100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.49

2021.07.30 Fri

ワクチン接種に駆り出された 歯科医師の報酬の課税区分

ワクチン接種拡大が最優先→歯科医の支援

2021年新型コロナの新規感染は止まりません。国はワクチン接種数を拡大させることを最優先とし、通常は口腔内にしか注射を打つことが認められていない歯医者さんをワクチン接種要員として狩り出し始めました。地元の市町村等からの依頼があって地元歯科医師会の了解のもと、普段は自身の医院をもって開業している歯医者さんも、休診日やお昼時間、夜時間など空いている時間にワクチン接種に協力しているとのことです。

ワクチン接種業務の報酬の課税

開業医が個人事業として事業を行っていれば、事業所得として課税されます。ワクチン接種も一種の医業周辺業務なので、事業所得として課税されることになるのでしょうか?

答えを先に言ってしまうと、開業医だろうが他で勤務している勤務医だろうが、こうした業務(=この場合はコロナワクチンの接種業務)で得た収入は、通常、その業務を主宰する者からの給与所得として課税されます。

事業vs給与の区分

業務による対価が事業の収入となるのか給与収入となるのかの違いは、その業務が委任契約に基づくものなのか雇用契約に基づくものなのかによって変わってきます。

重要な要素としては、その業務の指揮命令は誰が行い、業務に必要な材料や用具は誰の負担で供与されているのか、そして最終的な業務の責任はだれが負うのか、などが総合勘案されて判断されることになります。これは消費税法の基本通達でも示されている考え方であり、外注が委託業務で消費税が発生するのか、もしくは実態は雇用による給与で消費税は発生しないのかなどを検討する時に使われます。

この基準からすると、歯科医師会の依頼のもとに接種業務だけを提供して得た収入は、普段開業して事業所得を得ている歯医者さんでも給与所得となります。これは自治体や会社の依頼の下、公立学校の学校医や産業医として得る収入が給与所得になるのと同じ考え方です。

一方、開業医がかかりつけ医として自分の医院で行うワクチン接種は、事業所得であるということは言うまでもありません。

事業再構築補助金 第1回公募の採択結果を受けて

鳴り物入りで始まった事業再構築補助金の採択結果が6月18日に公表されました。公募の応募件数は22,231件で、このうち申請要件を満たしたものは19,239件。厳正に審査を行った結果、8,016件が採択されました。業種別の応募と採択割合については、日本標準産業分類で応募割合・採択割合を分析すると、特に製造業、宿泊業・飲食サービス業、卸売・小売業が多く、この3業種で全体の約6割を占めました。

 

都道府県別の応募状況

都道府県別に応募件数を見ると、単純な件数ベースでは、東京、大阪、愛知、兵庫の順でした。平成26年経済センサスに基づく都道府県毎の中小企業数に占める応募者の比率は、東京、関西周辺、愛知が多いので、順当な結果となりました。

 

応募金額・採択金額の分布について

応募金額及び採択金額の分布を分析すると、100~1,500万円が最も多く、全体の4割以上を占めています。次いで4,500万円以上の案件が約3割程度となっています。 応募金額は、1,000万円以下と6,000万円に二極化しています。3,000万円を超えると金融機関の確認が必要となるため、3,000万円をわずかに下回る申請も多いようです。

 

認定支援機関別応募・申請・採択状況

認定支援機関別に応募状況を分析すると、金融機関が約8,100社で最も多く、次いで税理士関係が約5,600社、商工会・商工会議所が約3,500社程度となっています。特に中小企業診断士、民間コンサル、地銀などの金融機関の採択率が高い傾向です。

 

要件を満たさなかった申請の事例

事例①:売上高減少要件に必要な月別売上高を証明する書類が添付されていない。売上高減少として選択された年月とは異なる年月の書類が添付されている。

事例②:「認定経営革新等支援機関による確認書」 に記載された法人名等が申請者と異なる。認定経営革新等支援機関ではなく、申請者名で確認書が作成されている。

事例③:経済産業省ミラサポplusからの「事業財務情報」が添付されていない。

事例④:添付された書類にパスワードがかかっている、ファイルが破損している。

災害を受けた時の 住宅ローン控除の取り扱い

今年も豪雨被害が出ています

近年、日本各地で豪雨被害が毎年発生しています。被害に遭われた方にお見舞いを申し上げます。

近年では予報精度が上がり、避難指示等の発令についても迅速に行われるようになってきました。しかし、災害が発生しそう、または発生しているその場にいる人が動かなければ、予報も避難指示も意味がありません。まずは災害が起きる前に、避難ルートの確認や情報収集の方法を考え、備えておきましょう。

 

災害時、住宅ローンの特例がある

いざ災害等に遭ってしまった場合は、雑損控除や災害減免法による所得税の軽減や、申告・納税の猶予、法人税の繰戻し還付等の、税の優遇が受けられるものがいくつかあります。住宅ローン控除についても、災害により住宅用家屋が被害を受けた場合には、特例を受けることができます。

