志し、徳に拠り、仁に依り、芸に游(あそ)ぶ。」

① 「志」とは、自分の心で強く思うこと。私利私欲があってはならない。学んでも社会のために生かす。

② 「徳」とは、正しいことができる力。実践が大切。人間にこれがなかったら、人間ではない。

③ 「仁」とは、思いやり、やさしさ、誠実さ。

④ 「芸に游ぶ」とは、六芸〈礼(道徳教育)、楽(音楽)、射(弓術)、御(馬車を操る技術)、書(文学)、数(算数)〉などをゆったりと水と遊ぶように、自由にこれらの教養を楽しむこと。

 

【「仁」が何よりも大切】「仁に里(お)るを美と為す。択(えら)びて仁に処(お)らずんば、焉(いずく)んぞ知なるを得ん。」

① 「仁」の中にいること。仁者がいる里にいることは、なんと美しいことか。

② 自分が困難な状況にあっても、「仁」の気持ちでいられる人は素晴らしい。

 

【人物から学ぶ】「教え有りて類無し。」

① 自分がどうなりたいかで会える人が変わってくる。(それなりな人は、それなりな人しか出会えない。縁を大切にする。)

② 人物から学ぶことが大切。 ③ 自分のレベルが上がると、どんどんレベルの高い人に出会える。

 

【よい習慣を身につける】「性、相近し。習い、相遠し。」

① 「あいさつ」「早起き」「感謝の心」「謙虚さ」

② わからないままにしない。人間にそんな差はない。その習慣や心がけで差が出る。

③ 良い習慣で、良い仲間ができる。

 

【よき仲間を大事にする】「君子は文を以て友を会し、友を以て仁を輔(たす)く。」

① 友と学びあって仁を行う。 ② 集団で学ぶと、いろいろな人がいて、磨かれて学べる。

 

【過去を振り返ることから始める】「故きを温(たず)ねて新しきを知れば、以て師と為るべし。」

① 先人から学ぶ。 ② 過去の歴史。 ③ 自分の過去。 ④ 昨年の反省をふまえて、これからどうするか。

10年ぐらい論語を勉強していますが、これだけわかりやすく説明いただいたのは初めてでした。安岡さんは、子供に論語を教えているので、例えがわかりやすいのでしょうか。私が学んでいる倫理法人会の「万人幸福の栞17カ条」には、論語の学びも入っていると感じます。創始者の丸山敏雄は、論語だけでなく、古典を多く学んだと言われています。

人に「惚れられる」ために、人格や徳を高めるために、学ぶ必要性を感じています。社長が社員に「惚れられて」いたら、必ず会社は成長します。是非、論語、倫理法人会の学びをして、「惚れられて」ください。また、渋澤栄一の『論語と算盤』も最近有名になっていますね。

2.父母・祖先を大切にしない人は成功しない。

『はじめて読む人のための人間学』藤尾秀昭(致知出版社)

① 二宮尊徳にこういう歌があります。

「父母もその父母もわが身なり。われを愛せよわれを敬せよ」

一人ひとりの人間が生まれるのは、父と母がいるからです。その父と母が生まれるのにも、その父と母がいます。2代で4人、3代で8人、4代で16人…。このように命の起源を遡っていくと、20代で104万8576人、30代では10億7374万1824人になります。(略)その先祖のうち一人でも欠けていたら、私たちの命はありません。(略)いわば私たちは奇跡の命をいただいてここにいるということです。

② 「百年再生の我れ無し。其れ曠度(こうと)すべけんや」と江戸時代の儒者・佐藤一斎は言っています。

「百年後、再び生まれてくる自分ではない。うかうか生きていてはならないぞ」ということです。

③ この奇跡のような命、たった一回限りの人生をどう生きればよいのか。それを学ぶのが人間学です。

父母に感謝し、先祖に感謝しなければなりません。そうでないと、自分も幸せになれないと言われています。倫理法人会では次のような教えがあります。

『万人幸福の栞』丸山敏雄(一般社団法人倫理研究所)13条より

① 最も大切なわが命の根元は両親である。この事に思い至れば、親を尊敬し、大切にし、日夜孝養をつくすのは、親がえらいからではない、強いからではない。世の中にただ一人の私の親であるからである。私の命の根元であり、むしろ私自身の命である親だからである。

② ほんとうに、父を敬し、母を愛する、純情の子でなければ、世に残るような大業をなし遂げる事はできない。いや世の常のことでも、親を大切にせぬような子は、何一つ満足にはできない。

社員・お客様・取引先・地域に感謝しなければ成功しない。しかし、自分の命の元の両親に感謝しない人は、本当にいろいろな人に感謝できません。もういない人はお墓まいりをして感謝の心を表すべきです。両親、祖先を大切にした人だから、幸せになり、成功しているのです。

3. 「宿命に生まれ 運命に挑み 使命に燃える」(故小渕恵三元総理大臣)

