100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.9

2020.10.16 Fri

上場会社の監査だけではない!大会社の監査と会計監査人

代表取締役を誰が監督するのでしょうか

「監査」には、金融商品取引法に基づく有価証券に対する監査(上場会社)とは別に、会社法に基づく会計監査人の監査(大会社)があります。ご存じでない方も多いので、少し説明したいと思います。

大会社とは資本金が5億円以上又は負債総額が200億円以上の会社です。代表取締役は株主から会社経営についての大きな権限を委託されており、大会社ともなると会社の規模が大きいため、代表取締役の行動は特に大きな影響を与えます。

株主の代理として代表取締役や執行権限を持つ取締役を監督する役割は、取締役会や監査役会が担っております。

更に会計業務については会計監査人を置かなければなりません。また、近年ではこれらに加えて社外取締役や社外監査役の制度も制定されました。

監査役の監査業務とは

監査役の監査は、代表取締役や取締役がその職務を全うしているか等の業務全般を見る業務監査と、会計業務について適法に処理されているか、間違いや不正がないかを調査する会計監査に分けられます。

しかし、大会社の会計業務は海外取引や関連会社との取引等量も質も複雑で膨大になるため、会計の専門家に依頼しないと監査役では手に負えません。そこで会計監査人による監査が必要になります。

会計監査人による監査

会計監査人は公認会計士かその集まりである監査法人が選任されます。当然1人で行うのではなく、規模にもよりますが、数人から数十人の規模になる場合もあります。

会計監査人には計算書類とその附属明細書の調査を行い、取締役に報告を求め、帳簿を閲覧する等の権限が与えられています。

最終的には会計監査人は監査役に会計監査報告書を提出し、計算書類と附属明細書の適法性について意見を表明します。

会計監査人は賠償責任を負うことも

後で事実と異なる意見を表明したとなった場合には、会計監査人が会社や第三者に対して、賠償責任を負うこともあります。

そのため、会計監査人は、会社から報酬を貰ってはいますが会社に不利な意見を表明する場合もあります。

住民税特別徴収税額の変更通知書の確認漏れと納税過多

納税過多の連絡があってはじめて気付く?!

顧問先の経理担当者から、「区役所から『税金の納め過ぎがあるのでどうしますか?』という連絡があったのですが、どうすればよいでしょうか?」という問い合わせが続きました。7-9月にかけてこうした問題が発生するケースが近年増えています。

給与天引きで会社が納付する住民税の特別徴収税額は、給与所得者のその年1月1日に住所地のある自治体が、前年の所得に基づき計算し、5月頃税額が通知され、6月から翌年5月までで分割納付されます。

自治体は1月末までに会社から提出された給与支払報告書に基づき、住民税額を計算します。その後の個人の確定申告により、当初の税額に変更があった場合には、自治体が最新の申告情報で住民税の再計算をし、同様に給与支払者に変更通知書を送付し、翌年5月までの納税額が変更されます。

税金の納め過ぎとなるのは、変更通知書を受け取っているにもかかわらず、給与計算の担当者への連絡が失念された時です。

特別徴収税額の変更通知が遅れる背景

給与所得者の所得税は、12月に会社が行う年末調整で確定します。ただし、年末調整では対象とされない医療費控除などの目的で翌年2月16日から3月15日までの期間で確定申告をすることもできます。

確定申告情報は各自治体に税務署から回付される(=所得税の申告書に住民税用の記載項目もある)ので、3月15日までの申告情報で各自治体は住民税の計算を5月までにすることができていました。

ところが、確定申告不要のふるさと納税ワンストップ特例制度(=納税先自治体が1年間で5自治体までで申請可能)が適用されると、自治体間の連絡が遅くなり、当初の住民税特別徴収税額の通知に反映されず、後日変更通知書が送られる事態となり、これが途中変更の原因となりました。

官庁からの通知書は忘れず担当者へ!

定期通知である5月の住民税特別徴収税額の通知書や9月分の社会保険料から適用される標準報酬決定通知書は、毎年のものなので、確認と保管は適時に行われます。

しかしながら、変更通知書(住民税・社会保険とも)は、往々にして給与計算担当者への通知が失念しがちです。

後日の修正は何かと面倒です。担当者への書類回付は忘れないよう留意して下さい。

商業登記における代表者の氏名・住所変更登記

登記簿における代表者の氏名・住所

会社の代表者については、氏名・住所が登記されています。登記されている事項が変更した場合には、その変更登記をしなければなりません(会社法第915条)。

住所の変更とは登記されている代表者の住所に変更が生じたときです。具体的には、引っ越しして住民票上の住所を移したときです。

なお、住居表示の実施や行政区画の変更により住所のうち地番まで変わった場合にも同様です(地番までの変更がない場合には法律上住所変更登記が擬制されるため登記申請は不要です)。

(例)〇〇市××町一丁目1番1号

〇〇市××町一丁目2番2号

住所変更登記が必要

 

〇〇市××町一丁目1番1号

△△市△△町一丁目1番1号

住所変更登記は不要(住居表示の実施や行政区画の変更でも地番が変わっていないため)

また、氏名の変更とは登記されている氏名に変更が生じたときです。具体的には、結婚、離婚、養子縁組、離縁等により氏名が変わったときです。

(例)  甲野 花子

乙野 花子

氏名変更登記が必要

過料の可能性があるかも?

