100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.57

2021.10.01 Fri

ひいきのお店にも反面調査 「1人飲み」で重加算税

「1人飲み」を交際費としていたことで…

最近は、コロナ禍ということもあり、どの法人も交際費支出がすっかり減りました。そのような雰囲気の中、令和3年1月に東京高裁が出した判決が税理士の間で話題になりました。

ある社長がクラブの利用代金を会社の交際費として会計処理をして申告したところ、税務調査を受け、この経費が「個人的な飲食費」ではないかと指摘されました。

実はこの支払は、その社長がひいきにしていたホステスの所属するお店で社長1人で飲んでいたもの。クラブ側にも反面調査も入り、事実が発覚します。会社側は、税務署と交渉して、この支出を「貸付金」として、費用を取消し、修正申告をしました。

交際費は、事業関係者に対する接待・供応

交際費は、①事業関係者に対し、②親睦を深めて、取引関係を円滑にする目的で行う、③接待・供応などの行為をした費用です。誰かを接待しないと、交際費とは認められません。ひいきのホステスと1人で遊興するのは、「個人的な飲食費」とされ、役員賞与とされます。この場合、法人税の損金とされず、源泉所得税も徴収されますので、税金のダブルパンチ。今回は、さらに消費税の控除も取り消されます。

「貸付金」という着地点はよくある話

ここで、実際の税務調査では、調査官から「社長はこの支出を会社に返すつもりですか?返さないつもりですか?」と聞かれることがよくあります。実は、これは「助け船」。貸付金(返すつもり)とすれば、損金として控除できなくても、源泉税の課税は回避できます。これに未収貸付金利息の計上もれと併せて、修正申告に応ずることは、よくある話です。

「隠蔽・仮装」と見られて重加算税賦課

その申告後、この会社に「重加算税」が納付書が届きます。接待をしていないのに交際費として会計処理したことが、「事実(個人的な飲食)を隠蔽し、(交際費に)仮装した」として最も重いペナルティが課されたのです。会社は納得できず裁判へ。「人脈を広げるという意味がある」と主張しましたが、東京高裁は、「(理由が)抽象的」「接待の相手方と業務の関連性の具体的説明がない」と控訴棄却の判断をしました。

長男の嫁の介護報酬

相続人以外の者は、遺産分割協議の対象とならず、被相続人の療養看護に努めてもこれまで経済的な保障はありませんでした。しかし、令和元年7月から民法改正により、長男の嫁など相続人以外の親族にも「特別の寄与」の制度が創設され、相続人に限定される寄与分と同様の算定による特別寄与料の請求が認められるようになりました。

療養看護による特別の寄与

「特別の寄与」の制度は、被相続人の親族(相続人以外)で無償により被相続人の療養看護その他の労務を提供し、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者が、相続人に対し、寄与に応じた額の金銭の支払を請求できるものです。相続人との間で協議が整わない場合、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求できますが、相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、または相続開始から1年以内に限られます。

これまでの家庭裁判所の審判による寄与分の評価は、介護サービス報酬の単価に介護日数を乗じ、寄与の態様に応じた裁量割合を考慮して算定しますが、その評価額は数百万円程度です。内閣府の統計調査(2016年)でも専業主婦による家事活動の評価額を年間で約300万円としています。

特別寄与料は、みなし遺贈として課税

特別寄与料の課税上の扱いは、被相続人から遺贈により取得したものとみなして相続税が課税されます。長男の嫁の場合、被相続人の一親等の血族及び配偶者ではないため、相続税額は2割加算となり、特別寄与料の確定を知った日の翌日から10か月以内に、相続税申告書の提出が必要です。

一方、特別寄与料を負担する相続人は、特別寄与料の負担分を債務として控除できます。また、既に相続税の申告書を提出していたときは、更正の請求ができます。

適切な評価を受けるために

嫁が介護にどれだけ努めていたかは、家族が一番、見てくれていますが、それでも特別寄与料の算定に適切な評価を受けるためには、家庭内で被相続人の療養看護によって財産の維持・増加に努めた行動記録を残しておくことが肝要です。

また、特別寄与者は被相続人の心のケアを担う反面、様々なストレスも負っていることでしょう。それに報いるためには、遺贈を選択することもできます。もちろん、最後は、長男の妻に対するリスペクトが支えになることは言うまでもありません。