礼文町長 小野徹氏の令和3年度4月訓示より

故小渕恵三元総理が好んで使われた言葉「宿命に生まれ 運命に挑み 使命に燃える」をご紹介します。

① 「宿命に生まれ」

「宿命」とは、どこにどう生まれたか、自分の力では、如何ともしがたいことで、自分の意志でその現実を変えることはできません。

② 「運命に挑み」

「宿命」を嘆くのではなく、これを受け入れながら「運命」に対して私たちは果敢に挑むことができます。この世に授かった命を自らの意思、行動、選択で果敢に道を開いて運び、世の中のためにどう使っていくかは自分の考え方生き方次第ということなんです。(略)夢を持ち、それに向かって努力すれば「運命」は必ず開けると云います。

③ 「使命に燃える」

自分の一生を捧げたいと思うことが見つかれば、それをこの世に生を受けた「使命・天命」と思って命を燃やしなさいと教えています。

沖縄県名護市のブセナ岬に、沖縄サミットの会場となった万国津梁(しんりょう)館があり、そこにある小渕元総理の像の台座にこの言葉が書いてあります。私も「ビジョン経営沖縄セミナー」でその場所に15回くらい行き、必ずその像の前で何回も読み返していました。

私は、こう思いました。持って生まれた宿命、その宿命を生かし、自分の運命に果敢に挑み、自分の使命を見つけて、命を燃やす。天職を見つけるとも想いました。私は、祖父の想っていたワンストップコンサルタント集団をつくり、さまざまな部隊をつくってまいりました。会長になって、さらにもう一つの部隊をつくっていきたいと思っています。それに挑み、命を燃やしています。皆さんも、命を燃やすことをみつけませんか。藤間秋男も相談に乗ります。

4. いまこの時期に幹部に求めるもの(日本経営合理化協会 理事長 牟田太陽氏)

「2021年5月の視点 繁栄への着眼点」日本経営合理化協会 理事長 牟田太陽氏

① いまこの時期に幹部に求めるもの、それは社長の考えはもとより、この状況の中で戦略・戦術を理解し、正しく部下に伝達することである。

② 幹部(店長)の発言というものは、社長の言葉でなくてはいけない。

③ 飲食店を数十店経営されている会社の社長からこのような話を聞いた。

店長会議の場で、ある店長がこのようなことを言ったという。

「2022年中盤までは絶望的ではないか」(略)などと発言をしたという。社長は、幹部(店長)に対して怒った。(略)幹部会議が終わり、幹部が自部門に戻り部下に対して同様の発言をしたとする。そうすれば、それは社長の発言となってしまうのである。(略)後ろ向きな発言を聞いた社員が、その後明るく仕事が出来るだろうか。

④ 幹部というのは、社長と社員を繋ぐ重要な「ピン」の役割をしている。社長の言葉を正確に全ての社員に伝えなくてはいけない。(略)(大木が)根から吸い上げた養分を、葉の一枚一枚にいたるまで行きわたらせるのが幹部の仕事だ。このコロナ禍においては、その幹部の役割は通常時以上に重要なものである。

社長がいくら立派でも、その幹部が暗く、元気なく、後ろ向きだと、会社は絶対に成長しません。定着率も悪くなります。常に幹部は、社員に明るく、楽しく、元気、前向きに接し、対応していけば、社員も、明るく、楽しく、元気、前向きになっていき、お客様も、明るく、楽しく、元気、前向きになっていきます。TOMAは「明るく・楽しく・元気に・前向き」を経営理念に掲げていますが、上記の対応を実践していくことで理念の確立と浸透となり、世の中が幸せになります。

5. 頻繁に褒められ認められている社員の特徴とは?

唐土新市郎氏の「経営と仕事と人生が楽しくなるレター」より

① 生産性が高い。  ② 会社を辞める確率が低い。  ③ 顧客の満足度が高い。

④ 仲間意識が強い。 ⑤ 職場での事故が少なく、安全性が高い。

生産性の高さとは、文字通り稼ぐ力や生み出す力が高いこと。会社を辞める確率が低いというのは、会社や経営者に対するロイヤリティーが高いのでしょう。顧客満足に関しては、褒められると、さらに良くなろうとして、お客様にも気がきくようになるのでしょう。仲間意識は、職場内で認められているのですから、他人を蹴落とそうという意識は芽生えにくいのかもしれません。最後に、職場での事故や安全性ですが、これは、褒められ、認められると自信ができ、自主的になり、プロフェッショナル意識が向上するのかもしれません。

(略)褒められたり、認められると、誰でも人間はまず気持ち良くなるからです。(略)気持ちの良い職場になりますよ。

社長や幹部の皆様は、褒める努力をしていますか。個人面接や、叱る時も、まず褒めて、感謝してから内容に入り、最後は今後の期待をすることです。

私もできていないですが、そうされた社員が増えれば増えるほど、やる気のある社員が多くなり、会社のムードもあがってきませんか。検討しませんか。