100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.46

2021.07.09 Fri

男性の育休、取得のハードル

男性の育休取得を促す改正

男性も子育てのための休みを取りやすくする改正育児・介護休業法が創設されました。男性も子供の出生後8週間以内に4週間迄2回に分けて「産休」を取得でき、企業には対象社員に取得を働きかけるような義務付けがあります(2022年秋施行予定)。

この流れは拡大することはあっても縮小されることはないでしょう。男性だけが長時間働き、女性が家事育児中心というスタイルは少子高齢化で働き手が減る中、女性の労働力が重要であり男女ともに働けるライフスタイルに変化していくでしょう。

男性の育休を阻むもの

日本の男性の育休取得が進まないのは、制度があっても職場の慣習から取得にためらう人が多いということです。法改正をしても取得を進める上で根本的な問題は別のところにあります。マイボイスコムの調査では「休業中の給与の100%補償」(54.8%)、「育児休業取得に否定的な上司や同僚の意識改革」(41.2%)、「育休取得がキャリアに不利にならないという安心感」(40.1%)とする回答が多くありました。男性自身、職場の無理解が取得の壁と感じていることが浮かび上がりました。

男女ともに子育てしやすい環境に

日本は先進国の中でも男性の家事・育児参加が少なく少子化の要因とも指摘されています。今回の改正で出生直後に女性の身体的・精神的負担を軽減できる意義は大きいと言えるでしょう。継続的な男性の育児参加が女性に偏りがちな子育てを分担することで女性の就労継続ともなるでしょう。

一方で企業の労務管理などは複雑になる面もあります。企業も労働時間だけでなく中身で評価したり、キャリアアップのルートが複数あったり働く時間や場所を柔軟にしたりと対応が必要な時代となるでしょう。

今、コロナウィルス危機で世界的に出生率は急減しており各国の成長に陰りが見えます。出生率の低下が将来の労働力減少で経済成長力を押し下げるため欧米や中国・韓国等でも育児支援に力を入れています。日本ではようやく「子ども庁」創設論が出てきたところです。

いまさら聞きにくい初歩を解説 ふるさと納税のポイント

ふるさと納税、していますか?

個人の所得・控除によって決まる控除上限金額までの寄附なら、自己負担が2,000円で返礼品が貰えるふるさと納税制度。令和元年度の寄附件数は約2,334万件、寄附総額は約4,875億円となり、多くの方が利用されている制度です。しかしながら「難しそう」という印象で、敬遠されている方もまだまだいらっしゃるのではないでしょうか? 今回はふるさと納税で最低限押さえるべきポイントをご紹介いたします。

控除上限金額を把握しましょう

控除上限金額は、その年の所得や控除によって決まります。控除上限金額までの寄附であれば、基本的に自己負担は2,000円で済むため、「貰える品の価値の合計が2,000円を超えていればお得」ということになります。ふるさと納税を扱っているサイト等にシミュレーションや簡易な目安表が掲載されているので、それを利用して控除上限金額を把握するのが大切です。

「計算が良くわからない」という方は、目安表を見て、それよりもいくらか少なめに寄附すれば安心です。控除上限金額はあくまでも「これ以下の年間寄附額ならば自己負担は2,000円で済む」という区切りですから、控除上限金額ぎりぎりまで寄附しなくても、自己負担は2,000円で済みます。逆に超えてしまうと自己負担はどんどん増えてゆくので、注意が必要です。

年末調整ではふるさと納税の処理はしない

ふるさと納税をした後に、税の軽減を受けるための手続が必要ですが、年末調整では行えません。ワンストップ特例制度(5か所以内の自治体への寄附かつ確定申告をする必要がない場合)の申請をするか、確定申告を行う必要があります。

この辺が特に敬遠されるポイントになっているのかもしませんが、給与収入や年金収入のみであれば、確定申告書作成はPCやスマホで簡単に行えるようになっています。一度国税庁の確定申告書等作成コーナーを眺めてみると良いかもしれません。

税の軽減は再来年5月までかかる

当年のふるさと納税は、来年6月~再来年5月の住民税の額を下げる効果があります。特に特別徴収(給与天引き)をされている方は「去年のふるさと納税の結果、毎月住民税が少し安くなる」状態となりますから、税の軽減が実感しにくいのも事実です。どのくらい住民税が軽減されるかは、住民税の決定通知書で確認が可能です。

令和2年度 査察の概要

査察制度とは

悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的としています。国税査察官は、近年における経済取引の広域化、国際化及びICT化等による脱税の手段・方法の複雑・巧妙化など、経済社会情勢の変化に的確に対応し、悪質な脱税者に対して厳正な調査を実施しています。

重点事案への取り組み

令和2年度は査察制度の目的に鑑み、特に、消費税事案、無申告事案、国際事案などの社会的波及効果が高いと見込まれる事案を重点事案として積極的に取り組みました。

(1)消費税事案

消費税に対する国民の関心が極めて高いことを踏まえ、消費税事案については積極的に取り組み、令和2年度は18件を告発しました。また、消費税の輸出免税制度を利用した消費税不正受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案であることから、引き続き積極的に取り組み、令和2年度は9件を告発しました。

