100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.88

2022.09.16 Fri

令和4年度地域別最低賃金

47都道府県で30円~33円の引き上げ

令和4年地域別最低賃金改定額が中央最低賃金審議会で取りまとめられ公表されました。各都道府県労働局長の決定により10月1日より順次発令されます。

地域別最低賃金は全国整合性を図るため目安額のランクを設けていますが、改定額を見て行くとAからDの47都道府県すべてが30円以上引き上げられ東京都は時給1,072円と最高です。

最高額1,072円と最低額853円の金額差は219円です。低水準の地域の上げ幅が高まり差は少し縮まりました。

引き上げ額全国加重平均31円過去最高

近年最低賃金は引き上げの流れが続いていていましたが、新型コロナウィルス禍からの経済再開が本格化し、各地で人手を求める動きが強まっています。賃金水準が高い地域に隣接する地域では、労働力の流出を抑えるための賃上げに動きます。さらに物価上昇も上乗せを後押しします。ただし最低賃金を上乗せしても物価高で手取りはあまり増えないという意見もあります。

今後もデジタル活用、省力化等生産性向上に労使が努めることで賃上げは実現するのでしょう。

令和4年度の改定額は以下の通り

30円改定

宮城  883円 福島  858円  群馬 895円

石川  891円 福井  888円  岐阜 910円

奈良  896円 岡山 892円 和歌山 889円

香川  878円 福岡  900円

31円改定

東京 1072円 大阪1023円 愛知986円  千葉 984円 神奈川 1071円 埼玉 987円

北海道 920円 青森 853円 秋田 853円

栃木  913円 新潟 890円 富山 908円

長野  908円 静岡 944円 三重  933円

滋賀  927円 京都  968円  広島  930円

山口  888円  徳島  855円

32円改定

山形  854円  茨城  911円  山梨  898円

兵庫  960円  愛媛  853円 佐賀  853円

長崎  853円 熊本  853円 宮崎  853円

大分  854円 鹿児島  853円

33円改定

岩手  854円 鳥取 854円 島根  857円

高知  853円 沖縄 853円

学生も社会保険に加入の義務あり?

ある社会保険の調査で

ある企業から電話がありました。

「社会保険の調査で、学生アルバイトの社会保険加入漏れを指摘されました。学生は社会保険に加入する義務はないのではないですか?」

2022年10月から短時間労働者に対する社会保険は従業員(正しくは被保険者)数501人以上から101人以上の企業に範囲が拡大されますが、昼間学生は除外されており、アルバイトの学生は社会保険に加入する義務はないように見えます。

 

社会保険で適用除外とされる被保険者

健康保険法3条では、船員保険の被保険者、臨時に雇用される者、季節的業務に使用される者などは被保険者とせずに除外しています。

さらに同条1項9号ハで「学校教育法に規定する高等学校、大学の学生その他省令で定めるもの」も除外されており、学生は無条件に社会保険の適用除外に該当するように見えてしまいます。

ところが、学生が適用除外とされるのは、いわゆる「4分の3ルール」が適用される場合のみなのです。

社会保険の「4分の3ルール」とは?

通常の労働者の1週間の所定労働時間又は月の所定労働日数が4分の3未満の労働者は、社会保険が適用除外となる原則です。

社会保険の適用拡大は、労働時間及び日数が4分の3未満で通常の社会保険の条件には該当しないが、週20時間以上働く学生以外の短時間労働者が対象です。(他に月額賃金8.8万円以上、2か月超の雇用見込などの条件もあります)

では、所定労働時間又は労働日数が4分の3以上の学生はどうなるのでしょうか?

2か月を超える雇用の見込がない、つまり「臨時に雇用される者」に該当しない限り、社会保険の適用除外とはなりません。

この企業に確認したところ、その学生は夏休みの間、通常の4分の3以上働いていたようです。学生アルバイトであっても、週の所定労働時間及び労働日数が多い場合、注意が必要となります。

受取配当等益金不算入 制度の新別表の変更点

今年度から適用の受配の改正

令和2年度の税制改正で令和4年4月1日開始事業年度から適用のものに、受取配当等の益金不算入制度に係る改正があります。この制度では、受取配当に係る株式等を、①完全子法人株式等(100%保有、100%益金不算入)、②関連法人株式等(3分の1超100%未満保有、負債利子控除後100%益金不算入)、③その他の株式等(5%超3分の1以下保有、50%益金不算入)、④非支配目的株式等(5%以下保有、20%益金不算入)に区分し、その区分毎に益金不算入割合を乗じて益金不算入額を算出します。

判定が単数から複数へ

改正点の一つは、上記②③④の区分の判定が「個社で判定」から、①と同様に「完全支配関係がある法人グループ全体で判定」に変わったことです。③その他の株式等と④非支配目的株式等とは、判定基準の変更で、より保有割合の高い区分に変更となり、益金不算入割合が上がることがあります。

負債利子控除額の計算方法の改正

改正点のもう一つは、「負債利子控除額の計算」の見直しが行われていることです。負債利子控除は、関連法人株式等に係る配当等の益金不算入額の計算だけに使うものですが、ビックリするほどの簡便計算方式になっています。

