100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.47

2021.07.16 Fri

ワクチン職域接種と労働時間

進みつつあるワクチン職域接種

新型コロナワクチンの早期接種を加速するために企業・大学での「職域接種」が始まりました。現時点では申込数が多かったためにワクチンの供給が間に合わず一時的に申し込みを停止しているようですが、近く再開されることでしょう。

職域接種は自治体からの接種券が届く前でも接種可能です。会場や人員を企業側が確保しなければなりませんが、企業単独実施や商工会議所などを通じての共同実施で関連する企業もまとめて実施というのもあり自治体と合わせると接種の加速化が進むでしょう。

ワクチン接種と休暇や労働時間

希望する労働者が接種するに当たり所定労働時間内に行いたいという場合や、また接種後の副反応が出た時の対応も考慮しておく必要があるでしょう。

厚生労働省は「新型コロナウィルスに関するQ&A(企業の方向け)」で内容を載せています。

「職場における感染防止対策の観点からも、労働者の方が安心して新型コロナワクチンの接種を受けられるようワクチンの接種や接種後に労働者が体調を崩した場合などに活用できる休暇制度などを設けていただくなどの対応は望ましい」としています。

①    ワクチン接種後に副反応が発生した場合の療養の時などに活用できる休暇制度の新設や、既存の病気休暇や失効年休積立制度を活用できるよう見直すことなどを推奨しています。

②    特別ペナルティなどはなく中抜け(ワクチン接種の時間は労務から離れることを認めその分、就業の時間の繰り下げを行ったり、出勤とみなして通常勤務したものとして取り扱うことを認める)など、労働者が任意に利用できるものである限り一般的に労働者に不利益なものでなく合理的なものであるとしています。

また、企業として休暇制度の制度整備をするということであれば就業規則の変更も必要となってくるでしょう。

このような対応は、接種を希望する労働者にとって活用しやすいように希望や意向なども踏まえて検討することが重要としています。

資産移転の時期の選択に中立的な税制

相続税と贈与税は、それぞれの税率に差異があるため、いつ財産を移転するかで税の負担に違いが生じます。生前贈与の動機ともなりますが、近い将来、この相続税・贈与税の制度は変わるかもしれません。

欧米は、資産の移転時期の選択に中立的

欧米では、財産の移転について相続時にまとめて課税する方式をとっています。米国では、一生涯の累積贈与額と相続財産額に一体課税し、ドイツでは相続前10年間、フランスでは15年間の累積贈与額と相続財産額に一体課税します。

税率は、贈与税・相続税で共通のため、米国では生涯にわたる税負担が一定となり、同様にドイツでは10年間、フランスでは15年間、税負担が一定となります。これらの国では、資産の移転時期の選択に中立的な税制となっています。

日本は、有利不利が生じる税率構造

これに対し、日本では贈与税と相続税は別体系で課税されます。生前贈与には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があり、暦年課税の場合は、相続前3年間、相続時精算課税を選択した場合は、選択後の累積贈与額と相続財産額に一体課税します。

相続財産が比較的少ない層にとっては、相続財産に適用される税率に比べ、贈与税の税率が高い水準にあるため、分割贈与をしても高い贈与税率が適用される余地が多くなり、贈与に抑制的に作用します。他方、高額な相続財産を有する層では、相続財産に適用される限界税率(55%)を下回る水準まで分割贈与することで、相続税の累進負担を回避して財産を移転できます。

一方、贈与税には、住宅取得等資金、教育資金、結婚子育て資金の非課税贈与制度があり、贈与による財産移転が有利となります。以上から、日本の税制は資産の移転時期の選択に中立的な税制ではありません。

政府税調では税制見直しの議論が進む

政府税調では、相続税のもつ「富の再分配機能」「格差固定化の防止」の観点から、相続税・贈与税の見直しが議論されています。感染症やグローバル化の中、富が社会に偏在することは経済格差を生み、不安定な生活は人の幸せにつながらないことから、あらためて「資産移転の時期の選択に中立的な税制」が検討されています。財産を次世代に渡す高齢者世代も、受継ぐ若者世代も税制にとらわれず、それぞれの暮らし方に応じた時期の移転が望まれます。

給与デジタルマネー払い解禁か

デジタルマネー払いとは

情報処理技術の進展に伴い、民間事業者からいろいろなデジタルマネーが発行されるようになり、決済や送金の場面に用いられています。給与のデジタルマネーが解禁されるとどのような支払い方法が可能となるか、メリットもデメリットも未定部分も多いのですが現況での考察をしてみます。

いわゆる電子マネーと言われるSuicaやPASMO、nanacoといったデジタルマネーは利用者があらかじめチャージをした範囲内で決済に利用できるものです。

今回の給与のデジタルマネー払いで予定されているのは、決済のみならず送金や出金を可能とするものです。銀行以外の登録制で認められた資金移動業者が振替取引を行います。国内送信サービスではウォレットやアカウントにチャージして当該残高の範囲で決済や送金、出金が可能となるものです。カードやスマホを用いたキャッシュレス決済やQRコード決済を可能とする会社もあります。海外送金サービスでは外国人などのニーズにも応えています。

