100年企業創り通信

100年企業創り通信 vol.101

2022.12.16 Fri

高齢者就業者数過去最高の 一方で体力は低下傾向

75歳以上の人口 団塊の世代増で15%超に

総務省が、65歳以上の高齢者の人口、就業について公表しています。高齢者の人口は2022年9月で3627万人、総人口に占める割合は29.1%です。国際的にみても日本は高齢者人口の割合が世界で最も高く、次いでイタリア(24.1%)、フィンランド(23.3%)となっています。

75歳以上人口は、総人口に占める割合が初めて15%を超えました。これは、いわゆる「団塊の世代」(1947年~1949年生まれ)が2022年から75歳を迎え始めたことによると考えられます。

また、高齢者の就業者数(2021年)は909万人(前年比6万人増)、18年連続で過去最高になっています。就業率も65歳以上の人口に占める就業者の割合は25.1%となっています。主要国の高齢者就業率は韓国(34.9%)に次いで日本は高い水準です。

高齢就業者を地位別にみると役員を除く雇用者が517万人(57.6%)で最も多くなっています。雇用形態別では非正規の職員・従業員が393万人(75.9%)となっています。

高齢者の就業者は増えているが体力は

総務省の労働力調査に現れた高齢者就業率は増えていますが、一方でスポーツ庁の2021年運動能力調査では高年齢者の体力の低下傾向が顕著であることがわかりました。

特に65歳~74歳の男性の体力低下は過去10年間で最低を記録。週1日以上運動している人の割合もこの年齢層では減少していました。コロナの影響もあったかもしれませんが、以前のように運動習慣の広がりが体力向上につながっていた流れは頭打ち傾向にあるといえます。

労働災害発生率が増えることも

高齢者の体力の低下は労働災害の増加につながり、もともと若年層より労働災害発生率は高いのですが身体機能の衰えもあり今後も労働災害が増えるかもしれません。

企業としては高齢者の体力低下を念頭に安全に働いてもらえる職場作りが必要です。

特に意識して対策したいのは「転倒災害の防止」です。職場内の段差をなくしたり、通路を整頓して歩きやすくするなど対策を行うとともに、厚労省の「転倒リスク評価セルフチェック票」等も使って高齢者が自分でも身体機能の状態を知っておくことで注意を心掛けてもらうことが有効でしょう。

Level Playing Field とは

日本発祥の柔道は、今や世界標準となった

柔道は日本発祥のスポーツですが、世界中に広まり、世界選手権やオリンピックでは、たくさんの日本人選手がメダルを獲得しています。今や204か国(令和2年度)が国際柔道連盟に加盟し、国際ルールのもと、日本人選手は世界の舞台で試合をしています。そして、すべてのプレイヤーが共通ルールのもとで競技できるよう、公平な競争条件を定めることを“Level Playing Field”といいます。

国際取引もLevel Playing Fieldで

“Level Playing Field”は、フェアプレイの精神を好む欧米で発祥しましたが、スポーツだけでなく、ビジネスの世界でも根底にある概念です。

たとえば、国境を越えて企業が競争する時、これまでの課税は各国が自主的に定めた税法に委ねられ、二国間の調整を租税条約で行うローカルな運用でした。そのため、オンライン広告サービスや音楽配信サービスの提供などが世界中に展開されるようになると、これらのサービスの提供を受ける市場国では、支店など物理的な拠点(事業所PE)や契約締結権限を有する者(代理人PE)がないため、源泉地国として外国企業の売上に課税できない弊害が生じました。そこで2012年、国際的な租税回避を防止し、公平な競争条件とする国際課税ルール策定のため、BEPSプロジェクトが開始しました。

BEPSの2つの柱

BEPSプロジェクトでは、2つの取組みについてOECDの場で協議されています。

①PEが設置されていない市場国においても課税できるよう、企業の通常利益を売上の10%に設定し、それを超える残余利益の25%分を、それぞれの市場国に配分する。

②各国の法人税率を少なくとも最低15%以上として、法人税の引下げ競争に歯止めをかける。

日本は国際課税ルール作りで主導権を

世界の柔道が国際ルールになった現在においても、日本の柔道は講道館の創始者、嘉納治五郎の教えのもと、子供たちの心身を鍛え、世界レベルの選手を次々と育て、世界で主導的な立ち位置にいます。

OECD租税委員会では、国境を越えた取引において、企業の公平な競争環境の場を創ろうとしています。各国の利害が交錯する中で、日本は租税の国際ルール作りに主導的に関われるかが問われています。

インボイス制度と 独禁・下請・建設業法

消費税改正による免税事業者への違法行為

インボイス制度上、免税事業者はインボイスを発行できず、免税事業者に発注している会社は、消費税の仕入税額控除ができず、納税消費税が増えてしまい、何らかの対応を迫られることになります。

しかし、対価の減額や取引の停止、免税事業者から課税事業者への転換要請なども、必ずしも容易には行えません。消費税法の改正が原因で、それらの新たな対応をしなければならなくなってしまい、その挙げ句は、仕入外注先等である免税事業者に対する、独禁法、下請法、建設業法などでの法律上の問題を生み出しかねない状態になってしまうからです。こんなことに悩まなくて済むような配慮的措置を用意した上での消費税改正にしてもらいたいものです。

独禁法・下請法・建設業法での禁止行為

自己の取引上の地位が相手方に優越している場合、相手に対し、不当不利益を与えることは、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となります。 取引条件の見直しに当たっては、「優越的地位の濫用」に該当する行為を行わないよう注意が必要です。