住所変更や氏名変更があったのに放置していた場合ですが、過料に処せられる可能性があります(会社法第976条第1項第1号等)。

増資をした、本店を移転した、目的を変えた等は登記をしなければとの認識があると思いますが、代表者の住所の変更は見逃し勝ちです。

原則は、変更の事由が生じてから2週間以内に変更の登記をしなければなりません。

会社法上、過料に処せられる可能性がありますので、このように代表者の住所が変わった場合は、司法書士に依頼するか、ご自身で登記をするようにしましょう。

令和2年分から適用開始 所得金額調整控除に注意

令和2年分から適用される所得税の改正項目は多岐にわたり、基礎控除・寡婦控除・給与所得控除・公的年金等控除・青色申告特別控除の改正や、ひとり親控除・所得金額調整控除の創設などがあります。このうち所得金額調整控除は、新たに創設された制度で適用が想定されるケースも多そうです。今年の年末調整で戸惑わないよう注意しましょう。

所得金額調整控除

所得金額調整控除には、以下の二種類の控除があります。

(1)子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除

【適用対象者】 その年の給与等の収入金額が850万円を超える給与所得者で、かつ、①本人が特別障害者に該当する者、②年齢23歳未満の扶養親族を有する者、又は③特別障害者である同一生計配偶者・扶養親族を有する者

【所得金額調整控除額】 {給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円) - 850万円}×10%

(2)給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除

【適用対象者】 給与等の金額と公的年金等に係る雑所得の金額がある給与所得者で、その控除後の合計額が10万円を超える者

【所得金額調整控除額】 {給与所得控除後の給与等の金額(10万円超の場合は10万円) + 公的年金等に係る雑所得の金額(10万円超の場合は10万円)}-10万円

注意点

年末調整で適用できるのは(1)の制度ですが、この制度については以下の注意が必要です。

①「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出とは別に「所得金額調整控除申告書」の提出が必要となります。

②共働きの場合、扶養親族が一人であっても要件を満たせば、夫婦の双方で適用することも可能となります。

共働き世帯で扶養控除の適用を受ける場合は、いずれか一の者の扶養親族にのみ該当するものとみなされますが、この制度ではそのような取り扱いはありません。

住宅ローン完済による抵当権抹消

住宅ローン完済

ご自宅である不動産を購入するとき、だいたいの方は金融機関でローンを組んで購入するのが一般的です。

金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、抵当権設定契約も併せて締結します。

金銭消費貸借とは、お金を貸してくれる人とお金を返す約束をしてお金を借りることです。

抵当権設定契約とは、お金を借りた際に購入した不動産を担保に出すことです。ローンの返済が滞ったり、ローンが支払えなかったり、契約違反をしたりすると、抵当権が実行され競売手続きに移行して差押えされ、最終的には競売で競り落とした人が払った代金でローンを払うことになります。金融機関は法律の手続きを利用し強制的に貸したお金を回収することになります。

このようなトラブルがなく、長年にわたりローンを支払い完済になった場合には、その抵当権を抹消する手続きを自分でしなければなりません。なぜかというと借入時の「抵当権設定契約証書」には「登記にかかる費用は全て債務者と所有者が負担する」とあるからです。

抵当権抹消の必要書類

ローンを完済すると、金融機関から抵当権の抹消に必要な書類が、郵送なり手渡しなりで手元に届くことになります。

その書類の中身は、抵当権の抹消に必要な書類は渡したから後は自分でやるか司法書士に頼んでやってねという感じです。

具体的に渡される書類は、①抵当権解除証書(登記原因証明情報)、②登記識別情報(登記済証)、③委任状、④その他、原契約書等ローンを組んだ時の書類を渡されるのが一般的です。その中で①~③は登記にて使用し、申請書を作成して登記申請します。

抵当権抹消登記の必要性

ローンを完済したからとそのまま放置しておくと、いろいろなデメリットが出てきます。いざ抵当権抹消登記をしようとしたときに、上記金融機関から渡された書類が紛失している等が考えられます。また、ローンを完済しているのに抵当権を抹消していないとその不動産を売却することができません。ローンを完済しているのに抵当権だけついているのも気持ちのいいものではありません。ローンを完済したら速やかに抵当権の抹消をすることをお勧めします。