100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.67

2021.12.10 Fri

青色申告65万円控除と電子帳簿保存法

e-Taxしないが65万円控除は受けたい

令和2年分以後の所得税について、青色申告特別控除の適用要件が改正され、65万円の青色申告特別控除の適用を受けるためには、それまでの要件に加えて、e-Taxによる申告か、電子帳簿保存を行うことが必要になりました。

個人事業主の方の中には、「e-Taxができない」という方がいらっしゃるかもしれません。今回は、電子帳簿保存で65万円控除を受ける場合の手続きを解説してみます。

 

改正もあるがあまり変わりなし

電子帳簿保存法については、令和4年1月1日から適用される改正があり、これまで電子的に作成した国税関係帳簿を電磁的記録により保存する場合には、事前に税務署長の承認が必要でしたが、事業者の事務負担軽減のために、不要とされました。

ただし、この「事前承認不要」はあくまで電磁的記録による保存を開始する場合の話で、65万円の青色申告特別控除の適用を電子帳簿保存によって受けたい場合は「国税関係帳簿の電磁的記録による保存等の承認申請書」を提出する必要があります。

また、一般的な電子帳簿保存については正規の簿記の原則に従って記録されるものであれば、最低限の要件を満たす電子帳簿についても電磁的記録による保存がOKとなったのですが、65万円の青色申告特別控除の適用を受ける場合については「優良な電子帳簿」の要件である、検索要件や帳簿間の相互関連性の確認など、より高度な措置が必要となります。

 

過少申告加算税5%軽減のため?

電子帳簿保存法に適合する優良な電子帳簿を作成するのに比べ、インターネット環境とマイナンバーカードくらいの準備でe-Taxはできます。65万円の青色申告特別控除の適用を受けるための選択としては、e-Taxを行う方が圧倒的に楽です。

青色申告特別控除の要件とは別に、今回の改正で「優良な電子帳簿」の保存要件を満たしていれば、記録された事項についての申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減される措置が受けられるので、そちらを受けようとする場合には申請を行う、くらいの気持ちで良いのかもしれません。

ふるさと納税と住宅ローン控除

住宅ローン控除とふるさと納税の誤解

個人の所得・控除によって決まる控除上限金額までの寄附なら、自己負担が2,000円で返礼品が貰えるふるさと納税制度。「お礼の品で地方の特産品が貰えてお得なのは知ってるけど、ウチは住宅ローン控除がたくさんあるからふるさと納税できないのではないか」と躊躇している方が居るかもしれませんが、実は住宅ローン控除がたくさんあっても、ふるさと納税がお得に楽しめるケースが圧倒的に多いのです。

控除上限額は住宅ローンでは変わらない

ふるさと納税の控除上限金額は、大まかにいうと「所得に対する住民税の額」の大小によって決まります。住宅ローン控除は所得税を引き切ってしまった場合、特例として残っている住宅ローン控除の額で、定められている限度額までは住民税を引いてくれますが、その住民税を引く計算は「税額控除額」という扱いとなっていて、ふるさと納税の控除上限金額を計算する上での「所得に対する住民税の額」には影響しないような作りになっています。

よって、住宅ローン控除がいくらであっても、ふるさと納税の控除上限金額に変化はありません。ただし、「所得税を引き切っていて、住民税を定められている限界値まで引いている」場合で、ふるさと納税を確定申告した場合、「税金を引けない部分が出てしまう」ことで、上限以内の寄附でも自己負担が2,000円以上かかるケースがあります。

自己負担は2,000円では済まないが得?

「自己負担が2,000円以上かかる」とはいえ、税が減らないのは所得税部分のみとなるため、自己負担が増える額は少ないのです。住民税側の控除は行われるため、寄附によって貰えるお礼の品の価値を考えると、控除上限金額までの寄附であればお得感がある場合が多くなります。

また、住民税を限界まで引いていたとしても、確定申告をしない方で5か所以内の自治体への寄附であれば利用できる「ワンストップ特例制度」を使えば、住宅ローン控除で自己負担が2,000円で済まない問題は無視できます。

不安な方はワンストップ特例制度を積極的に利用するとよいでしょう。

マイナポイント・GOTO・ふるさと納税等 お得に潜む一時所得

マイナポイント第2弾実施予定

マイナンバーカードの普及とキャッシュレス決済の普及促進を目的とした、マイナポイント制度は来年第2弾を実施予定です。

マイナンバーカードを取得し、キャッシュレス決済サービスとのひも付けをし、チャージまたは決済で最大5,000円、健康保険証の利用登録をすると7,500円、公金受け取り用の預貯金口座の登録をすると7,500円の、各種ポイントが付与されます。

 

マイナポイント「だけ」は一時所得

国税庁は個人が商品を購入する際に決済代金に応じて企業から付与されるポイントについては「通常の商取引における値引き」と同様の行為が行われたと考えられ、所得税の課税対象にならないものと説明をしています。ただし、マイナポイントについては「商取引ではなく決済前のチャージ等を行った際に付与されるもの」で、「通常の商取引における値引き」ではないので、その経済的利益は一時所得として所得税の課税対象となる、としています。

 

