100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.28

2021.03.05 Fri

子の看護休暇・介護休暇 時間単位制度導入の注意点

育児・介護休業法の改正2021年1月より

共働き家庭の増加や高齢化等が進み、育児や介護をしながら働く労働者はますます増えています。今まで子の看護休暇(対象者1人年5日)や介護休暇(対象者1人年5日)は「日又は半日単位」で取得することとされていましたが、短時間で済む用事に半日休暇を使うこともあり使い勝手の悪さから改正されました。労働者から申し出があった場合には、各休暇を1時間や2時間といった時間単位で取得できることとなりました。

時間単位とは? 対象者は?

時間単位の時間とは1時間の整数倍の時間になります。

実際、子の看護休業はけがをしたり病気にかかったりした子の世話のほか、予防接種や健康診断等の事由のため、介護休暇は介護が必要な対象家族の介護や世話、通院等の付き添い、介護サービスのための手続き等に取得できる休暇ですが、この中には1~2時間で用事を済ませ職場に戻ることができるものもあります。今までは半日利用しかありませんでしたが、今後は利用する方は必要な時間だけ取得することができます。

また、今までは1日の所定労働時間が4時間以下の人は半日単位の取得対象外でしたが、これからはこれらの労働者を時間単位年休の対象外とすることはできません。原則すべての労働者が対象になっています。

会社は規定を定め休暇の取得管理が必要

育児介護休業規定を見直し運用ルールが必要になるでしょう。今まで半日単位であったものが時間単位になると取り扱いが変わります。分単位を認めることや就業時間の途中で取得する「中抜け」の導入などは各企業で検討し取得を認めることも検討する必要があるでしょう。

また、時間単位となると細かいので会社には少し手間がかかることになります。勤怠管理システムにするなど工夫が必要になるでしょう。

子の看護休暇及び介護休暇の時間単位の取得により、それぞれの事情に応じた柔軟な休暇の取得ができることで仕事と生活のバランスがとれ離職防止につながることでしょう。

短時間勤務の非正規社員の健康診断を支援する助成金

キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)

パートタイマー等に定期健康診断等を行う場合に申請できる助成金です。キャリアアップ助成金の健康診断制度コースは非正規社員が受診できる健康診断制度を新たに導入した事業主に支給されます。

初めにキャリアアップ助成金の計画届を労働局に提出し、認定後に就業規則に健康診断制度に関する規定を追加します。延べ4人以上健診を実施すると申請できます。

中小企業の助成額は38万円(生産性要件該当で48万円)です。

対象となる非正規社員とは

以下の4条件にすべて該当する従業員

①健康診断を受診する日に雇用保険に加入していること

②所定労働時間が週20時間以上、かつ正社員の1週間の所定労働時間の4分の3未満。週の所定労働時間が40時間の場合は20時間以上30時間未満の非正規社員である

③事業主、又は取締役の配偶者、3親等内の親族でないこと

④支給申請日に会社都合等で離職した者でないこと(自己都合退職の離職は含まず)

対象となる健康診断

助成金の対象となる健康診断は雇入時健康診断、定期健康診断、人間ドックの3つですが1つ受ければ対象になります。

①法令で受診必須の項目を含む健康診断をすること

②事業主が健康診断の費用を全額負担すること(人間ドック費用の場合は半額以上)

③計画書が労働局から認定される前に就業規則に制度導入の規定を入れないこと

④対象の非正規社員が健康診断を受診したことを認証する病院の領収証を4人分提出すること

申請にあたっての3つの注意点

①延べ4人ですので同じ従業員が雇用時健康診断と定期健康診断を受診すると2人分にカウントされます。

②雇用保険適用事業所ごとに1回のみ申請。雇用保険事業所番号が複数ある企業は番号ごとに申請できます。

③有期雇用契約者だけでなく長期間雇用されている無期雇用者も対象になります。

給与? 経費精算? 在宅勤務に係る費用負担

在宅勤務にまつわる費用はどうなる?

新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、日本社会は「リモートワーク」や「在宅勤務」といった言葉が一般的になりました。会社が支給してくれる在宅勤務等に係る費用について、従業員の皆さんや経理担当の方の中には「これは経費になるの? それとも給与扱い?」と疑問を持った方もおられるのではないでしょうか。

 

課税当局からの説明

国税庁は今年1月に「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」というまとめを出しています。

「在宅勤務手当」を従業員に支給した場合は「給与として課税する」ことになります。在宅勤務手当とは、在宅勤務を行う社員に一律に金額を支給するものなどです。また、在宅勤務に係る事務用品等を支給する場合でも、これは現物支給の給与扱いとなりますので、課税となります。

