100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.41

2021.06.04 Fri

外国人労働者の人事労務支援ツール

職場のルールを理解してもらうために

厚生労働省は、外国人を雇用する事業主・人事労務担当者向けに、3つの支援ツールを作成しました。

(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17698.html)

「聞いていた給与の金額と振込み額が違うのはなぜ?」と質問されたり、「健康診断は受けたくありません」と言われて困ったことはないでしょうか。こうした困りごとの背景にある文化ギャップを理解し、母国語ややさしい日本語で適切な説明ができるよう、支援するためのツールです。

ひとつは、『雇用管理に役立つ多言語用語集』。名称の通り、労働・社会保険関係用語約420語の定義・例文を、やさしい日本語と9言語で検索できる用語集です。エクセル版と、オンライン上で検索できる見やすいサイトがあります。

『外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集』は、特に入社時の説明に活用できます。労働条件を中心に、日本と外国の雇用慣行の違いを理解したうえで、どのように説明するのがよいかの例文が掲載されています。就業規則については、『モデル就業規則やさしい日本語版』を参照しましょう。

 

母国語での労働条件明示を

平成31年4月の「外国人雇用管理指針」改正で、賃金、労働時間などの主要な労働条件を、母国語など、外国人労働者が理解できる方法で明示・ 説明することが事業主に求められるようになりました。私たちが当然だと思っている日本企業のルールは、外国人にとっては馴染みがないものも多くあります。法律や制度の説明だけではなく、「なぜ職場のルールがそうなっているのか」という理由や背景も説明し、理解をしてもらうことも大切です。

支援ツールには、外国人雇用企業の好事例集も掲載されています。事業で使用する独自の用語集を作成している企業もあれば、社長が率先して丁寧なコミュニケーションをとっている会社もあります。取組を参考に、自社の職場環境の改善、そして生産性向上につなげていきましょう。

外国籍社員との職場コミュニケーション

動画教材を使って学ぶ

経済産業省は、職場における日本人社員と外国籍社員の効果的なコミュニケーションの実現に向け、動画教材『日本人社員も外国籍社員も 職場でのミスコミュニケーションを考える』を作成しました。

(https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210426003/20210426003.html)

この動画教材は、事例をもとに作られたロールプレーイングと解説を見て、グループワークで考えながら学べる構成となっています。一つ一つのコンテンツが短く、1分未満のものから最長でも5分程度。必要な部分だけ必要な時に見ることが可能な使いやすい構成です。

たとえば、日本人にとっては当たり前ともいえる「5分前行動」。一方で、会議は予定より長引いたり、残業も行いますが、こういった時間の感覚は国によって文化によって異なります。言葉の問題では、「大丈夫」「いいよ」が、「Yesを意味するのかNoを意味するのかがわかりにくい」といった気をつけるべきポイントがわかりやすく整理されています。

お互いが歩み寄る職場の変化がゴール

動画で学ぶことが目的ではなく、その後の職場の変化が重要です。日本人社員も外国籍社員もお互いが歩み寄り、組織の目標に向かって一緒に進んでいけるようになる。そういった変化を生むためには、ディスカッションや対話によって、個人の凝り固まった価値観を崩し、新しい気づきを得ることが大切です。

そもそもこの問題には、企業側が課題に気づきにくい、課題があることに気づいていない、という特徴もあります。動画視聴をきっかけに、職場の課題を認識し、「他人の感じ方と自分の感じ方が違うかもしれない」ことについて、考えてみましょう。これは国籍の問題だけではなく、性別や年代差によるギャップなど、あらゆるミスコミュニケーションを解決する重要な視点です。

「一緒に働く人間としての関係のあり方、それを含めた組織全体のあり方を、もう一度見直す機会として活用してほしい」と専門家は語っています。

職場のハラスメント実態調査報告

ハラスメントがおこる職場の特徴

厚生労働省は、「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表しました。(000775797.pdf (mhlw.go.jp))

調査対象は、パワハラのほか、顧客等からの著しい迷惑行為、妊娠・出産・育児休業等ハラスメントなどが含まれます。過去3年間でハラスメントを受けた経験がある労働者は、パワハラが31.4%、顧客等からの著しい迷惑行為が15.0%、セクハラが10.2%です。

ハラスメントに関する職場の特徴としては、パワハラ・セクハラともに「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」、「ハラスメント防止規定が制定されていない」、「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」などがあげられています。

また、過去5年間に勤務先で育児に関わる制度を利用しようとした男性労働者のうち、ハラスメントを受けた者の割合は26.2%でした。まだまだ男性の育児休業取得割合が低い現状で、企業側の意識改革が求められます。

 

事後対応を迅速に行うために

ハラスメントを受けた後の労働者の対応としては、パワハラ、セクハラについては「何もしなかった」の割合が最も高く4割弱でした。勤務先の対応としても、パワハラについては「特に何もしなかった」が47.1%で最も高い割合となっています。ですが、職場におけるパワーハラスメント防止対策は、昨年の法改正によって事業主に義務付けられています。中小企業については、現在は努力義務ですが、2022年4月から義務化となります。(ハラスメントパンフ.indd (mhlw.go.jp)

