100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.14

2020.11.20 Fri

令和2年の年末調整 紙の場合の変更点

とても長い名前になってしまった用紙

年末調整は、給与を受ける人それぞれについて、原則毎月の給与や賞与などの支払いの際に源泉徴収した税額と、その年の給与の総額について納めなければならない年税額とを比べて、その過不足を精算する手続です。各種「控除申告書」を経理担当者等に出すことになりますが、去年は「給与所得者の配偶者控除等申告書」という名前だった用紙が、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」という、とても長い名前に変わりました。なお、「給与所得者の保険料控除証明書」に変更はありません。

基礎控除変更と所得金額調整控除新設

基礎控除は令和2年から、所得によって減額が行われるようになりました。控除額は、所得金額(給与所得控除後の金額+給与所得以外の所得額)が、

2,400万円以下               48万円

2,400万円超2,450万円以下   32万円

2,450万円超2,500万円以下   16万円

2,500万円超 基礎控除は     0円

に変更となります。

所得金額調整控除は、給与収入が850万円を超える給与所得者で、

①本人・同一生計配偶者・扶養親族いずれかが特別障害者

②年齢23歳未満の扶養親族が居る

①か②のどちらかの条件を満たしていれば(給与収入金額-850万円)×10%=控除額となります。

なお、給与所得と年金所得の両方がある方は、確定申告で所得金額調整控除を受けられますが、年末調整は給与収入の税額の調整を行うものなので、この控除申告書では計算をしません。

電子申請の方が楽?

今年の年末調整は、国税庁が無料ソフトを提供している上に、会計ソフト会社等も、使いやすい年末調整・法定調書等の作成ソフトを販売しています。例えば国税庁のソフトでは、従業員入力を分かりやすくするために、最初に簡単な質問の「はい・いいえ」で入力項目の絞り込みを行う等して、とても長い名前の紙の控除申告書の入力が必要な部分のみを表示してくれます。

男性の育休取得促進について

男性の育休取得を取り巻く状況

男性の育児休業については、「本人の申し出」があれば取得させなければならないと法律で定められており、女性と同じ位置づけです。しかし、男性の育児休業取得率は低く、厚生労働省は2020年度の目標を13%としていますが、2019年の取得率は7.48%でした。年々増加しているものの、目標数値とは乖離しており2025年目標の30%は達成の道筋が見えない状況です。

政府が目標数値を設定して促進している理由は、少子化対策、女性活躍や労働者のワークライフバランスの推進などに効果があると考えられるためですが、経済的不安や職場環境によって取得が難しい面もあり、個人へ推奨するだけでは目標の実現は困難であるとも言われています。

こうした中、労働政策審議会の分科会では、男性の育児休暇取得をより推進するため、企業側の取組みの促進が検討されました。一方で、日本・東京商工会議所が実施した調査では、回答した中小企業2,939社のうち、およそ7割が「義務化」について反対(どちらかというと反対が5割弱)という結果です。主に、運輸業、建設業、介護業など人手不足感の強い業種において反対の割合が高く、「男性の育児休業取得義務化」についての議論が起こっています。

企業の取組みと多様な効果

労働政策研究・研修機構の企業事例報告によると、男性の育児休業取得推進については企業それぞれの風土・文化を背景に工夫が凝らされ、特に効果のあった取組みとしては、「トップからの発信」「個別の取得勧奨」などが多くあげられていました。

その取組みの結果、取得率の向上だけではなく、「仕事の分担の見直し、仕事の属人化の排除、業務の見える化・標準化」など仕事の進め方の変化や、「助け合う風土やお互い様の意識の醸成」など風土の変化、人材確保に当たってのPR効果など、多様な効果が挙げられています。

いますぐ取り組むのは難しい企業も、長期的な計画として、検討してみてはいかがでしょうか。厚生労働省のサイトでは、育児休業制度の内容や事例紹介、社内研修資料など、検討に必要な情報がご覧になれます。(https://ikumen-project.mhlw.go.jp/

「業務委託」「在籍出向」「副業」の労務管理

労働力の活用方法の多様化

新型コロナウィルス感染症の影響もあり人材の動きにも影響が出ています。仕事が減った事業のある一方で人手不足の事業もあり働き方も多様化しています。

雇用以外で仕事を受け負う形態も有り、その違いを知り企業間の労務管理や契約書を交わすことが求められるでしょう。いくつかの契約形態の例で見てみます。

1、業務委託

自社で対応できない業務を外部に委託する契約の総称です。

請負契約や委任契約はこの部類です。

社員を送る側の会社(受託者)は自社の社員に命令して社員を受け入れる側の会社(委託者)から依頼された仕事を請け負います。委託者は受託者に対し、業務委託手数料を支払います。

業務上の指示を出すのは受託者です。委託者が指示を出すといわゆる「偽装請負」とみなされ労働者派遣法の罰則に該当してしまいます。自社が委託者で業務の進め方に注文があれば受託者に話を通す必要があります。賃金、労働時間管理(委託先での労働時間を働いた人が受託先に報告)、社会保険・労働保険の適用は受託者が行います。

