100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.68

2021.12.17 Fri

採用コスト見直しと 内定辞退を防ぐ

採用費の基本コスト

小規模な会社にとってコストを抑えた採用活動は重要です。採用経費はどのように見直していけばよいのでしょうか?

採用費用を見直しするには採用活動の中でどのようなことを行わなければならないかを確認し、その上で自社の採用活動に合ったコスト配分を行わなければなりません。採用に掛かる一般的な諸経費としては、

・採用サイト掲載料……無料の媒体もありますが、効果のほどは芳しいとはいいがたいものです。だからといって高い費用の広告媒体で出しても内容が求職者に引き付けられるものがないと応募につながりません。

・パンフレット、案内書など作成費用

・採用ホームページの作成

・新卒の場合は学校回り交通費等

・会社説明会を行う場合は貸会議室代等

・応募者の交通費、文書等諸経費

・内定者に対する懇談会等

新卒ではなく中途採用であれば就職サイトや応募者用パンフレット、採用HPなどは最低限の費用を基準に自社にとって良い結果を出せる業者の選定が必要です。

募集したい対象が老若男女の誰なのかで利用する媒体も変わります。業者選定は知名度が高いというのでなく、結果を出せそうな業者を検討するのが望ましいでしょう。2~3社の業者で見積もってみましょう。

採用活動期間の延長はコストが上がる

採用活動が延びるほど労力や費用等コストが掛かってしまいます。最も有効な採用コスト削減方法は応募者の辞退を減らすことです。採用活動を長引かせないように、良いと思った人材は選考中、内定後の辞退を減らす必要があります。

辞退者を減らすには応募者に一番近い社員である採用担当者や面接官の人柄といった自社の社員力が重要になってきます。

応募者からすると採用担当者は会社のイメージというように見られています。そのことを意識して応募者の志望度を上げていきます。また、内定を出したら入社承諾書にサインをもらいましょう。それでも本人の心が迷っている場合もあります。地方出身者で若い人には、家族にも会社からお知らせする等のフォローが必要かもしれません。メールなどで定期的に様子を知らせたり懇親会を開いたりするのもよいでしょう。

持株富裕層の節税対策

比率3%以上の大口個人株主

株式の配当金に対する課税は、一般的には、源泉徴収選択特定口座を利用した申告不要源泉分離課税で、20.315%での税負担(所得税・復興税・住民税)で済みますが、上場企業の持株比率3%以上の大口個人株主については、20.42%(住民税なし)の源泉徴収をされた上で、総合課税での申告となります。課税所得が4000万円以上の部分は住民税を含めて55.945%となります。一般の20.315%の分離課税での税負担と比べてかなり高負担となります。

総合課税の場合の配慮は微少

ただし、総合課税の場合は、法人税での受取配当等の益金不算入制度と同様に二重課税緩和の趣旨から、配当控除という制度が用意されています。課税所得金額が1000万円以下の部分に該当する配当所得には、12.8%(所得税10%、住民税2.8%)、1000万円超の部分に該当する配当所得には、6.4%(所得税5%、住民税1.4%)を控除することができます。

でも、全体から見た割合は小さいため、それほど大きな効果はありません。

3%以上大口個人株主の節税対策

それで、3%以上の大口個人株主は、個人名義ではなく資産管理会社を設立して、3%以上部分の株式を法人名義にする、という選択を多くの場合行っています。

そうすると、個人所有部分は20.315%の分離課税での申告不要にすることができ、法人所有部分は、持株比率1/3超なら100%益金不算入、持株比率5%超~1/3以下なら50%益金不算入、持株比率5%以下でも20%益金不算入となるので、個人の配当控除より有利です。その上、役員報酬等の形での家族への所得分散ができ、法人税の負担も相当に圧縮可能です。

法人化後の更なる節税プラン

逆に、税負担の少ない法人に財産が集積し、資産の中の株式の割合が50%以上だと、相続などの時に、しっかり財産課税されてしまうので、借入金等により賃貸不動産その他の資産を取得して、50%未満化策を講ずるケースも珍しくありません。

また、法人で、含み益の大きい財産を譲渡すると、法人での約33%の課税が行なわれ、さらにそれを個人の所得となる形で移転すると、2段階での課税となります。これを回避するために、最近は、適格会社分割による会社の複数化により、M&Aでの会社売却を準備する方法で、20.315%の分離課税化する案も考えられています。

電子申告での訂正申告と 書類添付の追加手続き

期限内重複申告への当局の対応

法律上には規定がありませんが、提出期限内に内容を変更した申告書の複数回提出は認められています。これを訂正申告といい、通達では、最後に提出された訂正申告書をもって正式な申告書とする、としています。当局は、訂正申告を、申告書の事実上の差替え行為だと解釈しているようです。

訂正申告では、申告書の上部に「訂正申告」とのメモを記載するとか、提出済みの申告書の収受印のあるページのコピーを添付するとかの配慮も要請されています。

電子申告では

訂正申告はe-Taxの電子申告の場合にも、認められています。期限内に、異なる申告内容の「再送信」によって訂正申告をします。再送信での訂正申告である旨の申し出は不要です。訂正申告の際は、異なる内容の帳票のみでなく、全ての帳票を再送信します。再送信は、自主申告納税者、代理送信税理士、他の代理送信税理士の誰でも可能です。回数に制限はなく、最後に提出したものが正規の申告書として扱われます。

