100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.2

2020.08.28 Fri

進む働き方改革 制度導入のポイントは

多様な働き方ができる時代に

時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができるテレワークや、総勤務時間を変えずにラッシュアワーを避けて通勤をする時差出勤、社員が自由に出勤・退勤時間を決められるフレックスタイム制の導入など、新しい働き方が広がってきました。

これらは、近年政府が推し進めてきた働き方改革の一環として、労働生産性の向上や長時間労働の是正を目標に、大手企業を中心に浸透してきていましたが、昨今の新型コロナウイルスの影響により、より多くの企業でこれまでの働き方を大幅に見直す事態となり、急速に導入が進んでいます。

利点も多いが、気になる部分も

例えば、会社に出社せずに自宅や外勤先、サテライトオフィス等からインターネットを通じて、会社のサーバーにあるファイルにアクセスしたり、仕事の電話に対応したりできるテレワーク。

営業で外回りの後、事務仕事をしに会社に戻る必要がなくなったり、育児や介護を担う労働者が在宅勤務をすることで通勤時間を有効に活用できたりするなど時間にゆとりを持たせた勤務を実現できます。

その一方で、社員同士のコミュニケーション不足や、仕事と仕事以外のメリハリをつけにくい、長時間労働になりやすい、勤務時間管理や在席確認が難しい、情報漏洩のリスクが上がる等の、気になる部分もあります。

時差出勤やフレックスタイム制においても、勤務開始や終了時刻を調整することで、私生活との両立がしやすくなるという利点があるのですが、一方で取引先や他部署との連携業務において時間の設定が難しいことや、急な会議や電話に応対できない等、社員が異なる時間に勤務することによるデメリットもあります。

企業側が注意すること

大切なことは、制度に関する就業規則を整備し、適用する社員の範囲を明確に定め、勤務時間管理をしっかり行うことです。

勤怠システムを活用するのも良いでしょう。過重労働や反対にルーズな勤務状況とならないよう、社員本人の時間管理意識も大切です。ワークライフバランスを意識した、働きやすい環境作りをしたいですね。

レジ袋の有料化と医療費控除

令和2年7月1日からレジ袋の有料化義務

2020年7月1日から、すべての小売業でレジ袋の有料化が義務化されました。医療機関を受診後に交付される、処方箋で薬を購入する際に、調剤薬局が薬を入れる袋も、対象となっています。

レジ袋は医療費控除の対象となるのか?

調剤薬局では、薬代とレジ袋代が別々に会計されていますが、レジ袋代も医療費控除の対象となるのでしょうか?

(1)別々に会計されるということは、調剤薬とは別という認識であるから対象外

(2)調剤薬を入手するためのものであるから医療費控除の対象

(3)ケースバイケースで、対象となるものと対象外となるものに分かれる

(4)その他、のいずれでしょうか?

医療費控除とは

処方箋による調剤薬の購入は、「治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価」として所得税法で医療費控除の対象とされています。薬そのものは対象ですが、薬購入時のレジ袋も控除対象と言えるのでしょうか?

医療費控除対象の区分基準として、医療を受けるに際して直接必要で医療機関等に支払うものは医療費とされています。また、タクシー代などの医療を受けるのに直接必要なもので第三者に支払う対価も、医療費に含めることができます。

一方で、自己の都合による差額ベッド代や親族などに支払う付添料、さらに入院時の病院食以外の外食や出前は、自己都合による費用として対象外とされています。

以上のことからすると、「医療品としての調剤薬の購入に際して調剤薬局に支払うレジ袋代」は、調剤薬を入手するために第三者である調剤薬局に直接支払う費用として医療費に含めてよいのではないかと考えられます。一方で、買い物袋(いわゆるエコバッグなど)を持参しないのは自己都合だから対象外とすべきという意見もあるかもしれません。しかしながら、買い物に際して、購入者側にまで買い物袋の持参義務が課されてはいない現状では、そこまで否定するには無理があるでしょう。

よって、直接調剤薬のみを入れてもらうレジ袋は医療費控除対象、調剤薬以外の買い物もしていればどちらが主かで決める、調剤薬を入れるためのエコバッグの購入費用は対象外というように分かれるのではないかと考えられます。

「在職定時改定」の導入 在職者の老齢厚生年金が毎年増額

老齢厚生年金額の改定

今年6月に公布された年金機能強化法の改正により、令和4(2022)年4月以降、「在職定時改定」が新たに導入されることになりました。

現行では老齢厚生年金の受給開始後も被保険者として就労した場合、資格喪失時(退職時または70歳到達時)以外に老齢厚生年金の額が改定されることはありません。

そのため65歳以降も就労し厚生年金被保険者として保険料を納めていても、退職するか70歳に到達して資格喪失するまでは受給額は増額されない状態でした。

「在職定時改定」とは

今回導入される「在職定時改定」は、この矛盾を解消すべく、65歳以降の在職中も、毎年1回(10月分から)、直近1年間に納めた年金保険料の納付実績を加味した老齢厚生年金の額に見直すことにより、毎年タイムリーに年金額に反映され、その効果が早く見え増額の実感を得ることができます。

