100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.52

2021.08.27 Fri

途中入社の方の住民税の特別徴収へ の切替手続きは済んでいますか?

個人住民税の給与からの特別徴収制度

給与の支払いをする際に所得税を源泉徴収して国に納付する義務がある事業主は、原則として、個人住民税についても特別徴収をして納付する必要があります。給与所得者の個人住民税は原則として特別徴収の方法によるものとされ、従業員の希望で普通徴収を選択することはできません。

この特別徴収制度は従前からある規定でしたが、制度の周知が十分でなく、徹底が図られていない状況にあったこともあり、これまで特別徴収は義務ではないと認識していた事業主も少なくありませんでした。しかしながら、東京都と都内区市町村による平成29年度からの特別徴収の徹底のための広報・周知活動で、いまではこの義務がほぼ浸透しています。

途中入社の従業員分の特別徴収

年の中途に従業員が入社した場合、その者についても給与から特別徴収をしなければなりません。なお、1月1日から4月30日までに退職し未徴収額がある場合は、前の勤務先において一括徴収しなければならないことになっています。それ以前の日にちでの退職では、前勤務先からの給与所得異動届出書の「転勤等による特別徴収届出書」に追記して自治体に提出し、自社で給与からの徴収を開始(=特別徴収を引き継ぐ)します。

前の勤務先から次の勤務先への就職に間隔が開くこととなる場合、その間の個人住民税は、一括納付された場合を除き、普通徴収(=納税者が自分で納付する)に変わります。そして、その後、新たに就職した場合に、新しい勤務先で特別徴収されることとなるのですが、途中入社の従業員分の特別徴収手続きは、事業主の手間が増えることも相まって、従業員からの申し出があるまで放置しているという状況も少なくないようです。特に、1月1日以降に入社した従業員の前年分の給与支払報告書は前の勤務先から提出され、新しい特別徴収決定通知書も前の会社に送付されて適切な手続きが遅れがちです。

とはいえ、事業主の義務ですので、適時に必要な手続きをすべきです。

入退社のタイミングで手続きは面倒です

必要な特別徴収や異動の届出書は入退社のタイミングに左右され結構煩雑です。会計事務所や地方自治体に問い合わせをしながら適切に処理してください。

採用力を上げる 求人票で押さえたいポイント

採用を成功に導くには

有効求人倍率はコロナ禍の影響もあり低調でしたが2021年6月が全国平均1.3倍と上昇傾向になってきました。採用を控えていた企業が採用活動に動き出しているのかもしれません。

採用活動は求職者に振り向いて自社に興味を持ってもらうところから始まります。採用力を上げて望むような人材に応募してもらうには何をすると良いでしょうか?

採用するためには企業力と条件と採用活動が必要です。①企業力とは会社の規模、歴史、認知度、イメージ、商品サービス等で、②条件と言えば労働条件や仕事内容、職場の活性度、勤務地、将来への期待、給与、福利厚生などを言います。③採用活動とは採用のための接触機会、求人媒体、露出度、ターゲット、マーケティング、求人原稿、掲載時期、面接、スタッフ満足度等で、①②というような条件は簡単に変えたり向上させたりは難しいので、採用力を上げるために③の採用活動の見直しをすることですぐに取り組めます。

求人票で押さえておきたいところ

①  経営視点……事業のイメージや正社員かパートか、仕事内容や給与等について

②  法律視点……採用で禁じられている法律上の規制があります。労働基準法、職業安定法、男女雇用均等法、の3つは必ず守らなければなりません。

③  人を見る視点……求人する人のイメージを作ります。求職者が求人票を見てモチベーションが上がるように意識的な文章を盛り込んでいく事が大切です。

「人」の視点が大事

ほとんどの求人票が経営と法律の視点だけを意識した求人票になりがちです。「人」の視点がないとすぐには向上できない企業力や条件で同業他社や大手企業と勝負しなければならないのです。求人票を「人」を意識した内容にすることで注目度が上がるでしょう。それには「自社の欲しい人材のイメージを明確にすること」が大前提です。欲しい人材が定まらないと自社に合った人材は応募してきてくれません。イメージを明らかにしたらターゲットに応募してもらうメッセージや条件を考えていきます。求職者に企業からの熱い思いを送りましょう。

相続で所有者不明土地にしないために

高齢化で相続が増加する中、利用されない土地が増えると、所有者が判明しない、又は連絡がつかない所有者不明土地が生じます。今年4月、これらの解消を目的とした民事基本法制の見直しが行われました。

1.不動産登記制度の見直し

相続登記が義務化され、不動産を相続により取得した者は、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しないと10万円以下の過料が徴収されます。一方、相続登記はこれまで、登記義務者が共同して申請しなければなりませんでしたが、新たに相続人が自らを登記名義人の法定相続人であることを申し出れば、単独で登記申請できる「相続人申告登記」※が新設され、登記申請義務を履行したものとみなされます。また、令和4年の税制改正では、相続人の登録免許税の負担軽減措置が図られる見込みです。(※所有権の移転登記ではなく、報告的な登記とされます)