「追加送信」での申告訂正

確定申告書の提出とは別の添付書類の追加提出とか、税額や繰越欠損金に影響のない別表や明細書の追加・差替えのための提出とかも、電子申告e-Taxに於いて、「追加送信」として認められています。追加送信は、一度送信した申告等データに対してPDFイメージデータや別表及び付表等を追加して送信する機能です。「申告書等送信票(兼送付書)」への入力をして送信します。追加送信方式で送信できる回数は、1つの申告等送信データにつき、現在のところ10回とされています。

追加送信では制限が生まれる

税理士代理送信での電子申告に係る追加送信は、当該税理士及び委任した納税者の何れも可能ですが、他の税理士は送信不可です。電子証明書を有する納税者が自主申告送信した場合には、代理送信可能な税理士も、追加送信不可です。追加送信は、メッセージボックスに格納された「受信通知」の「追加送信」ボタンから送信する為です。

eLTax地方税電子申告での相違

再送信・追加送信機能の意味は、eLTax地方税電子申告でも、同じですが、追加送信は、eLTaxでは999回まで可能となっています。なお、追加送信への取扱いは提出先の地方自治体の判断により異なる場合があります。

令和2事務年度の 税務調査事績

令和2事務年度の調査数はさらに減

国税庁は毎年11月ごろに事務年度についての法人税等の調査事績の概要を公表しています。事務年度とは国税庁の人事異動が7月なので、7月から翌年6月迄をいいます。今年発表された令和2事務年度(令和2年7月から令和3年6月まで)においては、コロナ禍の真っ最中ということもあり、法人税・消費税の実地調査件数は2.5万件となり前年対比32.7%となりました。

令和元事務年度も、すでにコロナの影響が出始めており、コロナ禍でなかった平成30事務年度は9.9万件ということですから、平時の1/4くらいの調査件数だった、ということになります。

 

1件あたりの追徴は増加

今年の発表では、調査1件あたりの追徴税額については前年と比べ249%の780.6万円となりました。調査件数は大幅に減りましたが「コロナ禍で調査は憚られるが、確実に大きく取れるところには行っている」ということは見て取れます。調査1件あたりの追徴税額は平時だった平成30事務年度と比べても大幅に増加しています。

 

簡易な接触は引き続き継続

「簡易な接触」と表現される書面や電話による連絡、資料の提出依頼や来署依頼による面接等で、税務署が納税者に対して自発的な申告の見直しなどを要請する手法については、前年対比156.5%と、引き続き件数を増やしています。申告漏れ所得金額や追徴課税の額については実地調査には遠く及びませんが、それでも過去年から確実に金額を増やしているようです。

 

これからはどうなる?

「すでに調査依頼がいくつかある」という税理士先生もいらっしゃるようで、若干コロナが落ち着いている今、調査件数は増えているように感じられます。

また、実地調査については「なるべく接触時間を短くするため、資料を預かって税務署内で検討します」といった措置が取られることも多くなったようです。

いまいち弱火の新制度 セルフメディケーション税制の今

覚えていますか、この制度

セルフメディケーション税制は医療費控除の特例であり、健康の保持増進及び疾病の予防への一定の取組を行っている方が、自分、もしくは生計を一にする親族のために特定の医療品購入費を支払った場合に、医療費控除を受けることができる制度です。

控除が受けられる金額は、購入費用から12,000円を差し引いた金額で、控除される最高額は88,000円、つまり総額10万円までの購入費で控除が受けられる、「医療費控除のミニ版」といった制度です。

 

利用者は横ばいになっている

令和3年6月に国税庁が発表した資料を見てみると、令和2年分申告ではセルフメディケーション税制を利用した人は2.5万人となっていて、申告をした人が2,249万人とのことなので、全体の0.1%程度の利用率となっています。ちなみに通常の医療費控除を利用した方は722万人となっています。併せて過去年度分の数字も出ていますが、3.0万人、2.6万人、2.6万人と見事に横ばいです。

日本一般用医薬品連合会などが実施した16万人に及ぶ調査によると、全体の72.1%がセルフメディケーション税制を認知はしているものの、「利用したい」とする方は12.1%となっており協会も「現状のままでは利用拡大は見込みにくい」としており、「全OTC医療品に対象拡大」「申告手続き簡素化」「購入費用の下限撤廃」等を提案しています。

 

令和4年分以後の所得税からは微改正

令和3年分の所得税で適用は終了予定であったセルフメディケーション税制は、令和3年度税制改正で、適用期限が5年延長されました。さらに「対象となる医薬品をより効果的なものに重点化して、手続きの簡素化を図る」とされています。

厚生労働省では、セルフメディケーション推進に関する有識者検討会を行っており、採用すべき薬効、廃止すべき薬効等の検討を進めています。

この制度は本来「医療費の削減を目指した方策」ではあるのですが、利用者の数を見ると、上手くいっているとはいえないのが正直なところではないでしょうか。