100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.96

2022.11.11 Fri

副業・兼業ガイドライン改定

副業・兼業のガイドライン策定経緯

副業・兼業については働き方改革計画の一環で平成30年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が策定されています。その後令和2年に労働時間管理の問題を中心に大幅改定され、令和4年7月改定には「情報開示」が求められています。内容は「企業は、労働者の多様なキャリア形成を促進する観点から、職業選択に資するよう、副業兼業を許容しているか否か、また、条件付き許容の場合はその条件について、自社のホームページ等において公表することが望ましい」としています

公表とは? 服業・兼業ガイドラインQ&A

①公表の対象となる「副業・兼業」の範囲は本業と副業・兼業先の双方で雇用契約を締結する「雇用型」雇用契約と、兼業先は委託契約という「非雇用型」の形が考えられますが両方が対象です。

②公表事項

公表すべき事項としては、まず、副業・兼業を許容しているか否か、また条件付き許容の場合はその条件について公表することが必要です。

③公表方法は副業・兼業ガイドラインでは公表の方法として「自社のホームページ等」とされていますが、会社案内や採用パンフレットも考えられるとしています。今回の公表推奨の趣旨から採用においてはその媒体に公表するのが適当でしょう。

副業・兼業の許容状況の開示のポイント

法律上、副業・兼業は原則として自由です。これを禁止することは企業に裁量はありません。

禁止できるのは、

①労務提供上の支障がある場合

②業務上の秘密が漏洩する場合

③競業により自社の利益が害される場合

④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

に限られています。

ですから、上記に該当しないときは就業規則上の副業・兼業禁止規定違反を理由としての懲戒解雇や退職金不支給等の不利益な処分は無効になることもあり得ます。一律に副業・兼業を禁止していたり、上記のような事項がないのに許諾を求めるのは見直しが必要になるでしょう。

法人設立期間中の損益 ~帰属先・注意点など~

法人の設立手続完了前に発生の損益の帰属

新たに会社を設立するには、登記書類の準備から定款認証・法務局への登記など、概ね1か月程度の期間が必要です。開業準備のタイミング次第では、法人の設立日(法務局への登記申請日)より前に経費や売上などの損益が発生することもあります。こうした設立期間中の損益の帰属はどこになるのでしょうか?

法人の設立期間中にその設立中の法人について生じた損益は、その法人のその設立後最初の事業年度の所得の金額の計算に含めて申告することができるものとするとされています。ただし、①設立期間がその設立に通常要する期間を超えて長期にわたる場合や②その法人が個人事業を引き継いで設立されたものである場合(いわゆる法人成りの場合)はこれに該当しない、とされています。

設立前の領収書等の宛先

こうした期間に発生した経費の領収書等の宛先はどうすればよいのでしょうか?

登記前なので実在しない会社名ですが、設立後最初の事業年度の損益とすることを考えると、設立予定の会社名を記載してもらうことが無難です。正しくは登記完了前の会社名の使用はできないのですが、私的な費用とその法人に帰属すべき費用を明確に区分するために設立予定の会社名を使う方がよいという考えによります。

売上の仮請求書は後日正式請求書に差替え

設立期間中に経費が発生することはよくありますが、たまに売上が発生してしまうこともあります。この場合は、設立期間中であれば、設立手続き完了前である旨をしるした仮の請求書や領収書を発行し、後日、設立完了後に、正式な請求書や領収書に差替える手続きとなります。

なお、令和5年10月1日から消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式(インボイス制度)が開始されます。会社設立日が令和5年10月1日以降となる場合において、会社設立後に発行した正式な納品書や請求書であっても、適格請求書発行事業者の登録を受けるときには、改めて適格請求書の発行が必要となります。今すぐの話ではありませんが、今後会社設立をされる場合には留意が必要です。

損金経理しないでの損金算入

損金経理とは

法人の各事業年度の収益の額、売上原価、販管費、利益・損失は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるもの、とされています。

損金については、この会計処理がなされている事を特に「損金経理」と名義して、損金算入の要件としている税法規定もあります。

損金経理が要求される税務項目

「法人がその確定した決算において費用又は損失として経理すること」、これが損金経理の定義です。

損金経理が要件というのも、別段の定めであり、次の項目等で要求されています。

① 減価償却資産・繰延資産の償却

② 引当金・準備金の繰入・積立

③ 圧縮記帳

④ 使用人確定・未払賞与、業績連動給与

損金経理が要件ではない税務項目

現金預金の動きや届いた請求書・領収書に合わせて行われる会計処理の中で、税法の求める損金経理はその一部に過ぎません。

決算確定時で未だ内容の不明な仮払金が、申告時点で旅費交通費と判明したというような場合は、損金経理要件対象ではないので、申告書別表四にて旅費交通費認定損の減算処理・申告調整することになります。