 

適用期間の特例

基本的に、住宅ローン控除は「居住している」ことが条件となりますが、災害によって被害を受けたことにより居住の用に供することができなくなった住宅は、住宅ローン控除の残りの適用年においても引き続き住宅ローン控除を受けることができます。

ちなみに「住んでないのにローン控除」が認められているケースは他に「単身赴任で家族は住んでいる住宅」があります。

 

重複適用の特例

被災者生活再建支援法が適用された市区町村の区域に所在する家屋が、災害により居住の用に供することができなくなった場合には、被災住宅の住宅ローン控除と、一定期間内に新たに住居用家屋の再取得等をした場合の住宅ローン控除を重複して適用することができます。

ただし、重複適用の特例を受ける場合は「それぞれの控除額の限度額のうち最も高い金額が控除限度額」となるため、2つの住宅ローンの合計額が大きい場合、すべての額が控除されるわけではありません。

税務実務DXへ向けて 元帳印刷の不要化

税務処理のDXの遅れ

法人税等の申告後の関与先への申告書や総勘定元帳の提供に当たり、書類化することをせずにPDF化したものをDVDに保存する形式での提供としている税理士事務所も多いようです。

また、税務調査においては、用意しておく帳簿として総勘定元帳3年分とか5年分とかの依頼を受けてから、印刷を行うということも多いかと思います。

青色申告者は、資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引につき、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に従い、整然と、かつ、明瞭に記録した帳簿(仕訳帳や総勘定元帳など)を備え保存しておくべきこととされているので、先のような事実は、本来的には帳簿備え付けの法規の規定からは疑問のあるところですが、これらについて調査現場で、杓子定規に批判するようなヤリトリがなされることはなさそうです。むしろ、青色申告要件帳簿の法規が手書き帳簿時代のもので著しく時代遅れになっていることを誰もが了解し合っているからかもしれません。

税務実務のDX化への税制改正

日本社会のデジタル化の遅れの解消のため、今年の税制改正で、電子帳簿保存法とその施行規則が改正され、帳簿電子化への事前承認という制度の廃止、帳簿電子化採用への抑制的とも言える過度なシステム整備等への要求の大幅な緩和がなされました。

事前承認ではなくなったので、この改正規定の施行される令和4年1月1日以降においては、電子帳簿制度を採用するか否かは、納税者が任意に決めるところとなります。また、事後修正不可などの旧来型のシステム要件を備えたものには優良待遇の制度を設けてはいますが、通常の市販の会計ソフトを利用する場合や、会計事務所に入力を依頼している場合などにも対応しようとしての改正なので、導入をためらうようなハードルはあまりありません。

来年以降のことですが

調査現場に、会計データの入っているノートパソコンとそのシステムのマニュアルを用意すれば印刷した帳簿書類を用意しなくて済みそうです。会計データも、市販ソフトで操作するものではなく、元帳データをPDFにしたものでも、検索可能ならば、要件充足しそうです。

雇用保険申請の一部で 通帳等や身分証等の写しの提出が原則不要に

雇用保険の一部で通帳等の写しが不要に

2021年8月1日以降、雇用保険の「育児休業給付金」「介護休業給付金」「高年齢雇用継続給付金」に関して、初回の支給申請時に、申請書記載内容の確認書類として必要とされている通帳等(通帳やキャッシュカード)の写し(正しくは「払渡希望金融機関確認書類」)が原則提出不要になります。

 

通帳等の写しが不要となる申請書

<育児休業給付金>

・育児休業給付金受給資格確認票

・(初回)育児休業給付金支給申請書

<介護休業給付金>

・介護休業給付金支給申請書

<高年齢雇用継続給付金>

・高年齢雇用継続給付受給資格確認票

・(初回)高年齢雇用継続支給申請書

 

手書きでの申請書作成の場合は必要!

申請書類が手書きの場合(口座情報のみが印字されている場合も含む)および口座情報のみが手書きの場合は、従来通り通帳等の写しは提出が必要になりますので、注意が必要です。

 

高年齢雇用継続給付は免許の写し等も不要

高年齢雇用継続給付金に関しては、受給する被保険者の年齢が60歳以上65歳未満であることの確認書類として提出が必要とされてきた「運転免許証や住民票の写し」も、同様に2021年8月1日以降、雇用保険の申請に関して「マイナンバー」を届け出ている被保険者に限り、添付書類としての提出が不要になります。

添付不要となる申請は、通帳等の写しが不要となる申請と同じ下記の申請書です。

・高年齢雇用継続給付受給資格確認票

・(初回)高年齢雇用継続支給申請書

 

新型コロナの感染拡大以降、申請書類への押印不要や添付書類の一部が不要となる労働保険や社会保険の申請が増えていますので、しっかり確認して業務効率化につなげたいものです。