100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.50

2021.08.06 Fri

身元保証書に極度額と有効期限の 取り決めはありますか?

民法改正で個人保証に極度額の定めが必要

2020年4月1日に施行された民法の大改正が行われたことをご存じと思いますが、個人保証に極度額の定めが必要となり(改正民法第465条の2)、社員から受領する身元保証書についても極度額の定めが必要となっています。

そもそも、身元保証に関する契約については、「身元保証ニ関スル法律(以下「身元保証法」)」という、わずか6条からなる古めかしい法律があり、その中では極度額について規定されていません。

しかし、改正民法第465条の2第2項で、「個人保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない」と定めており、2020年4月1日以降に取り交わされた身元保証契約が対象となります。

 

身元保証の契約上限は5年

身元保証法第1条では、期限の定めのない身元保証契約の上限を5年としており、身元保証契約は自動更新ができないため、5年を経過すると新たに身元保証契約を取り交わす必要があります。

しかし、5年を経過した身元保証書の取り直しが行われていることは、実務上少ないのではないでしょうか?

 

身元保証書を入手できない場合の対応

身元保証する側にとって、極度額がある方が無制限保証より安心ではありますが、連帯保証の形式をとることが多いため、極度額が設定されていたとしても、連帯保証がネックとなって、保証人が躊躇し、会社が身元保証書を入手できないケースも増えることが予想されます。

その場合、「身元保証書」や「身元保証契約書」ではなく、「誓約書」の形式として、被保証人たる社員が社員としての適格性を有することや、万一の場合には問題解決に向けて会社に全面的に協力することを保証人に誓約いただくなど、柔軟な対応をとることもやむを得ないかもしれません。

キャンペーン報奨でギフト券を もらった時の事業者等の課税関係

キャンペーン報償でのギフト券の所得課税

保険代理店業を行っている事業者が、保険会社の推進強化月間のキャンペーンで一定の成績を上げ、報償としてギフト券をもらいました。この場合の課税関係はどうなるのでしょうか?

事業者といっても、法人の場合と個人事業の場合の2つの形態があります。

法人=会社の場合は、「無償による資産の譲受け」としてその事業年度の収益の額となります(=雑収入計上します)。

個人事業者の場合も、事業を行ったことで得られたものですので、「事業に係る総収入金額」として課税対象となります。

いずれにしても、ギフト券の価値相当分は所得課税の対象となります。

消費税の扱いはどうなる?

では、その事業者が消費税の課税事業者であった場合には、ギフト券に係る消費税の課税問題も発生するのでしょうか?

消費税法では、キャンペーン報償のギフト券の取得は、「無償であって対価を得て行う取引ではありません」ので、もらった時には不課税扱いとなります。ただし、そのギフト券で事業に必要な物品等を購入した場合は、課税仕入れとして消費税の取扱いが発生することとなります。

報償の対象者が個々の役員や社員の場合

また、もしも、こうしたキャンペーンでの報償対象者がそれぞれの事業者に属する従業員や役員・社員であった場合には、少し課税関係が変わってきます。

所得税基本通達では、「役員又は使用人が自己の職務に関連して使用者の取引先等からの贈与等により取得する金品に係る所得は、雑所得に該当する」としています。

雑所得となった場合、サラリーマンやOLで年末調整を受けている人は、20万円以下ならば確定申告をしなくてもよいとされています(ただし、勤務先からの年間給与収入が2,000万円以下の人に限ります)。

なお、上記の場合であっても、医療費控除やふるさと納税で確定申告をする場合には、雑所得として申告が必要となりますので、その分の計上を忘れないようにしなければなりません。

令和元年度分 「会社標本調査」調査結果

会社標本調査とは

会社標本調査とは、我が国の法人企業について、資本金階級別や業種別にその実態を明らかにし、併せて租税収入の見積り、税制改正及び税務行政の運営等の基礎資料とすることを目的として実施しているサンプル調査です。昭和26年分以降、毎年実施しており、今回が第70回目です。令和元年度分調査結果は、活動中の内国普通法人について、平成31年4月1日から令和2年3月31日までの間に終了した各事業年度を対象として、令和2年7月31日現在で取りまとめたものです。

(本年度調査におけるサンプルは約194万社〈母集団数約276万社〉)

 

令和元年度分調査結果のポイント

(1)法人数

法人数全体(連結子会社を含む)は275万8,420社(前年度比+1万9,871社)と増加しています。

(2)利益計上法人及び欠損法人

利益計上法人数は105万4,080社(前年度比+2万1,410社)で9年連続増加しています。欠損法人数は169万1,357社(前年度比▲1,266社)で2年ぶりに減少しています。全法人に占める欠損法人の割合は61.6%(前年度比▲0.5ポイント)で、10年連続で減少しています。