2.相続土地国庫帰属制度の創設

相続した土地を国が買い取る制度も新設されました。相続人にとっては朗報ですが、国は、安易な買取りを防ぐ観点から様々な条件をつけてハードルを高くしています。建物は相続人が取り壊して更地にすることや、土壌汚染や埋設物のある土地、崖地、担保権の設定された土地、通路に利用される土地、境界に争いのある土地などは、買取りの対象からはずされ、買い取る場合でも10年分の管理費用を国に支払うことが条件となるなど利用し難さが指摘されています。

3.土地利用に関連する民法の見直し

民法も新制度の後押しをします。遺産分割協議の長期未了状態を解消するため、相続開始から10年経過したときは、特別受益者の相続分や寄与分によらず、画一的な法定相続分で遺産分割することとなりました。

また所有者不明土地の利活用を促進する観点から新たな管理制度が創設され、選任された管理人が当該土地の管理や売却をできるようにしたほか、所有者不明土地を電気・ガス・水道などライフラインの確保に利用できるようになりました。

相続で所有者不明土地にしないために

親世帯と同居することが少なくなり、相続が起きると土地や建物の利用目的が失われ、維持コストの負担も重くなります。行き場のない不動産としないためにも親の世代が将来の活用や処分に責任をもって臨むことが必要な時代になったと言えそうです。

消費税 インボイス制度いよいよ始動

インボイス制度とは

正式には「適格請求書等保存方式」といいます。令和5年10月から導入されます。導入はまだ先の話ですが、この適格請求書等を発行できる事業者すなわち「適格請求書発行事業者」(以下登録事業者という)の届出と受付が今年の10月から始まります。インボイス制度を理解するにはまず消費税の基本的仕組みを理解してください。

消費税の基本

消費税の負担者はその名の通り消費者です。しかし消費税の納税者は消費者ではなく消費者から消費税を預かった事業者です。

事業者も事業活動において仕入れや諸経費等消費者と同様消費税を負担します。そこで消費者から預かった消費税と自分が負担した消費税の差額を国に納付します。これが消費税です。

今はどうなっているのか?

現在は、事業者は租税公課や保険料や給与や住宅の家賃等法律で非課税とされている取引以外は、全て消費税が課税されているものとして差額を計算して消費税を国に納めています。しかし小規模の事業者も全てこの計算をすると大変煩わしいだろうということで、売上が1,000万円以下の事業者に関しては納税を免除しています。

インボイス制度導入後は

インボイス制度が導入されると、事業者は消費者から預かった消費税から、登録事業者が発行した請求書や領収書に記載された消費税だけを差し引いて差額を国に納めます。

もちろん自分も登録事業者でないと、事業者間での取引は難しくなります。

普段は消費者しか相手にしていない小売店や飲食店でも、大口の会社からの注文や忘年会などで、「適格請求書等」(領収書)の発行を求められた時、登録事業者でないと、発行できません。そして登録事業者になるということは消費税の納税義務者になるということですから、売上1,000万円以下の現在消費税の納税が免除されている事業者も取引形態によっては、登録事業者になる必要が出てきます。

送金額基準が経過措置中の国外居住親族の扶養控除適用の取扱い

ひどすぎた国外居住親族の扶養控除の適用

従前の扶養控除の基準は、「合計所得金額が38万円以下である者」と規定されていたため、“国外で所得がある国外居住親族を何人も扶養控除の対象とする”という“節税手法”が、幾つかの国の外国人コミュニティーで喧伝され、悪用されてきました。

こうした悪用に対しては、「親族関係書類」や「送金関係書類」の提出等を必須とするなどの対策が取られてきました。しかしながら、「送金金額の基準がなかった」ため、少しでも送金していて、その送金が「国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払い」であれば適用忌避は困難でした。

令和2年税制改正で金額基準が規定された

これに対し、令和2年の税制改正で、「年齢30 歳以上70 歳未満の非居住者には生活費又は教育費に充てるための支払は38 万円以上」という基準が設けられ、このような“節税手法”にも現実的な制限が加えられました。しかしながら、「この改正は、令和5年1月1日以後に支払われる給与等及び公的年金等並びに令和5年分以後の所得税について適用する」という経過措置があります。そのため、令和4年までは、少ない金額でも送金があれば国外居住親族を扶養控除の対象としなければならないのかという給与計算における不安が残ります。

年末調整で会社が取るべき対応

令和4年までは金額基準がないため、少額の送金であっても扶養家族として申告してくる従業員の年末調整にどう対応すべきでしょうか? 後日、税務調査で年末調整時の扶養控除の不正確計算が問われれば、過少申告加算税などのペナルティーが会社負担となってしまいます。こうした事態は避けなければなりません。

まずは、本人に「これは何のための送金なのか?」「本国でのひと月当たりの生活費はいくらか?」を聴取し、生活を支えるための送金であると会社が容認できる説明を受けられるのであれば、扶養の対象としてもよいでしょう。これは会社の判断です。しかしながら、金額が極端に少なかったり、まだ働いていたりするような親族の場合は、経過措置中とはいえ、38万円という新基準を尊重する方が無難です。

従業員からは苦情が出るかもしれませんが、万一の時に会社が罰金を被らないようにするためであり、まだ確定申告による控除の道が残されていることを本人に説明してこの問題は回避する方が良いでしょう。