100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.70

2022.01.07 Fri

税金よもやま話 生命保険料控除の歴史

大正時代からある控除

生命保険料控除は、大正12年(1923年)に衆議院議員の議員立法により創設されました。他の保険料控除と比べても、昭和27年の社会保険料控除(発足当時は失業保険)、昭和39年の損害保険料控除(火災保険)と、一足早く控除制度として名乗りを上げています。ちなみに地震保険料控除は、平成18年の税制改正によりそれまでの「損害保険料控除」に代わって導入されたもので、保険料控除としては後発の制度となります。

発足当初は「控除限度額は年額で200円を上限に所得控除とする」となっていました。大正末期の大卒サラリーマンの初任給(月給)が50~60円ということなので、現代のスケールに合わせると、控除の上限額は現在の生命保険料控除の制度より大きいものだったようです。

 

インフレの影響で一時は消失

昭和15年には年額200円を限度としてその6%である最高12円の税額控除、昭和17年には年額240円を限度としてその10%である最高24円の税額控除と、順調に貨幣価値が上がるのと比例して税額控除の額を伸ばしていきましたが、昭和20年頃は戦後の社会的に不安定な時期で、インフレにより貨幣価値が急変した時代です。この時代背景もあってか、昭和22年の税制改正では最高24円の税額控除という制度内容はあまりにも「少額」であるため、生命保険料控除の制度自体が廃止されることになりました。

生命保険料控除がその後復活したのは昭和26年。最高2,000円を総所得金額から控除することとされました。

 

その後も世相により変化を続けた

戦後の高度経済成長期、安定成長期、バブル景気とその崩壊、失われた20年、生命保険料控除も世相に合わせて、対象になる保険の種類や、控除額の計算方法等が変化してきました。現行の新旧保険料とその控除額の計算は平成22年度の税制改正により制定されています。

今後も生命保険料控除は、時代に応じて求められる保険の役割によって、変化し続けるのではないでしょうか。

相続空き家を取得したら

特例の趣旨は、空き家をなくすこと

相続空き家の特例(譲渡所得の3000万円特別控除)は、被相続人の居住用家屋が空き家のまま放置され、近隣の生活環境を悪化させることを防ぐためのインセンティブとして作られた制度です。担税力のある相続人にも3000万円控除のメリットを持たせ、耐震構造にリニューアルして売却させるか、取り壊して売却させることで空き家をなくすことを目的としています。

特例の対象となる居住用家屋及び敷地とは

相続空き家を売却する場合、特例が適用される家屋と敷地の要件は次の4つです。

①  被相続人が居住の用に供していた

相続開始の直前に被相続人が居住の用に供していた建物であること。老人ホームに入所中の相続の場合でも自宅を家財置き場としてのみ使用すれば特例は適用されます。

敷地に居宅のほか、離れや倉庫、車庫など用途上不可分の2以上の建物がある場合は、それぞれの床面積で按分して、被相続人が主として居住の用に供していた一の建物とその敷地部分が特例の対象となります。

なお、特例が適用されない建物と敷地部分には譲渡所得の計算に際し、相続税の一部を取得費に加算する特例が適用されます。

②  旧耐震基準で建築されている

特例の対象となる建物は、建築基準法で耐震基準が強化された昭和56年5月31日以前に建築されたものとなります。

③  区分所有登記されている建物でない

区分所有登記されている建物は、被相続

人の他にも所有権者がいることが意思表示されているので、単独でリフォームや売却できず、特例の対象となりません。

④  被相続人以外に居住していなかった

被相続人が、配偶者や子など親族と同居していれば、被相続人が亡くなっても空き家になりません。被相続人が一人で居住していた家屋が対象となります。

空き家の利活用も選択肢

空き家対策には、空き家を利活用する方法もあります。親から引き継いだ土地には愛着があり、子供の住居として将来の利用を検討する場合、空き家を活用すれば近隣の生活環境を悪化させることもありません。

自治体には空き家を利活用したい事業者とのマッチングを支援するところもあります。地域コミュニティ、茶道教室、絵画教室など公益的事業に賃貸することも、空き家対策になるかもしれません。

法定休日と法定外休日

法定休日と法定外休日の違い

従業員が仕事を休む日数は労基法で定められ法定休日は少なくとも「毎週1回」もしくは「4週間を通じて4日」を与えることになっています。「4週間を通じて4日の休日」とは「就業規則などで定められた特定の4週間に4日の休日を付与する」ということです。法定休日は必ずしも曜日を特定する必要はありませんので日曜日とは限りません。会社で自由に設定することができます。

また、法定休日は一斉に付与する必要はありません。シフト勤務制を採用している場合など、各人ごとに異なる日を法定休日として設定できます。決定した通り就業規則に記載するとともに個々の雇用契約書にも記載し、特定する必要があります。

法定休日の決め方

① 毎週1日の法定休日を一斉にする場合

法定休日をいつにするかを決定し「例えば法定休日は日曜日とする」というように決めます。

② シフトの勤務制の場合は各人ごとに決めますので週のうち原則1日は付与する設定で、同じ週に複数の休日がある場合は休日がわかるように決める必要があります。

③ 法定休日労働 法定休日に働いてもらう必要が生じる場合は三六協定届を労働基準監督署に出しておきましょう。

法定外休日(所定休日)