(2)無申告事案

納税者の自発的な申告・納税を前提とする申告納税制度の根幹を揺るがす無申告によるほ脱犯について取り組み、令和2年度は13件を告発しました。

また、単純無申告ほ脱犯を適用した事案は7件を告発しました。

(3)国際事案

経済社会のグローバル化の進展に伴い、個人・企業による国境を越えた経済活動が複雑・多様化する中、国際的な脱税への対応が求められています。このような状況の中、消費税の輸出免税制度を悪用した消費税不正受還付事案や海外に不正資金を隠すなどの国際事案に積極的に取り組み、令和2年度は過去5年で最多の27件を告発しました。

不正資金の留保状況及び隠匿場所

脱税によって得た不正資金の多くは、現金や預貯金として留保されていましたが、その他に、不動産、有価証券、暗号資産及び高級車両の取得費用並びに海外カジノを含むギャンブル等の遊興費に充てられていた事例もみられました。

テレワークと社員への食事支給

通常の食事支給のルール

役員や使用人に支給する食事は、以下の要件をどちらも満たしていれば、給与として課税されません。

①役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること

②「食事の価額」-「役員や使用人が負担している金額」=1か月当たり消費税を除き3,500円以下であること

「食事の価額」とは弁当等を取り寄せて支給している場合には、業者に支払う金額です。社員食堂などで会社が作った食事を支給している場合には、食事の材料費等直接かかった費用で、社員食堂の運営を外部に委託したとしても外注費は含まれません。中小企業では社員食堂運営は難しく、外食に頼らざるを得ない訳で、社員食堂があるような大企業に比べると、1食当たりの費用から見て、中小企業の方が食事支給の非課税ルールを利用しにくいのが実情でしょう。

なお、残業又は宿日直を行うときに支給する食事は、社員の負担なしで支給しても給与として課税しなくてよいことになっています。

「食事代」を支払う際のルール

食事を支給するのではなく「食事代」として金銭を払った場合は、基本的には全額が給与として課税されます。ただし、深夜勤務者に夜食の支給ができないために1食当たり300円(消費税を除く)以下の金額を支給した場合は給与として課税しません。

テレワーク時の食券の支給は?

では、テレワーク時の食事についてはどうでしょうか。国税庁は「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」の中で、「従来通りの食事支給のルールに合わせた食券の支給ならばOK」としています。ただし、食券の利用については、「親族等に係る食事代への利用はしない」「一般的な昼食等としての相当額の範囲を逸脱しない」ように注意喚起もしています。「食事の価額」-「役員や使用人が負担している金額」=1か月当たり消費税を除き3,500円以下であれば非課税というルールが健在なため、例えば500円(税抜)のお弁当を20日支給して補助を非課税にするためには、社員負担は1食当たり325円以上となるわけですから、福利厚生にかかる手間を考えると、この食券制度は労使共にあまりメリットを感じられないのではないでしょうか。

4つの利益の違いは?

すべて「利益」だけれど数字は違う

決算書などで用いられる「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「純利益」ですが、この4つの利益の意味を正確に説明できますか? 会社の状態を読み解く上で重要なポイントでもあるので、この機会におさらいしてみましょう。

・売上総利益は、売上から売上原価を引いたいわゆる「粗利=付加価値」です。しかし製造業の場合、売上原価に製造原価が含まれるため正確な「粗利=付加価値」とは言えませんが、この売上総利益率がわかっていると、本業に係る1か月の販売費や一般管理費は概ね一定ですから、売上げがわかれば「売上×売上総利益率-販売費・一般管理費」の算式で1か月の営業利益が概算つかめます。

・営業利益は、企業が本業で稼いだ利益です。売上高から、売上原価や販売費及び一般管理費を差し引いた額です。

・経常利益は、企業が事業全体から経常的に得た利益です。本業以外の財務活動などによる収益と費用も反映させますから、例えば借入金が多く利息の支払いの負担が大きい場合は、営業利益に比べると経常利益は小さくなります。

・純利益は、経常利益から通常の企業活動には含まれない例外的な「特別収益」や「特別損失」を含めて計算されます。また、税金の控除前を「税引前純利益」、税金の控除後を「税引後純利益」と呼び、企業のすべての収益から、すべての費用・損失を差し引いて算出される利益となるため、最終的に「繰越利益剰余金」として資本となる利益です。

 

利益を比較して会社の状態を把握

純利益が最終的に企業に残る利益のため、一番重要なのは純利益に見えますが、特別収益や特別損失といった、継続的な事業には関係のない例外的な損益が加味されているため、企業の経常的な業績を判断する指標としてはふさわしくありません。

経常利益は、会社の資産運用益や借入金の利息なども加味されることになるため、事業全体に関する数字を見ることができ、会社の正常な収益力がどのくらいなのかを判断するのにふさわしい数字となります。