(3)営業収入金額及び所得金額

営業収入金額は1,484兆7,912億円(前年度比▲62兆9,942億円)と減少しています。利益計上法人の営業収入金額は1,133兆7,453億円(前年度比▲135兆2,815億円)と4年ぶりに減少しています。利益計上法人の所得金額は63兆2,588億円(前年度比▲6兆4,868億円)で10年ぶりに減少しています。

(4)繰越欠損金

繰越欠損金の当期控除額は6兆3,918億円(前年度比▲2兆543億円)で3年ぶりに減少しています。繰越欠損金の翌期繰越額は60兆9,538億円(前年度比▲2兆4,110億円)で2年連続減少しています。

(5)交際費等

交際費等の支出額は3兆9,402億円(前年度比▲217億円)で8年ぶりに減少しています。

雇用保険料の引き上げ 雇調金増、財源が不足

雇用調整助成金の大幅増加

新型コロナウイルス感染拡大で休業を余儀なくされた企業の申請で、雇用調整助成金の給付が増えました。雇用調整助成金は企業が従業員に払う休業手当の費用を補助する制度で、仕事が減っても働く人を解雇せず、雇用を維持してもらうのが狙いです。

元々1人当たりの日額上限は8,300円でしたが、特例措置として今は売上げが大きく減少している企業には最大15,000円、助成率10分の10、原則としては13,500円、助成率最大10分の9となっています。

新型コロナの影響による支給決定額は20年3月~21年7月時点の累計で4兆円を超えています。リーマン・ショックの後も約6億5千億円で、今は6倍を超えています。失業率は抑えられた面もありますが、雇用保険料の財源はひっ迫してきています。

雇用保険料の財源

雇用保険は仕事を失った人のため、生活に困窮しないように給付するものと雇用安定・能力開発の2つに分かれています。企業からの保険料収入を財源にして、給付後の余剰は毎年積み立ています。ただこの度のコロナウイルス感染症で雇用安定事業の雇調金の給付が一気に拡大しました。

国の一般会計からの繰り入れ、失業者向け事業の方からの借り入れで賄っています。コロナ前に4兆5,000億円あった積立金が21年度には1,700億円になる見通しです。

厚労省が雇用保険料を上げる検討

積立金は16年以降保険料率を下げていましたが、余裕がなくなったため来年度は雇用保険料を上げる模様です。

失業者向け事業は労使で本来1.2%負担のところを0.6%で運用してきました。これをもし本来の料率に戻すと財源は1兆円規模で増加します。ただ被保険者が2倍の保険料徴収、企業も失業者向け部分の保険料が2倍となると負担は多大です。また、あまり意識したことはないと思いますが、雇用安定事業は事業主のみが負担していて、経団連等は国の一般会計からの拡充を求めています。

コロナ下で雇調金が雇用維持に一定の効果があったことは確かですが、休業手当の補助のため、人手不足企業などへの人材移動を阻む面があると言われています。

オリンピックの報奨金は非課税だけど… 未成年者の確定申告

オリンピックの金メダリストは13歳!

1年延期の上始まった東京オリンピックで、13歳330日の国内最年少記録を樹立したスケートボード女子ストリート金メダルの西矢椛選手。すばらしい快挙です。

実は国際オリンピック委員会(IOC)は出場選手の最低年齢を定めてはおらず、各競技が独自の基準を設けています。例えば体操は16歳から、ボクシングは18歳からです。今回のスケートボードに関しては年齢制限がありませんでした。

未成年への報奨金やスポンサー料は課税?

(財)日本オリンピック委員会から金メダルの選手には500万円の報奨金が贈呈されますが、これは非課税とされています。西矢椛選手の前に国内最年少金メダリストだった岩崎恭子さんが当時報奨金を受け取り、これが一時所得として課税される上に、扶養家族からも外れると話題になり、非課税へと改正されたためです。

なお、オリンピック委員会からの報奨金は非課税ですが、他の団体からの報奨金やスポンサー料等に関しては、選手が何歳であろうと課税されます。オリンピック金メダルとなれば、CMや番組出演、スポンサー等のオファーも多数来るでしょうから、13歳にしてなかなかの納税額、ということになりそうです。

未成年者の確定申告

日本の所得税に関しては、未成年者であることを理由にした申告不要制度等は用意されていません。他に何も控除がないとして、基礎控除48万円を超える所得がある場合は、たとえ13歳であっても確定申告が必要です。

親は未成年者の財産を管理することができますから、親が子供の代理として確定申告書の作成や提出などの手続きを行うことができます。ただし税金の支払いに関しては、その子供のお金から支払う必要があります。親が自分のお金で子供の税金を支払ってしまった場合、税金分を親から子供へ贈与したとみなされる可能性があります。

YouTubeをはじめ、各種動画サービスの広告収入や投資等、PCやスマホの普及で未成年者が収益を得る機会も昔に比べると増えたように感じます。今後はアルバイトだけではなく、他の収入についても気をつけないといけない人が増えてくるのかもしれません。