100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.62

2021.11.05 Fri

採用は労務管理の入り口

採用の技術を高めることで最適な人材確保

コロナ禍で採用を抑えていた企業も、緊急事態宣言などの規制が解除されると企業活動が活発になります。新規に雇用を考える企業が増えて人手不足がくるでしょう。人手不足には2種類あり、1つは人手の「量」もう一つは能力の「質」です。どちらも必要ですが機械化で代替できるところはあるとしても生産活動に人材は必要です。

会社に新しい人が入れば今の社員だけでできないことにも取り組んで変革し成長する企業になるのが理想ですが、人材を生かすことができるかどうか最初が肝心です。

採用は労務管理の入り口で、入り口で会社にふさわしい人材を選べば大きな労務トラブルや反抗型、無責任型、情緒不安定などの問題になる人を採らずに済むかもしれません。ここでは採用の初歩の段階で判別できる事例を見てみます。

採用時にトラブルとなりやすい問題

①  面接当日に来ない人……これは結構あることで、それを避けるためには面接日の1~3日前に電話かメールで面接日時の再確認をします。これは内定後も必要なことです。

②  入社直前の辞退……内定時に内定通知書、誓約書等を送り返信してもらうことで辞退は少なくなります。

③  転職者の場合には前職を辞めた理由は必ず聞く……転職理由に問題がないかを見ます。また、エリートより身の丈に合った人が結果的にはいいこともあります。

④  自立心無し、親離れ無し……新入社員で親御さんとの関係が強そうと感じる。

⑤  上司をうつ病にさせる逆パワハラ社員……できる人材を採用しても組織がうまく機能しない場合があります。パワーバランスのミスマッチが生まれます。

⑥  給与のことを細かく聞く人は金銭問題を抱えているケースがありえます。

⑦  入社後すぐ退職する……履歴書で転職回数の多い人は早期退職の確率が高く、転職志向の高さは適性検査で読み取れることがあります。

⑧入社後すぐに病欠……健康診断書は内定から入社前に求めて健康の確認をしておき、休職規定も試用期間中は対象としない旨の規定も必要でしょう。

M&A経営力向上計画申請

経営力向上計画策定の手引き

令和3年度税制改正の「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」が施行されたのに合わせて、中小企業庁は、「経営資源集約化税制の活用について」につづき、「経営力向上計画策定の手引き」を公表しました。

支援機関のサポートで計画策定

「経営力向上計画」は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画で、認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができます。

また、計画申請においては、認定登録経営革新等支援機関としての専門家のサポートを受けることが予定されていて、経営診断ツールにより計画策定ができるようにもなっています。

認定を受けられる経営力向上計画

事業分野を所管する省庁が作成した、事業分野別指針が用意されています。申請者は、その指針を踏まえて、案内されている、「経営力向上計画 申請書作成の手引き」その他を参考にしながら、記載例に従って経営力向上計画を策定します。

経営状況を書くところは、ローカルベンチマークの算出結果を記入するようになっているので、経済産業省のホームページにあるローカルベンチマーク(ロカベン)シートをダウンロードすることになります。

申請にはDDチェックシートの添付が必須

経営力向上計画申請には、事業承継等事前調査(デューデリジェンス)チェックシートを添付しなければなりません。

法務に関する事項(弁護士実施)と財務・税務に関する事項(税理士・公認会計士実施)とは絶対必要デューデリとされています。ITコーディネーターや中小企業診断士等のコンサルタントのデューデリを必要に応じて実行することもあり得ます。

申請はオンラインで

経営力向上計画申請プラットフォームで電子申請が可能になっています。令和4年4月からは、完全電子化となります。

経営力向上計画申請プラットフォームから電子申請するには、GビズIDを事前に取得しておく必要があります。

GビズIDプライムアカウントの発行には、2週間程度要するとされています。

令和3年年末調整 変更点と誤りやすい点

印鑑不要になった!