衛星通信の課税~ニュースに触れた際の税理士の悲しい思考回路~

ニュースに対する脊髄反応

KDDIが、いままでより低い高度の衛星を活用することで、これまでサービス提供が困難とされていた山間部や島しょ地域、災害対策においても高速通信を使えるサービスを開始すると発表しました。通信困難地域の方々にとってはうれしい話です。

しかしながら、このようなニュースに触れた時、“この課税関係ってどうなる?”と考えてしまうのが、税理士の悲しい性=職業病です。

衛星通信に対する課税(その1)

課税関係を考える場合も、B2B(企業間取引)、すなわち、KDDIと衛星通信サービス会社との間の利用料にどんな課税が適用されるのか、そして、こうしたサービスで儲かる会社に対して、日本国が税金を課税することができるのか、といったことに思いを馳せます。まずは、KDDIが支払う対価について考えてみます。

今回この衛星通信ブロードバンドインターネットサービスを提供するのは、アメリカの会社です。日本の会社であるKDDIが外国の会社に対価を支払うのですから、非居住者に対する源泉所得税の徴収義務があるのかどうかです。実際の契約内容が不明なので、あくまでも推測にすぎませんが、“衛星通信ブロードバンドインターネットサービス”であれば、所得税法の規定で、使用料として20.42%の源泉所得税が発生するのではないかと思われます。

ただし、日米租税条約を適用すれば免税(ゼロ)となるので、事前に所定の手続きをすれば源泉控除不要となります。

次に、消費税の問題です。こちらも契約内容次第ですが、「電気通信利用役務の提供」に該当すれば、アメリカ会社の役務提供は、日本の消費税が課されます。

衛星通信に対する課税(その2)

では、この衛星が日本国の上空で稼ぐ所得に対して、日本国の法人税は課税されないのでしょうか?

外国法人の場合、日本国内に事務所や事業所などの恒久的施設がなければ課税されません。国税庁法人番号公表サイトで調べた限りでは、日本国内に恒久的施設を持たないようですので、日本国の上空で稼いだ所得にも、日本国の法人税は課税されないものと考えられます。

ローンを組めない芸能人の 個人事務所が保有する社宅課税

芸能人は住宅ローン審査で大苦戦

華やかで売れっ子に見えていても、現実には“ローンを組めない”など、意外に厳しい境遇にあるのが芸能人やスポーツ選手です。安定した収入があるサラリーマンとは違い、水物の人気商売の芸能人や稼動期間が短いスポーツ選手に対しては、長期の保証の担保が取れないため、金融機関側も、ローン審査では評価せず、必然的に対応が厳しくなるようです。

売れっ子で現在の年収が億超えであっても、ローンが組めないため自宅を購入できず、“そんな家賃を毎月支払うなら買った方が得”というような高級賃貸住宅に住んでいるのが多いというのはこうした背景事情が影響しているようです。

個人事務所で購入した住宅に住む際の課税

節税のため、個人事務所を作っている芸能人は少なくありません。個人事務所で、蓄積した儲けを使い、事務所名義で取得した住宅に住んだ場合はどのような課税が発生するのでしょうか。節税のための事務所なので、会社形態であり、会社の実質所有者(=役員)がそこに住む芸能人であることを前提とします。

役員に対して社宅を貸与する場合は、役員から1か月当たり一定額の家賃(賃貸料相当額)を受け取っていれば、給与として課税されません。

芸能人の豪邸の場合、社会通念上一般に貸与されている社宅と認められないいわゆる豪華社宅でしょうから、計算される賃貸料相当額は、次のイとロの合計額の12分の1が月額賃料として計算されます。

イ (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%(法定耐用年数が30年を超える建物の場合には10%)。

ロ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

結局、一括購入しても、月々の家賃を支払わないと余計な税金が発生することになるので、賃貸住宅に住む形態となります。

大手事務所の寮や社宅の課税は?

一方、大手事務所が所属する若いタレントを自社が保有する住宅や他社から賃貸した住宅に住まわせているケースでは、賃貸料相当額の計算が変わってきます。

この場合は、使用人として所定の賃貸料相当額を受け取っていれば、給与として課税されません。また。食事の提供等がある場合には、それなりの費用の徴収をしなければ給与課税の問題となります。