一方、「貸与」として事務用品等を社員に貸し出した場合は、給与扱いとはなりません。その事務用品を使ってもらうために、仮払いでお金を出した場合でも、領収書で精算をする場合でも、どちらでも給与課税とはなりません。また、企業が従業員に専ら業務に使用する目的で「支給」したとしても、業務に使用しなくなったとき返却してもらう場合には「貸与」とみて差し支えないとのことです。

 

通信費や電気料金は按分計算が必要

通信費や電気料金についても、業務に利用した部分を合理的に計算した金額を支給している場合に関しては給与として課税する必要はありません。

ただし、一定の金額を「通信費等で必要だろう」と渡し切りにしている場合、実際に業務のために使用した額を超えている部分については、給与として課税する必要があると説明しています。

業務のためのスペースが自宅になく、レンタルオフィス等を従業員に借りてもらった費用を会社が出している分については、給与として課税する必要はありません。

リモートワークにおける社内コミュニケーション

管理職が意識すべき「傾聴」のポイント

思いもよらぬコロナ禍の影響により、仕事でもプライベートでも、オンラインによるコミュニケーションが増加しています。多くの企業のリモートワークは、十分な準備ができないままに始まり、「リモハラ」という言葉も生まれました。

ですが、組織内のコミュニケーションの問題はいまに始まったことではありません。企業において分業と協業を成立させるためには必須であり、これまでも組織活性化の視点で重要なテーマとされてきました。

活性化のために効果的な方法としては、組織の中核である管理者のスキル開発があげられます。たとえば、評価のフィードバックの方法については、研修のテーマとしてよくみられますね。「積極的な聞き役」としてのスキルも大切です。ただ「聞く」のではなく、「傾聴」といわれる行為です。

管理職にとっての傾聴のポイントは、部下から報告や相談を受けた際、話の内容を否定的にとらえず、相手がそのように考える理由や背景について関心を持って聴くことです。これは時間もかかりますし、集中力や努力も必要としますが、部下との信頼関係を構築するために非常に有効です。

言語による発信の大切さ

一方で、言葉によらない「非言語コミュニケーション」も、対人関係においては大きな役割をもちます。たとえば、相手との距離感、アイコンタクト、身ぶり手ぶり、といったものですが、これがオンラインでは活用が難しい状況です。

そのため、やはり言葉でのコミュニケーションを充実させる必要があります。部下から仕事の連絡をもらったとき、あるいは作成した書類が提出されたとき、内容を確認してから返信しようとして数日たってしまった、というようなことはないでしょうか。出社していれば、忙しい様子も相手にわかってもらえるかもしれません。しかしリモートワークでは、自分から発信しなければ、相手に伝わりません。内容を確認する時間がなければ、まずは忘れないうちに、受け取ったことに対して反応を返しましょう。これによって、部下はつながっている安心感を得ることができ、次のコミュニケーションへとつながっていきます。

36協定届が更に様式変更されます(令和3年4月~)

昨年の36協定届の様式変更

昨年4月に、働き方改革に対応して、時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)の様式が変更されたばかりですが、今年も4月以降、様式が変更されます。

昨年の変更では、「時間外及び休日労働を合算した時間数は、1か月について100時間未満でなければならず、かつ2か月から6か月までを平均して80時間を超過しないこと」というチェック項目が追加されました。労働基準監督署は、チェックボックスへのチェックがない届出は原則受理せず、再度の提出を求めているようです。

 

今年の様式変更で何が変わるの?

今年の36協定届の様式変更で変わるのは、以下の2点です。

①36協定届への押印・署名の廃止

②36協定当事者に関するチェック項目の追加

①は、デジタルガバメントの推進が新型コロナにより加速され、行政への届出には原則ハンコを不要とする押印原則の見直しによるものです。

しかし、36協定届が36協定書を兼ねて提出される場合、従来通り記名押印または署名が必要です。押印・署名が省略できるのは、36協定を別の書面で締結して、その内容を36協定届に転記して提出する場合に限られますので、注意が必要です。

②は、36協定の労働者側の当事者である労働者代表が法定通りに適切に選任された者であることの確認のため、チェック項目が2つ追加されました。

チェック項目は、「協定当事者である労働組合が事業場の全ての労働者の過半数で組織する労働組合又は全ての労働者の過半数を代表する者であること」及び「労働者代表が管理監督者ではなく、選出の際に投票や挙手等の方法で選出され、使用者の意向に基づいて選出された者でないこと」です。

 

届出は電子申請も可能です

36協定届の提出は電子申請が可能です。労働基準監督署へ出向いたり郵送したりする手間やコストの削減の他、新型コロナの感染防止の観点からも電子申請をオススメします。