週1日以上の休日を「法定外休日」もしくは所定休日と言います。法律で定められた休日以外に与える休日です。会社で自由に設定できますがあらかじめ設定しておく必要はあります。例えば土曜日と日曜日が会社の休日とした場合は日曜日が法定休日とすると土曜日は法定外休日となります。

国民の祝日は法定休日でないので会社が休日を法定休日としていなければその日を休ませなくとも違法ではありません。他に夏季休暇や、年末年始休暇等があります。

法定外休日労働は労基法の休日労働ではありませんので休日労働としての割増賃金は不要ですが、1週の法定労働時間を超えた分の割増賃金が発生する場合があります(事前に振替休日を他の日に決めてあれば割増しは発生しません)。

有期雇用パート社員の無期 雇用転換を支援する助成金

65歳超雇用推進助成金

高年齢者無期雇用転換コース

50代の有期契約パート社員を雇用している事業主の方が使える助成金です。

入社から5年以内の有期雇用契約のパートタイマーの方を無期雇用契約に切り替えた場合に使える可能性があります。

受給の条件

①  雇用されてから転換日までの期間が6か月以上5年以内であって転換日の年齢が50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者であること(定年年齢が64歳以上、または定年を廃止している場合は転換時の年齢が63歳まで申請できます)

②  無期雇用契約転換後には週所定労働時間が20時間以上あり雇用保険に加入していること

③  有期契約労働者を無期雇用労働者に転換後、6か月を経過すると助成金を申請できます

対象事業主とは

①  定年年齢や65歳までの雇用確保の措置が就業規則などに規定されていること

②  転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に会社都合退職がないこと

③  高年齢者の雇用管理に関する措置を1つ以上実施し就業規則にその制度に関する規定を設けていること

助成額

1人につき中小企業は48万円

生産性要件を満たしたときは60万円

1年度転換期間に支給限度人数は10人まで

キャリアアップ助成金との違い

キャリアアップ助成金正社員化コースと似てはいますが内容は違います。対象年齢、雇用期間、役員で3親等以内の親族も対象者にできる等の違いがありますが、大きな違いは転換時に賃金アップ3%以上という条件はありませんので、そのままの時給でも申請できることです。

申請のスケジュール

計画書を作成し計画期間の開始日から起算して2か月までに計画書の提出をします。

事前に各都道府県の高齢・障害・求職者雇用支援機構に申請書類を持参して相談をしてください。計画書の受理後、認定されましたら就業規則に転換条文を入れて無期雇用に転換、6か月経過後支給申請します。

自身の相続を考えるとき

自身にもいつか起きる相続には、遺言を利用した被相続人の合理的な判断が欠かせません。配偶者には残された人生を安心して過ごすための財産の帰属、子供たちには将来の生活設計を考慮した財産の分配による合理的な判断が求められます。

法定相続と代襲相続の欠陥

遺言がない場合の遺産分配は、法定相続と代襲相続が基準となります。法定相続は財産の分配ルールとして、代襲相続は相続開始以前に相続人となるべき者(被代襲者)の死亡などの場合、その相続分を被代襲者の直系卑属に相続させる合理的な制度です。

一方、法定相続では財産は一律に分配されてしまいます。代襲相続では子が先に死亡していた場合、子の配偶者は代襲相続人になれないので、突然の経済的苦境に追い込まれてしまいます。相続人となるべきであった兄弟姉妹が先に死亡していた場合は、兄弟姉妹の子(甥、姪)が予期せぬ代襲相続人となってしまいます。このように、法定相続にも代襲相続にも、被相続人の意思は反映されず、相続争いの原因にもなります。

血は水よりも濃し

血でつながった親族間では、他人同士の関係より比較にならないほどの強い愛情を無意識に駆り立てます。たとえば、3人姉妹は、喧嘩しても仲直りできますが、友人間では、いさかいがあるとそのまま別れてしまうこともあるでしょう。

兄弟は他人の始まり?

しかし、3人姉妹が結婚後、親の財産を相続する場合、配偶者がいると、住む家を持つ者、持たない者、家族に病人がいる者、裕福な夫と結婚した者など、それぞれ境遇が貧しくても豊かでも、遺産分割協議では互いに譲らず、しばしば修復しがたい争いが起こります。親は血を分けた子供たちの間で争いが生じることを望んでいなかったはずですが、争いは3人姉妹が死亡した後も、それぞれの夫や子を巻き込み、収拾がつかなくなるかもしれません。

遺産分配は遺言で

こうして考えると、被相続人としては、配偶者に財産をどのように帰属させるか、子供たちに財産をどのように分配するかをあらかじめ自分の意思で合理的に決定し、遺言しておくこと、さらに生前贈与や相続人の寄与分、配偶者の特別寄与料で調整し、そのうえで最後に法定相続分に委ねる遺産分配を考えることが大切になりそうです。