100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.6

2020.09.25 Fri

健康診断と健康情報の取り扱い

健康診断は使用者の務め

使用者は従業員の健康を確保するため、労働安全衛生法で常時使用労働者の1年以内ごとに1回の健康診断受診義務が定められています。

従業員の健康情報を知り、安全配慮義務を行い健康管理、情報管理することは使用者の務めです。企業と労働者は労働契約を結んでいるので労働できる健康を有しているかを把握しておかなくてはならず、労務提供に関連した健康状態を取得しなくてはなりません。受診の結果の取り扱いは使用者に帰属するとされています。

適切な情報管理

使用者は健康診断の履行を通じて労働者の心身の状態に関する情報を取得・利用・保管することとなります。使用者には労働者の健康確保が求められるものの、当該情報は「要配慮個人情報」にあたります。労働者の個人情報を保護する観点から、現行制度においては使用者が心身の状態の情報を取り扱えるのは労働安全衛生法令及びその他の法令に基づく場合や本人が同意している場合の他、労働者の生命、身体の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき等です。秘密保持は重要ですがプライバシー問題とは別であり、使用者は個人情報を得るので情報管理をすることが求められ、情報は慎重な取り扱いが求められます。記録は5年間の保存義務があります。

就業規則には健康診断の受診義務が載っていると思いますが、結果が本人にしか届かない場合は受診結果を会社に報告する旨を規定しておくのがよいでしょう。

健診と費用、賃金

健康診断は使用者の義務なので、健康診断に掛かる費用は使用者が負担しなければなりませんが、しかし、健康診断を受診している間の時間に賃金が発生するかは、健康診断の種類によって異なります。
まず、雇用時の健康診断や、定期健康診断は業務に関連して行われるものではないため、支払ってもよいけれど、支払い義務はありません。特定業務に従事する者は業務に関連して行うものであるため、賃金を支払う必要があります。

留学生・家族滞在者 資格外活動許可に関する解釈変更

資格外活動許可が大幅に解釈・運用変更

在留資格「留学(留学ビザ)」と「家族滞在(家族滞在ビザ)」の方が取得する「資格外活動許可(アルバイト許可)」について、入管庁より重要な解釈変更が行われました。

重要なポイント

①一般的な資格外活動許可(アルバイト許可)で行うことができるアルバイトを「労働時間が明確な活動」に限定。「業務委託契約」「請負契約」「個人事業」は要注意!

②解釈変更により、「週28時間以内」を意識するだけでは不十分になる恐れが。

これまでの資格外活動許可

留学生や家族滞在者に許可される「資格外活動許可」は「包括的許可」と呼ばれ、大まかにいえば、「週28時間以内(留学生は学則で定められた長期休暇期間中は1日8時間以内)であれば、内容を問わず(風俗営業店舗を除く)アルバイトできる」というものでした。しかしながら、今回の解釈・運用変更により、週28時間以内という「時間数」だけではなく、「活動内容」についても、次のような注意が必要になります。

許容範囲が「労働時間が明確な活動」に

SNSの普及なども影響し、近年のアルバイトには単に労働時間数で報酬が計算され得る形のものだけではなくなってきています。「Uber Eats」の配達員として業務委託報酬を得ている方、「インフルエンサー」として企業から広告報酬を得ている方など、報酬に対する労働時間が明確に定まらない働き方が増えました。

今回の解釈・運用変更では、包括的資格外活動で許可される活動内容は「労働時間が明確であること」が求められることになり、以下のような活動を行う場合は「個別許可」を要することとなりました。

(1)客観的に労働時間を確認することが困難な個人事業主等として活動する場合

(2)労働時間が明確ではない業務委託契約や請負契約等を結んで働く場合

個別許可を得ることのできる活動は、「留学」「家族滞在」のビザの種類ごとに、個別に要件が定められています。今まで認められていた職種の全てに「個別許可」が下りるわけではないことにご注意ください。

この解釈・運用変更により、アルバイト形態によって資格外活動違反となる恐れもあります。留学生や家族滞在者に対し、労働時間数が明確ではない形でアルバイトを依頼している企業様等も十分ご留意ください。

高齢者の職場環境改善に補助金活用を

新型コロナウィルス感染防止にも

エイジフレンドリー補助金は、高齢者が安心して安全に働くことができるよう、職場環境改善等の安全衛生対策に補助を行うため創設されました。対象となるのは、高年齢労働者(60歳以上)を常時1名以上雇用している中小企業で、労働保険及び社会保険に加入していることなどの要件があります。

費用補助の対象となる対策は、

①身体機能の低下を補う設備・装置の導入

②働く高齢者の健康や体力の状況の把握等

③安全衛生教育

④その他、働く高齢者のための職場環境の改善対策

などがあげられます。

また、社会福祉施設、医療保険業、旅館業や飲食店等の接客サービス業等、利用者と密に接する可能性が高い業種においては、新型コロナウィルス感染防止のための設備作業の改善が大切です。利用者や同僚との接触を減らす対策や対人業務を簡素化できる設備・作業改善も、補助金の対象として想定されています。

具体的には、介護におけるリフト、スライディングシートの導入により、抱え上げ作業を抑制することや、客室への荷物配送・配膳等の自動搬送機器の導入などがあげられます。

補助金額は、高年齢労働者のための職場環境改善に要した経費の2分の1で、上限額は100万円(税込み)となります。

補助金申請の手続き

補助金申請期間は、令和2年6月12日~10月末日、必要書類等はHPに掲載されています。申請先は、(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会で、平日9:30~12:00、13:00~16:30に電話での問い合わせ対応も行っています。

(詳細は→https://www.jashcon-age.or.jp/)

申請の翌月に審査が行われ、交付決定が行われた案件については交付決定通知が送付されますが、交付決定日以前に支払った費用は補助対象となりません。また、安全衛生対策のための機器等をローンで購入した場合やリースの場合は、補助の対象外となりますので、ご注意ください。