一時所得は合算で計算される

課税される一時所得の計算は(貰った額-払った額-50万円)×1/2=課税される一時所得の額となります。50万円の特別控除があるため、マイナポイントの付与だけでは課税は発生せず確定申告も必要ありません。

ただし、新型コロナウイルス感染症の経済対策である「GOTOキャンペーン」の支援された額や「ふるさと納税」のお礼の品についても一時所得とみなされ、一時所得の計算の「貰った額」については、一時所得の合算で計算されるため、各種お得な仕組みを利用していたらいつの間にか大きな金額になっていた、ということも考えられます。

 

他にもいろいろ一時所得

他にも「住まい給付金」や「生命保険の満期払戻金」、「懸賞や福引の賞金品」、「競馬の払戻金」など、さまざまな「ちょっとしたお金」が一時所得に該当します。

近年ではふるさと納税のお礼の品の価値が50万円を超え、申告をしなかった方が申告漏れを税務署に指摘された、というケースも確認されています。ご留意ください。

相続登記が義務化されます

相続登記は3年以内に

令和3年4月に成立した改正不動産登記法では、不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請が義務付けられました。これまで登記未了であった全ての不動産にも適用され、正当な理由のない申請漏れは、10万円以下の過料の対象となります。新制度は成立後3年以内、令和6年までに施行される予定です。経過措置により施行日前の相続・遺贈の場合、令和6年までの施行から3年間が登記申請義務の履行期間となります。

新たに相続人申告登記制度がスタート

相続人の申請義務を簡易に履行できる「相続人申告登記制度」が新設されました。相続登記されないまま長期化すると所有者不明土地を生み、行政に支障をきたす原因にもなります。このため、相続人申告登記では遺産分割未了であっても登記名義人について相続が開始したこと、相続人の氏名・住所を登記に付記することで登記義務を履行できることとしました。遺産分割未了のため、持分の登記はありません。後日、遺産分割協議が整ったときは遺産分割成立日から3年以内に、協議の結果を踏まえた登記申請が義務付けられます。

とりあえず法定相続分での登記に注意!

もちろん、遺産分割未了の状態であっても従前どおり相続開始後3年以内に、とりあえず法定相続分で暫定的な登記を行い、遺産分割協議が調った後に登記し直すことも可能です。

しかし、法定相続分で登記をしても遺産分割協議前であれば不動産の利用、売却等には共有者の間で何らかの同意が必要となります。相続人が死亡すると権利者は更に増えて、遺産分割は難航必至です。

相続人申告登記も遺産分割は先送りのまま

相続人申告登記を行って遺産分割協議を続行する場合も、民法上は、法定相続分で共有されたままですので、不動産の利用、売却等に際し、共有者の間で同意が必要となることに変わりなく、相続人申告登記も遺産分割の先送りに過ぎません。

それぞれの事情を斟酌した遺産分割協議を

相続した不動産は相続人の居住用とするか、賃貸用とするか、売却をいつするかなど有効利用をはかり、そのうえでそれぞれの相続人の事情を斟酌した速やかな遺産分割協議ができるかがポイントになるのではないでしょうか。

健康保険傷病手当金通算期間変更

2022年1月よりの健康保険の改正内容

この度、健康保険法の改正が行われます。その中で実務に影響が大きい改正を3点取り上げます。

①  傷病手当金の通算化(令和4年1月1日施行)

傷病手当金は私傷病により労務不能になり賃金が受けられない場合に、労務に服することができなくなった日から起算して4日目以降に支給される健康保険の給付金です。今までの支給期間は支給開始日から1年6か月を超えない範囲とされていました。例えばがんなどで入院退院を繰り返していると一時的に就労して傷病手当金を受けていなくとも、その期間も通算され1年6か月経過すると、それ以降同じ傷病で入院しても傷病手当金は不支給になっていました。改正で支給期間は、支給開始日以降に就労していても、実際に1年6か月の分の給付を受けるまでは傷病手当金を受給できます。

②  任意継続被保険者制度の保険料や被保険者資格喪失(令和4年1月1日施行)

任意継続被保険者制度は、健康保険の被保険者が退職し資格を喪失した後も最長2年間、資格喪失前の健康保険に加入することができる制度です。この資格喪失時期が「任意継続被保険者となった日から2年を経過したとき、保険料を納付期日までに納付しなかったとき」となっていました。任意の資格喪失ができなかったので改定され任意継続被保険者が申し出たとき、受理された日の属する月の月末で被保険者を資格喪失できることになりました。

また保険料は、イ.退職前の標準報酬月額か、ロ.保険者全被保険者の平均標準報酬月額、どちらかの低い額でしたが、今後は健保組合で定めればイを基礎とすることができます。健保組合によっては従来と変更される場合があり注意が必要です。

③  育児休業中の保険料免除要件の見直し(令和4年10月1日施行)

育児休業中の社会保険料免除は今までは月末の時点で育児休業をしていれば当月保険料は免除となっていました。短期間の育児休業の時では月末日に休業しているか否かで免除が変わってしまうので不公平感があり改定されました。改定後は月末を含まなくても14日以上休業した月、賞与は育休期間1か月以上の時免除とされました。