決算整理として、処理すべきであった、外貨預金等の期末残高に係る為替差損の計上、長期前払保険料等の費用化処理、航空機オペレーティングリースなどの損失処理、等々も、処理漏れであった場合には、損金経理要件対象ではないので、申告書別表四にて認定損の減算処理・申告調整することになります。

税務の許容する巧い処理

ところで、航空機オペレーティングリースなどは、会社の本来業務ではなく、経常損益の分析の埒外で特別損益項目なので、「損金経理」から外し、申告書別表四ほかにて投資損失認定損や投資損失限度超過額損金不算入の加算減算処理をしていても、税務上は許容範囲かもしれません。

でも、投資額が大きく、契約期間の前半は投資額を超える累積損失となることが多く、これを「損金経理」で確定決算に取り込むと、赤字決算になってしまうので、敢えて会計処理外しの選択をしているのだとすると、会社法的には、赤字を黒字に変え、債務を簿外化する粉飾決算になります。

消費税の基本 簡易課税制度とは?

かかったとみなされる仕入れ税額

納める消費税の額は、原則1年間に実際に預かった消費税から、事業者が実際に支払った消費税を差し引いて求めますが、仕入れ先などに支払った消費税を一つずつ計算するのは大変です。簡易課税制度は、中小事業者の納付事務負担に配慮する視点から、事業者の選択により売上に係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度です。

事業区分とみなし仕入率

簡単にいうと「売上に係る消費税の何%かを仕入れに係る消費税として計算して良い」という制度です。みなし仕入率は業種によって定められています。

簡易課税制度は基準期間(前々年・前々事業年度)における課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している場合に適用することができます。

インボイス制度と簡易課税選択届出書

インボイス制度は請求書等に登録番号が必要になりますが、簡易課税制度そのものの仕組みは廃止されず、特に変わりません。今まで免税事業者であった中小企業者が移行先に考えるのも簡易課税制度となることが多いでしょう。

インボイス制度開始の令和5年10月1日に向けて、免税事業者が課税事業者になる場合の消費税簡易課税制度選択届出書についても、経過措置が設けられています。選択届出書をインボイスの登録日の属する課税期間中に、その課税期間から簡易課税の適用を受ける旨を記載し提出した場合、その年の初日の前日に届出書を提出したものとみなされて、インボイスの登録日から簡易課税制度が適用されます。

役員報酬の改定は新事業年度開始から3か月以内

取締役の報酬の改定(法人税法の観点から)

取締役の報酬は、「定款に定めのないときは、株主総会の決議によって定める」と会社法で規定されています。これはお手盛りによる弊害を防ぐためです。

さらに、法人税法では、役員(=取締役の他、税法上のみなし役員も含みます)に対する報酬は、定期同額給与でなければ損金算入されません。役員報酬の増減で法人の利益操作をすることを防止するためです。

そして、その改定は事業年度開始の日から3か月以内にされたものでなければ損金不算入となります。

新報酬決定後の改定

一般的には、定款の変更ではなく、決算承認が行われる定時株主総会で役員報酬の改定が決議されることになると思われます。そして定時株主総会は、会社ごとに決算を締める所要時間を鑑みて、たとえば2か月目の25日前後などと、ほぼ毎年同じ時期に開催されているものと思われます。

もし、新規の大きな売上が発生し会社の利益増が予想できる場合において、1か月でも早く役員報酬の増額をしたいと考えたときには、定時株主総会を前倒しするか、臨時株主総会を開催して、新事業年度1か月目から増額した役員報酬を適用させることもできます。

また逆に、存外に顧客の離脱(=顧客の倒産もままあります)が発生し、計画していた売上と利益が大幅に減るような事態となった場合にも、事業開始3か月以内であれば、減額改定もできます。

この3か月という期限を超えた増・減額改定は、法人税法における損金不算入となります。

しかしながら、個々の事情に照らし、税務上の取り扱いが判断されますので、業績等の悪化により役員給与の額を減額することをご検討の際は、顧問税理士とよく相談してください。

社会保険料月額変更の影響も考慮のこと

役員報酬の増減は会社の損益に影響しますが、もしその増減の幅が大きければ(=社会保険の標準報酬の等級が2以上変動する場合)、会社負担の社会保険料の金額も増減します。そのため、役員報酬額の増減について検討する際は、社会保険料の増減の影響も踏まえた上でのシミュレーションが必要です。