利用者保護の仕組み

資金移動業者は銀行と違って預金を受け入れることはできませんが振替取引に関する資金を預かることはできます。資金移動業者は預かった資金の全額以上の資金を事業資金とは別に用意、保全し万一の破綻の場合にもこの資金から還付を受け取ります。

さらに保証として銀行や保険会社、保証会社が保証業務を担う仕組みです。

給与のデジタル払いを認めるか否かは労働政策審議会で検討されています。資金決済法等に基づき「利用者の保護及び資金移動業の適正かつ確実な遂行」の観点から、賃金の確実な支払いを担保する要件を満たす一部の業者のみに限定されそうです。

働く人から見たデジタルマネー払い

これまで給与は原則月に1回銀行口座の振り込みで受け取っていましたが、第二の財布であるデジタルマネー口座に一定の支払いを受け、ATM引き出しや口座振替をすることなく直接キャッシュレスの決済送金が提供されます。Fintech協会が、就労中で年収のある16歳から60歳の方に調査をしたところ、デジタル給与支払方法が今後広まるであろうと回答した人は66%でした。

今後、制度整備がなされれば給与のデジタルマネーでの支払いが企業で検討されることでしょう。

DXを見据える 令和2年分確定申告状況

今年もコロナ禍で集計期間が4月末に

国税庁は毎年、所得税等・消費税・贈与税の確定申告状況を報道発表しています。今年も去年と同様に、従来の3月末の時点でのカウントではなく、新型コロナウイルス感染症の影響により申告期限が伸びたのを反映し、4月末までが対象になっています。

所得税等の申告人員は前年比+2.1%の2,249万人、また申告納税額は3兆1,653億円で、前年比で▲1.6%とのことです。

 

e-TaxやICTの利用が活発

今年確定申告会場で申告書を作成・提出した方の人数が345万人、会場へ行ったり税理士へ依頼を行ったりせずに、自宅から納税者自身がe-Taxで申告書を提出した人数が321万人となりました。自宅からのe-Tax申告者の数は令和元年分の約1.7倍となり、去年に比べると135万人増加しました。申告書の作成・提出方法については、新型コロナウイルス感染症への取り組みが顕著にあらわれていて、e-Taxが普及してきたということでしょうか。

また、国税庁が近年環境を整備してきた「スマホでの申告」をした人の数は元年から約2.2倍に増加し、102万人となりました。去年から配備された税務相談チャットボット「ふたば」の令和2年分の相談件数は420万件で、試験導入した元年分からは実に10倍以上に増加しています。

 

税務署に行かなくてもできるようにする

国税庁は「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」として、「あらゆる税務手続きが税務署に行かずにできる社会を目指す」としています。また、確定申告に関しては、現状の確定申告作成コーナーの使いやすさ向上やe-Taxの普及のほか、申告内容の自動チェックや申告・申請等の簡便化を進めてゆくとしています。

確かに近年の生命保険料や寄附金のデータを申告書用に生成し、それを連動させるような取り組みを見ていると、確認のボタン一つで申告書ができ、納税や還付が済ませられることも現実的な構想として予見できるものになってきました。この先も、もっと税務申告・申請は簡単・便利になるのでしょうか。

源泉所得税のクレジット カード納付のススメ

1日でも遅れると10%の不納付加算税

給与などから源泉徴収した所得税等は、原則として、支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。

源泉所得税の納付を一日でも遅れると、原則10%(税務署指摘前の自主的納付は5%)の不納付加算税という罰金が科されます。年率10%の延滞利息でなく、一日でも納付すべき税金の10%が課されるのです。

“国に代わって給与支払者が従業員の給与から天引きして納付しているのに罰金とはけしからん”という気持ちはわかりますが、税法で規定されているので従わなければなりません。

資金繰りの関係で手元資金がいまない場合

たとえば、「翌月15日には顧客からの売掛金の入金があるが10日までは手元資金がない」といった場合どうすればよいでしょうか?「ホンの5日位だから5%の不納付加算税なら構わない…」のでしょうか?

過去に不納付の事績があると他で罰則の軽減が適用されなくもなりますので、決して納期限に遅れてはいけません。

こんな時に便利なのが、クレジットカードによる税金納付です。国税(源泉所得税他の国の税金)をクレジットカードで納付することができるようになったのは、2017年1月4日(水)からです。

クレジットカード払いでは、金融機関や税務署窓口での納付やe-Taxでのインターネットバンキング納税とは違い、納付税額に応じて所定の決済手数料がかかりますが、10%の不納付加算税と比較すると、これを使わない手はありません。

納期の特例利用者は特にご注意を

毎月の源泉所得税等の納期は翌月10日ですが、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、源泉徴収した所得税及び復興特別所得税を、半年分まとめて納めることができる特例があります。これを納期の特例といいます。

一見便利に見える納期の特例制度ですが、半年分まとめるとなるとそれなりの金額となり、資金繰りに与える影響もそれだけ大きくなりかねません。納期限である7月10日や翌年1月20日に十分な資金繰りの手当てがあれば別ですが、不安がある場合は、早めに、クレジットカード納付も検討してみることをお勧めします。