2、在籍出向

在責出向は社員を送る側(出向元)との労働契約を維持したまま、受け入れる側(出向先)とも労働契約を締結して働くことです。出向を命じられた社員は出向先の指揮命令を受けて働きます。出向先が出向契約にない業務を命じる場合は都度出向元と相談が必要でしょう。

賃金、労働時間、社会保険・労働保険の取り扱いは出向契約で決めますが、賃金は通常出向元が負担、その場合、社会保険や雇用保険は出向元で加入します。労災保険は出向先の保険を適用することが一般的です。労働時間は通常出向先で管理します。

3、副 業

副業とは本業と掛け持ちで他の仕事をすることで本業先が自社の社員を副業先に紹介した場合は、副業先も労働契約を結びます。業務中の指示も副業先が出します。労働時間は副業先では副業先が管理します。

時間外労働は本業と副業先と両方で働く場合、両方の労働時間を通算し法定労働時間を超えた時間が副業先(原則労働契約時期が遅い方)での支払いになります。社保加入は条件を満たせば2社の適用になり、雇用保険は賃金の多い方で加入します。

大家さん知っている?

改正消費税法の新通達

法改正に合わせた新通達によると、家屋の賃貸借契約の用途欄が「居住用と事業用」の場合は「用途不明」扱いとし、実態把握を必要とし、その結果、居住供用が明瞭なら、消費税非課税取引になります。

さらに、新通達は、住居利用の有無を主に「賃貸人が把握」しているかどうかに委ねています。賃貸人には日常的に室内利用を観察する権利などありませんので、明らかにこれは行き過ぎの判定規定です。

新通達の判定基準への疑問

契約書が住居利用専用以外の場合は、住居以外に利用することが契約違反になるわけではないので、賃貸人には住居利用の有無を知るべき義務も必要性もリスクもないかもしれません。よって、賃貸人が利用実態を把握しているか否かを、判定の要素にするのは、前提を無視したものになっていると言えます。

契約書で「居住用と事業用」としている以上、非住居利用は前提になっていることで、その利用実態を賃貸人が把握していなかったとしても、それが「居住の用に供されていることが明らかな場合」に該当する、と勝手に通達が決められるものなのか、疑問です。

テレワークの普及

現在のコロナ禍の中での急速なテレワークの普及で、大きなマンションの、ロビーのような共有スペースが、テレワーク作業の場に化して、マンション管理組合に苦情が寄せられたりしています。

また、日税連の会長コメントでテレワークの導入を推進するとし、税理士事務所のメンバーが自宅で業務をしても税理士法に抵触しないとされました。

テレワークが当り前になると、居宅使用と業務使用との境界が普遍的になくなることになり、居宅の賃貸契約でテレワーク禁止とするわけにもいかないだろうから、賃貸契約の使用目的欄が「居住と事業」とするのが普通のことになるかもしれません。

インボイス導入までの話です

なお、インボイス制度が導入されたら、インボイスを挟んで課税売上と課税仕入が形式的に対置するので、インボイスのある取引か、ない取引かに分別され、事実認定・状況判定などというものは基本的になくなるように思われます。

企業による社会貢献活動の拡大

経営理念の実現に加え、社員の成長も

経団連が9月に発表した「社会貢献活動に関するアンケート調査結果」によると、社会貢献活動の役割や意義について、回答企業の9割以上が「企業の社会的責任の一環」と回答しました。SDGsの浸透もあり、企業側の社会的責任に対する認識も定着してきています。

そして、8割以上が社会貢献活動を「経営理念やビジョンの実現の一環」とし、「社員が社会的課題に触れて成長する機会」と回答した企業が4%から53%と、前回調査から大幅に増えていることも特徴的です。経営戦略の一部として捉え、社員の参画を重視し、それが社員の成長にもつながるという新しい視点が加わっていることがわかります。

活動内容については、回答企業の93%が「寄付金等の資金的支援」で最も多く、「自社製品やサービスの無償提供」、「設備・施設の貸し出し」などの物的な支援が6割前後となります。社員がより深く関わっている活動としては、「技術協力、ノウハウ提供」が48%、「出向等の人材派遣」や「社員によるプロボノ支援」が3割強、「社員による寄付やボランティア活動の推進」が87%です。

人材の採用にも影響

社会貢献活動は、いまいる人材の育成だけではなく、より優秀な人材の採用にも影響する可能性があります。

2021年卒の大学生を対象とした「就活生の企業選びとSDGsに関する調査(DISCO)」によると、就職先企業に決めた理由については「社会貢献度が高い」が最も多い結果となっています。「給与・待遇が良い」や「将来性がある」を上回り、2019年卒、2020年卒と3年間続いている傾向です。

企業の社会貢献活動は、社会からの期待の高まりにともない、長期的な視点での事業活動への影響も大きくなっていると考えられます。

これまで取り組んでこなかったという企業も、自社の事業領域との関連、あるいは地域社会とのつながりから検討してみてはいかがでしょうか。連携先を探す場合には、地域のボランティアセンターなどの相談窓口が利用できます。