100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.31

2021.03.26 Fri

清算会社の住民税均等割

清算期間中も住民税均等割は発生する

コロナウイルスの感染拡大で、倒産・廃業が増え、また、余力のあるうちに事業を畳む選択も増えています。会社を解散して清算手続に入った場合も、法人税の均等割は払わなければならないのでしょうか?

「清算=事業を止めた」ので、「事業をしていることで所得の多寡に関係なくみんなで負担する均等割はもういらないのでは?」と思いがちです。しかしながら、税法規定からすると、「清算期間中も法人住民税の納税義務」は残ります。

課税庁側の見解では、「会社法の規定では、清算期間中といえども清算目的で会社は存続し、その期間中は清算業務が会社の付随事業であるため、均等割を課税できる」としています。

過去の例では、事務所閉鎖後社長の自宅にて残務整理をしていた場合に、その社長の自宅が事務所等として均等割が課税された実例もあるようです。そのため、課税の根拠である「事務所又は事業所」の賃貸契約を解除して物理的になくなったものと思っていても、均等割を課税されない状況となることは難しいようです。

「事業廃止届」で課されない場合もある

一方で、事業を廃止したので事業は行っていないという届出を根拠に、均等割が課されないケースもあるようです。

会社法規定に従った清算手続を行うには時間も費用も掛かります。一方、清算手続をせずに、事業廃止届を出して休眠会社として放置しておけば、事業活動がゼロとなり、均等割は課されない状況となります。その後、最後の登記から12年が経過すると、会社法の規定で、法務局によるみなし解散の手続となります。12年間会社を残したままという不安は残りますが、均等割もそのあとの税金問題も、青色申告の取り消しという問題を除けば、放置でおしまいとする選択も少なくありません。きちんと整理すると課税され、放置したら課税されずに済むという不合理が生じます。

地方自治体の事実認定と実務運用次第?

自治体によっては、事実認定として事務所等がないとなれば、清算期間中でも「事業廃止届」の提出により、均等割を課さない運用をしているところもあるようです。

事務所等の実体がある場合には「事業廃止届」を提出しても事実と違うわけですから均等割課税となりますが、そうでない場合には、課税団体に照会してみるという対応もあります。

中小企業にも『同一労働同一賃金』 が適用されます(令和3年4月~)

中小企業にも『同一労働同一賃金』適用

令和3年4月より、中小企業にも『同一労働同一賃金』が適用されます。

大企業には令和2年4月から適用され、中小企業には1年間猶予されていました。

そもそも、同一労働同一賃金とは何でしょうか? 文字通りに解釈すれば、同じレベルの労働に同じレベルの額の賃金を支払うことと読めます。

しかし、法的には正規雇用労働者(正社員)と非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

従って、正規雇用労働者(正社員)間の待遇差については、対象外となります。

 

『同一労働同一賃金』に関する法改正

同一労働同一賃金に関して改正される法律は、「労働契約法」と「パートタイム・有期雇用労働法(以下、パート有期法)」です。

具体的には、労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)が廃止され、パート有期法8条(均衡待遇)と同法9条(均等待遇)に引き継がれることになりました。

 

『同一労働同一賃金』で求められること

パート有期法では、①職務の内容と②職務の内容・配置の変更の範囲が同じであれば、差別的な取扱いが禁止され、均等待遇が求められます。一方、①と②に差がある場合でも、さらに③その他の事情を考慮して均衡(バランス)のとれた待遇、即ち均衡待遇が求められます。

なお、派遣労働者については、大企業と同じく令和2年4月から、賃金の決定方法に「派遣先均等・均衡方式(派遣先ベース)」と「労使協定方式(派遣元の労使協定ベース)」のいずれかを採用しなければならないことになっています。

他には、非正規雇用労働者に正規雇用労働者との待遇差について説明を求められた場合の説明義務が強化されます。また、均衡待遇や待遇差の説明に関する紛争は、都道府県労働局の管轄となり、裁判外紛争解決手続(行政ADR)の対象となります。

外国送金時は源泉税の再確認を

源泉所得税の徴収と納税は支払者の義務

対価の支払いに際して、受取者の所得の内容に従い、支払者に源泉所得税の控除と納税義務を課している源泉徴収制度は、税の徴収側にとっては極めて便利な制度です。

源泉徴収漏れや納付遅延の延滞金は支払者側に課せられます。不合理だと思っても、税法規定に従わないと罰金が恐ろしいです。

給料の源泉税は毎月の話なので、徴収漏れはあまり心配ないでしょう。たまにしか出てこない取引で、しかも相手先も源泉徴収制度についてよくわかっておらず、請求書に源泉税の記載がないとしても、源泉徴収義務のある支払であれば、支払者側に徴収と納税義務が残ります。副業形態だったり事業を始めたばかりだったりの個人事業の外注先やデザイナーなどは要注意です。

外国に払ってしまっては取戻しが難しい

源泉税の控除漏れがあっても、相手先が今後も取引のある者であれば、返金や次回の支払額から差し引くなどして、支払者側での負担を回避することができます。しかしながら、相手が一度きりの取引の外国の取引先であれば、「そんな日本の税法なんて知らん」として返金を無視されてしまう可能性も高いです。そうなっても源泉徴収義務は消えませんので、支払総額はグロスアップ計算で125.66≒100÷(100%-20.42%)に膨らんでしまいます。