このことは就労意欲の向上にもつながるでしょう。

在職老齢年金による支給停止に注意

注意が必要なのは年金月額と総報酬月額の合計が47万円に近い方です。

65歳以降の老齢厚生年金の受給者が、就労を継続し、在職老齢年金を受給していると、年金月額と総報酬(給与+賞与)月額の合計が47万円を超える場合、超過額の半分に相当する老齢厚生年金の支給が停止されます。

「在職定時改定」によって老齢厚生年金の額が増額されることになっても、総報酬月額と改定後の年金月額の合計が47万円を超えれば老齢厚生年金の額は増えますが支給停止にかかることがあり、マイナスにならないとも限らないので注意が必要です。

軽減税率制度に関する簡易課税制度の届出の特例

消費税率引き上げ時の経過措置

税率3%で導入された消費税率は、5%、8%と引き上げられ、令和1年10月1日から標準税率が10%とされています。

過去の増税時にも税率引き上げに伴う経過措置が取られてきました。たとえば、施行日前後の取引にかかる税率の適用関係等、旅客運賃等・電気料金等・工事の請負等・資産の貸付・通信販売等の税率等に関する経過措置などです。

今般の税率引き上げでは軽減税率も導入されていて、いつもの税率引き上げ時の措置に加えた取り扱いもなされています。

簡易課税制度の届出の原則と特例

簡易課税を選択する場合には、「適用を受けようとする課税期間の前日」までに届出書を提出しなければならないと規定されています。そのため、3月決算法人であれば、次の課税期間が始まる4月1日より前の3月31日までに提出しなければなりません。

しかしながら、軽減税率導入に関する特例として、「令和元年10月1日から令和2年9月30日までの日の属する課税期間」においては、提出期限の特例があります。特例として、課税仕入れ等の税率区分が困難な事情がある場合には、届出の期限が「簡易課税制度の適用を受けようとする課税期間の末日」までとされています。すなわち、“困難な事情がある場合”には、課税期間が始まっていても選択届により適用が可能となります。先ほどの3月決算の例でいうと令和2年4月1日から9月30日までが、令和2年4月1日から令和3年3月31日までの課税期間に入っていますから、令和3年3月31日までに届出をすれば、令和2年4月1日の課税期間から簡易課税が適用されることとなります。

(注)課税期間特例を使っていない前提。

前提は、“困難な事情がある”かどうか?

消費税の軽減税率制度に関する取扱通達の制定について(法令解釈通達)の21(困難な事情があるときの意義)において、「その困難の度合いを問わず、同項に規定する経過措置を適用することができる」としています。困難の度合いを問わないのですから、困難であるかどうかは事業者の主観によることで差し支えなく、事業者が困難と感じれば、適用は可能ということになるものと考えられます。

災害を受けた時の 損失の取扱い

今年も多い豪雨災害

今年も日本各地で豪雨によって被害を受けている地域が多くあります。被害に遭われた方に、お見舞いを申し上げます。

災害の多い日本には、災害被災時の税の特別措置も数多く用意されています。今回は法人の災害被災時に損金となるものについて、横断的に見ていきたいと思います。

災害関連の損失・費用はだいたい損金に

災害が発生したことにより発生した損失や費用は、損金となります。

1. 棚卸資産や固定資産などの資産が災害により滅失・損壊した場合の損失

2. 破損した資産の取り壊し・除去のための費用

3. 土砂等の除去費用・被災資産の原状回復費用

4. 被災前の効用を維持するための補強工事等の費用

5. 従業員等に対する災害見舞金品

6. 災害見舞金に充てるために同業団体等へ拠出する分担金等

7. 取引先に対する災害見舞金等

8. 災害を受けた取引先への売掛債権等の免除・融資の条件変更による利息の低減分

9. 自社製品等の被災者に対する提供

上記はすべて損金算入をしてかまわないとされています。なお、被災資産について支出する費用で、資本的支出か修繕費か明らかでないものがある場合は、その金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理も認められます。

また、青色申告書を提出できない事業年度であっても災害による損失金の繰越しは可能ですし、災害損失欠損金は繰戻し還付も可能となります(白色は前1年、青色は前2年)。

防災設備投資に助成もあります

令和元年(平成31年)税制改正において、中小企業が行う災害への事前対策を強化するために、防災・減災設備を取得した場合に、取得価額の20%の特別償却が受けられる制度があります(現行制度の適用期限は令和2年度末まで)。

災害で受ける被害を少しでも減らすように、日ごろの備えは重要です。