被害の継続、拡大、二次被害などによる就業環境の悪化などを防ぐためには、迅速な対応が必要です。事が起こってから、誰がどのように対応するのか検討するのでは対応を遅らせることになります。相談窓口や対応の手順などはあらかじめ明確に定めておきましょう。ハラスメントかどうかの判断が難しいという課題もありますが、その判定に時間をかけるのではなく、良好な就業環境を回復することを最優先に対応していきましょう。

令和3年分から ふるさと納税の申告手続簡素化

ふるさと納税の確定申告が簡単になる?

個人の所得・控除によって決まる控除上限金額までの寄附なら、自己負担が2,000円で返礼品が貰えるふるさと納税制度。令和元年度の寄附件数は約2,334万件、寄附総額は約4,875億円となり、すでに市民権を得た制度となっている印象です。

寄附によって後から税金が減る形になりますが、寄附をしただけでは税金が減りません。確定申告をするか、自治体5か所以内への寄附かつ他に確定申告をする必要のない方が利用できる、ワンストップ特例の申請をしなければなりません。給与収入のみの方であれば、電子申告を利用すると作成の手間もあまりなく、提出も自宅等で行えるため、確定申告はかなり簡単ですが、令和3年分の申告からは「寄附金控除に関する証明書」の発行により、さらに簡素化される見込みです。

 

先行して生命保険料控除がやっている制度

ふるさと納税を扱っている特定事業者が発行する年間寄附額を記載した「寄附金控除に関する証明書」は、電子データや郵送等で寄附を行った方に提供されます。寄附を行った方は、証明書のデータを市販の確定申告作成ソフトや国税庁の確定申告作成コーナーで読み込ませることで、今まで1つずつ寄附先や寄附金額を入力していた手間が省けます。令和2年分の申告や年末調整で導入された、生命保険料の控除証明書等の電子的交付と同じ仕組みです。

また、e-Taxではなく、紙の申告書を提出する場合でも、今までは寄附金受領書をすべて提出していたものが、証明書データを国税庁が提供するQRコード付証明書等作成システムで読み込むことによって生成される書類を添付する方法を取ることができますので、こちらも簡素化が可能です。

 

特定事業者認定に注意

「寄附金控除に関する証明書」を発行することのできる特定事業者は、地方公共団体と特定寄附金の仲介に関する契約を締結している事業者となり、ふるさと納税でよく聞くポータルサイトを運営している団体となりますが、規模の小さい団体は、まだ特定事業者として確認できないものもあります。簡素化制度を使いたい場合は、お使いのサイトが特定事業者に認定されているか確認しましょう。

年金繰下げ増額新制度

年金繰り下げが今より有利に

あまり知られていませんが、2022年4月から年金繰下げの年齢が現在の70歳までから75歳にまで広がります。高齢でも元気な方や働いている方が増えている時代背景もありますが、政策的に年金の受給開始年齢の延長を望んでいるともいえるでしょう。

年金は原則65歳から受給開始。しかし開始年齢を1か月繰り下げるごとに0.7%増額されます。現在は70歳まで繰り下げられますが、22年4月から75歳まで選択肢が広がります。70歳から受け取れば42%、75歳から受け取れば84%の増額です。

受給の仕方

繰下げを事前に決める必要はなく、受給開始の請求をしなければ自動的に繰下げ状態になります。必要な年齢になったら請求します。繰下げ後の受け取り方は通常のフル増額ならば、繰下げ月数の増加率で請求時点より受給開始。一括受給は65歳以降で5年の時効にかからない期間の分を遡り一度に受給。その後は65歳時点の年金額を受給します。健康に自信がなくなったときや多額の資金が必要な場合は使いやすいでしょう。

 

新制度の変更点

それでは新制度の75歳まで選択肢が広がったときはどうなるか、75歳を過ぎて請求すると75歳で請求したとみなします。例えば77歳で請求したら75歳で請求した10年分84%の増額分は、75歳以降の2年分をまとめて受けその後毎月同額受給します。

大きな変更点は一括受給です。23年4月からは70歳の誕生日から80歳の誕生日の前々日までの請求なら5年前に請求があったとみなし、5年前の時点の増額率で5年分を一括受給します。その後は同額を毎月受け取ります。5年超の期間は毎月の受給額に反映してくるので時効消滅がなくなり有利です。ただし80歳の誕生日の前日以降の請求は5年の時効がかかります。

繰下げ受給をすることは各人の事情や考え方の選択です。年金は長生きに備えるものですので「70歳以降は一括受給でも増額される」という変更点は知っておきたいですね。新制度の適用は22年4月に70歳以下の方で、請求は23年4月以降にすると新制度が適用されます。