年末調整は、給与を受ける人それぞれについて、原則毎月の給与や賞与などの支払いの際に源泉徴収した税額と、その年の給与の総額について納めなければならない年税額とを比べて、その過不足を精算する手続です。今年は去年と比べると所得税計算本体への改正はないものの、手続的な部分での改正がありました。

「押印義務の改正」により、源泉所得税関係書類については、押印を要しないこととされました。このため、扶養控除等申告書などの年末調整の際に使う書類についても、従業員の皆さんに押印をしてもらう必要がなくなりました。地味ですが手間の省ける改正ですね。その他、源泉徴収関係書類を電磁的に提供する場合の、給与等の支払者が受けるべき税務署長の承認が不要とされたため、従来は税務署に提出が必要だった「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」が不要となりました。

 

令和2年改正部分に注意

今年の年末調整に目新しい変更はないものの、令和2年に改正が行われた「所得調整控除」「寡婦・ひとり親控除」「基礎控除」には注意が必要です。

所得調整控除は給与収入が850万円超の方が対象で「配偶者の扶養している子供でも、所得調整控除は両方の親に対して行える」点に注意しましょう。寡婦・ひとり親控除は令和2年から適用条件が変更されて「所得金額500万円以上の方は一律無効」となりました。基礎控除は「給与以外の所得も含めて、合計所得2,400万円超で逓減が開始」です。

新しいルールのため、細かい条件を取り違えて計算している例が散見されます。今年も注意して計算をしましょう。

 

電子化のメリットも考えて

計算式や控除上限等の変更、そして紙の記載フォーマットの変更と、年末調整は過去と比較すると明らかに複雑化しています。

従業員が控除額を計算して、会社の担当者が検算をするだけでも一苦労ですから、従業員数の多い企業には特に電子化をお勧めしたいところです。

取引開始時の契約書作成は大事 その割引料は契約書に則った取扱いですか?

振込手数料・割引料の差引入金

新規取引先からの第一回目の売掛金の入金があったと思ったら、“なぜか売掛金残高よりも少ない入金となっていた”といったことはありませんでしたか? 差額を計算してみると、何となく馴染みのある数字、すなわち銀行振込手数料相当と気づきます。「またここも振込手数料差引か・・・」と嘆息をもらすことは、大企業相手にはよくある話です(本稿では振込手数料差引の是非については検討しません)。

一方、取り決められた支払期間よりも前倒しで代金支払を行った買手に対して、売手が認めた売上代金の一部を免除するということもあります。会計用語で売上割引といいます。会計上は、前倒し期間に対応する金利相当額の割引を行うもので、利息としての性質を有するものとし、支払利息と同様に、営業外費用として計上されます。

その割引は契約書に則った取扱いですか?

ここで留意していただきたいことは、割引は、“売手が認めた売上代金の一部の免除”であって、買手側が勝手に免除して少なく払うものではないということです。

ところが、おそらく往々にしてあるケースは、取引を開始するにあたって相手先指定の契約書をそのまま受け入れ、その契約書のどこかにこうした割引の規定が書かれてある場合です。仮に、よく読んでいなかったと後悔したとしても、事業者が契約書を結んだ限りは、納得して契約したものとされますので、契約書に則った割引であれば、受け入れざるを得ません。

もし、契約書を締結しておらず、割引分を差引精算されたときは、その割引は無効です。が、実際は相手先との交渉となるので、難しいのが現実かと思われます。

こうした事態を避けるには、新規取引開始時に、できれば自社作成の取引契約書で合意してもらう、もしくは、相手先契約書にある不平等事項を除外してもらうことです。難交渉でしょうが、最初が大切です。

割引に係る消費税法上の取扱い

この売上割引は、会計上は営業外費用ですが、消費税法上の取扱いは、「売上げに係る対価の返還等」に該当します。会計処理と税務計算が違ってきます。仕訳計上する際に、消費税の課税区分を「売上げに係る対価の返還等」で分類することに留意してください。