原則は超簡便に4%控除

原則方式と特例方式があり、まず、原則方式は、関連法人株式等に係る配当等の額の4%です。これに対して、特例方式は、その事業年度の支払利子等の合計額の10%相当額です。原則方式と特例方式との小さい低い方の金額が控除額となります。

例えば、関連法人株式の配当額が1000、その適用事業年度の支払利子が200だったら、原則は、負債利子控除額40(=1000×4%)で、特例は20(=200×10%)となるため、負債利子控除額は20となります。

申告の要件等

この原則と特例は「できる」規定ではないので、また、この規定は当初申告での記載の限度等の制限もないので、確定申告書だけでなく、修正申告書又は更正請求書でも新たに記載することができますが、計算明細の添付は要件になっているので申告書の別表記載が必要です。なお、この改正を反映して、令和4年4月1日開始事業年度以後適用用の別表八(一)付表一が新規に用意されています。

マイナス利益積立 金額と資本の配当

比例配分(プロラタ)計算

株主への配当は、利益の配当が一般的ですが、資本剰余金の配当を行うこともあります。資本剰余金の配当を行う時は、プロラタ計算をします。資本配当のうち、株式の譲渡対価と認識される「資本の払戻し」部分を算定するのです。交付された資本配当のうち「資本の払戻し」部分を超える金額が「みなし配当」とされます。

600の配当が1000になる

ところで、完全子会社(資本金等の額1000、利益積立金額△600)から資本配当600を受けるような場合、プロラタ計算により「資本の払戻し」部分は1000(=資本金等の額1000×(減少した資本剰余金600/簿価純資産価額400))と算定されます。この分数値が1を超える時は、以下の算式も含め1で計算します。

マイナス配当とか500の配当が100に

交付資本配当が「資本の払戻し」部分を超える額がみなし配当で、ここでの算出みなし配当値は△400(=600-1000)とマイナス値で出て来ます。これは、「超える部分の金額」にはならないので、0と扱われます。さらに例えば、前の例で、税務の利益積立金は△600だが、会計利益剰余金500があったので、併せて500の利益配当も一緒に実行したところ、混合配当だから、これを取込んでプロラタ計算する、ということになったとすると、資本の払戻し部分の金額は1000(=1000×600/400)と算定され、みなし配当は100(=1100-1000)となります。

混合配当訴訟で判決による修正

ところで、混合配当訴訟に係る最高裁判決が昨年あり、このプロラタ計算の政令規定が違憲無効と判決されたのを承けて、今年の税制改正がありました。この改正内容に従うと、先の例での「資本の払戻し」部分の1000は600(=1000×600/400=1000>600)に、みなし配当は0(=600-600)になります。

もう一つの先の例での「資本の払戻し」部分の1000は同じく600に、みなし配当は500(=1100-600)となり、みなし配当と本来の利益配当とが一致します。

最高裁判決を承けての今年の改正内容は、マイナスみなし配当額計算問題解消に、極めてうまくフィットしています。訴訟の係争点の混合配当が、マイナス利益積立金の法人からの配当だったからかもしれません。

事務所移転等で課税通知が遅れた場合の事業税の納付期限

事業税の申告の期限・方法

個人事業税は個人が営む事業のうち、地方税法等で定められた事業(法定業種)に対してかかる税金です。

課税対象は前年中の事業の所得です。所得税や住民税の申告書を基に地方自治体が計算し税額を通知してくるので、個人が改めて事業税の申告をする必要はありません。(ただし、年の中途で事業を廃止した場合は廃止の日から所定の期限内に申告をしなければなりません)

事業税を納める時期と方法

事業税を納める時期は、原則として8月と11月の年2回(第1期納期限8月31日、第2期納期限11月30日(※休日の場合はその翌日))です。

8月に都道府県税事務所から送付される納税通知書により各納期に納めます。事前に口座振替の手続きをしていれば納期限日に口座振替により納税されます。また、Pay-easy(ペイジー)やクレジット納付の選択もできますが、納付期限は変わりません。

事務所移転の管轄変更で通知が遅れた場合

個人事業主Aさんは、8月になったので事業税の納付をしなければと思い立ち、事業税の納付書を探したのですがどこにもありません。同じく地方自治体から課される個人住民税は通知書もあり6月に納付ができていました。紛失してしまったのかと思い、再発行依頼のため都税事務所に電話しました。すると、「事業者の移転にかかる都税事務所内の納付書発行手続きがまだ終わっておらず、納期限も8月31日ではなく通知書に記載される日付(おそらく9月30日)となる」という説明がありました。

Aさんは2022年2月に都内S区からM区に事業所を移転し、所得税の申告書をM税務署に提出していました。個人住民税は1月1日に居住していたS区から納税通知書が届いていたので、事業税の通知もS都税事務所から届くと思い込んでいましたが、所得税申告書を提出した税務署経由でM都税事務所に送達される流れであるため、都税事務所内の手続きが遅れていたようです。

事業税を規定している地方税法でも「特別の事情がある場合においては、これと異なる納期」とあり、また、「納税者に交付すべき納税通知書は、遅くとも、その納期限前十日までに納税者に交付しなければならない」ともあるので、納期限が8月31日ではなく先となったようです。