外国送金時には、源泉徴収義務の有無を事前によく確認して、適切な対応(=必要な場合、源泉徴収と納税)が必要です。特に、著作権の使用料(=ソフトウェア使用料など)や不動産の貸付や譲渡にかかる支払で源泉漏れが起きやすいので要注意です。

租税条約の源泉減免適用の手続きは面倒

支払先が居住者となっている国と日本との間で租税条約があり、源泉税の減免が規定されていれば、事前の手続きで、減免されます。しかしながら、手続きは面倒です。受取側が書類を用意して支払者の受付印を押した届出書を支払者の所轄税務署に提出します。受取者の居住者証明の原本の提出が求められるとさらに面倒です。

相手先には、「日本の税法で源泉税の徴収・納付が規定されているので、送金は源泉税を差し引いた残りとなる」と連絡して終われればよいのですが、相手先との契約や関係でこうした書類の面倒まで見なければならないこともあります。

こうした取引がある場合、事前に税理士に要相談です。送金後の回復は困難です。

世界一の休み下手は本当か ~日本の有給取得率について~

実は世界的にも休日が多い日本

日本人は休み下手だと言われることがあります。実際に、日本の有休消化率は世界的に見ても最低レベルで推移しています。

しかし、実は我が国の年間休日日数は国際的にみても遜色ないということをご存じでしょうか。

令和3年の祝祭日数は17日あり、土日と重なる2日間を除いても、土日祝日は119日にもなります。

世界でもっとも祝日が多いタイの祝日は23日、その次に2日違いで中国が2位となり、なんと日本はこれに続く3位。韓国、インド、コロンビアの17日間と同じ休日数なのです。

しかも我が国では夏季休暇と年末年始休暇で上記と別に約8日間位が加わります。

有給休暇平均取得日数こそ10日間程度と確かに少ないのですが、これら祝祭日と有休を合わせた実休日ではアメリカやシンガポールを上回っており、世界的にみると、取り立てて休暇が少ないという印象はありません。

正体は「罪悪感」?

ではなぜ、「日本人は休むのが下手」などと言われてしまうのでしょうか。

日本の有休消化率は、政府による調査開始時からずっと、世界的にみても明らかに低い50%程度にとどまっています。

民間企業の調査によると、有休を取らない理由は「いざという時にとっておくため」「人手不足」「休みづらい雰囲気」「多忙」「仕事が溜まる」等で、仕事への責任感が強く、有給休暇を申請することに罪悪感を感じている人が一定数いることが伺えます。

連続した有給休暇を取るよりも、短い有給休暇や、休日でうまくリフレッシュするのが日本的なスタイルと言えるでしょうか。

年次有給休暇の取得率が過去最高に

こういった状況の中、厚生労働省から公表された令和2年就労条件総合調査の結果では、年次有給休暇の取得率が調査を始めた昭和59年以降で過去最高の56.3%となりました。これは政府の働き方改革の一端で、令和元年4月から有給を年5日取得させることが企業の義務となった影響が大きいと見られます。

令和2年度については、新型コロナの影響でテレワークの普及や新しい生活様式など、人々の暮らしが大きく変わったため、今後の結果に注目したいところです。

自転車通勤ルールの策定

コロナ禍の下、自転車通勤が増えています。自転車通勤は手軽に始められますが、通勤中に事故でケガをした場合、通勤災害になるのか、または、相手にケガをさせてしまう場合の損害賠償はどうなるのか? 自転車通勤を認める場合は、様々な状況を考慮して規程などルールを定めておくことが大切です。

 

通勤災害とは

通勤途上の事故の場合、通勤災害か否かが問われます。通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、傷害又は死亡を言います。しかし、どんな場合でも通勤災害になる、というわけではなく、労災法では「通勤」とは「就業に関して」次の3点で定義しています。

①    住居と就業場所との間の往復

②    複数の異なる事業場で働く労働者が一つ目の事業所から次の事業所へ移動する場合

③    ①、②の往復の前後に、厚生労働省で定める要件に該当する場所への立ち寄りは可

③は、転任に伴い家族と別居していて、家族の住居から事業所に行く場合や、要介護状態の父母や親族の介護のために自宅でないところからの通勤などです。通勤の途中で、買い物など日常生活に必要な行為、やむを得ない事由による立ち寄りは、その行為の間(逸脱、中断といいます)は除き、通勤となります。ちなみに、通勤途中で会社の荷物を届けるような場合は、通勤災害ではなく業務災害となり別途対応が必要となります。

 

自転車損害賠償責任保険への加入

自転車でのケガを防ぐために、必ずヘルメットの着用を義務付ける、前照灯やベルなど安全にかかわる装備が正しく装着されていて、整備された自転車であること、安全な乗り方は当然として、駐輪場の確保なども確認が必要です。そして、何より、自転車損害賠償責任保険等に加入していることの確認が重要です。昨今の自転車事故の多発と裁判での高額な賠償金の支払い命令が出ていることで、多くの自治体が条例で自転車保険加入を義務化しています。自動車保険特約加入も含め、書類の提出などで保険加入を確認しましょう。