下請法の規制の対象となる場合で、発注事業者が免税事業者である仕入先に対して、仕入先の責めに帰すべき理由がないのに、発注時に定めた下請代金の額を減じた場合には、下請法第4条第1項第3号で禁止する下請代金の減額として問題となります。この場合、免税事業者であることは、仕入先の責めに帰すべき理由には当たりません。

建設業法の規制の対象となる場合で、元請負人が、自己の取引上の地位を利用して免税事業者である下請負人に対して、契約後に、取り決めた下請代金の額を一方的に減額した場合、建設業法第19条の3の「不当に低い請負代金の禁止」の規定に違反する行為として問題となります。

仕入消費税の転嫁保証は必要最低限

仕入側の都合で、免税事業者が負担していた消費税額にも満たないような価格を設定した場合には、独占禁止法上の優越的地位の濫用、下請法で禁止する買いたたき、建設業法の「不当に低い請負代金の禁止」の規定違反、として問題となります。

逆に、免税事業者であることを前提にした取引単価を、課税事業者になってからも、単価改定交渉に応じずに据え置くことも下請法第4条第1項第5の「買いたたき」に該当し、独占禁止法にも抵触します。

インボイス制度 事業者公表サイトでひと騒動

あなたはインボイス発行事業者?

令和5年10月1日から、インボイス制度が始まります。インボイス制度の下では、請求書等の発行を受けることが困難な場合を除き、帳簿および請求書等の保存が仕入税額控除をするための要件となります。

受領者は受け取ったインボイス(適格請求書)が要件を満たしているかの確認が必要です。その中で、記載されている登録番号が間違っていないかを確認するため「適格請求書発行事業者公表サイト」で登録番号を確認する作業が発生します。

本名や住所が知られてしまう?

今回のインボイス制度は、事業を営んでいる個人の方も対象ですが、令和4年9月ごろには、適格請求書発行事業者公表サイトで「個人の氏名や事務所住所がCSVファイル等にてダウンロード可能」という状態になっていました。この件を巡って本名ではなく芸名等を使っている人や、居所を事務所としている人から「公表したくない情報をインボイスのせいで出さなければならない」と反発がありました。

結果、全件ダウンロードは一時凍結され、再開後の個人事業主の方のデータは「登録番号」と「登録日・更新日」のみとなりましたが、登録番号を検索にかければ、氏名は出る状態です。なお、公表の申し出があった場合のみ、検索では所在地と屋号が表示されるようになります。

改善後の現状でも、取引先には本名が分かってしまいますから、どうしても本名を公にしたくない場合は、取引先と秘密保持契約を結ぶとか、インボイス事業者にならない選択をするとか、大がかりだったりコストがかかったりしてしまいます。

利便性とプライバシーの両立を

また、適格請求書発行事業者公表サイトで公表されているデータについては「商用利用可能」となっています。これは会計ソフト会社が自社のシステムでユーザーがインボイス番号の照会をできるような機能を実装するためという配慮ですが、住所や氏名が出ているデータを商用利用可とするのは、昨今の社会情勢に照らせば反発が多く出るのは当然ともいえます。

国税庁は税務行政のDXを掲げていますが、それがセキュリティーやプライバシーを置き去りにしたものでないことを願いたいものです。

12月はふるさと納税の 書き入れ&駆け込み月

ふるさと納税のテレビCMが増えている

テレビをつけると、有名人や芸能人を起用し、コント仕立てで、“ふるさと納税なら○○・・・”とふるさと納税のポータルサイト名を連呼させているテレビCMが目に入ります。特に12月になってからはうるさいくらいに頻出しています。

高額なテレビCMを打っても、自社のポータルサイトからふるさと納税手続きをしてもらえれば、自治体からの手数料で十分ペイするという意図での投資なのでしょう。

また、ポイントサイト経由でふるさと納税を行えばポイント還元がありますが、12月はこのポイントの還元率が高くなる月でもあります。このポイントサイトで広告を行っているのもふるさと納税ポータルサイトの会社です。

まさに12月はポータルサイトの書き入れ時で広告に力を入れているのでしょう。

12月は納税者のふるさと納税駆け込み月

ふるさと納税には、この金額までの寄附だと寄附金控除の計算で差し引かれる2千円以外の部分が所得税や住民税の税負担から控除されるという、「控除限度額」があります。この「控除限度額」は、その年の所得税の負担額が決まれば、ふるさと納税ポータルサイトの会社などが提供しているシミュレーションサイトで簡単に計算できます。

サラリーマンの場合、12月の年末調整が終わり、その年の源泉徴収票をもらえば、ギリギリまで寄附できる「控除限度額」を計算できます。

サラリーマンには、最後の給料をもらったら年末に向け駆け込みでふるさと納税をする、12月がふるさと納税駆け込み月です。

ポイントももらって限度額まで寄附する!

前年の源泉徴収票や今年の住民税決定通知書を参考にすると、今年の大体の「控除限度額」の目途は立てられるはずです。この金額を参考に今年のふるさと納税の寄附先を事前に探しておきましょう。そして今年の源泉徴収票をもらったらギリギリの限度額まで寄附できます。

食料品等の物価上昇が続く中、ふるさと納税でこうした物品を返礼品で獲得することは賢明な対応策ともいえます。寄附に際してポイントサイトを経由すれば、ポイント還元があるので、さらにお得です。