100年企業創りレポート

藤間秋男の100年企業創りレポート
vol.272 2021.1月号

2021.01.01 Fri

1.「明日死ぬ」という修行(田坂広志)

「『明日死ぬ』という修行」 多摩大学大学院・名誉教授 田坂塾・塾長 田坂広志
(「理念と経営」 2020年10月号 コスモ教育出版 )

(1)大成する経営者「三つの体験」

 ① かつて、経営の世界において語られた、一つの格言がある。
  「経営者として大成するには、三つの体験のいずれかを持たねばならぬ。戦争か、大病か、投獄か」

 ② では、なぜ、経営者として大成するには、「生死の体験」を持たねばならぬのか。
  それは、「生死の体験」を通じて、人間は、「死」というものを直視し、深い「死生観」を掴むからであり、
  深い「死生観」を掴むとき、我々に、想像を超えた力が与えられるからである。

 ③ 人生における、3つの真実を直視することである。
  「人は、必ず死ぬ」「人生は、一度しかない」 「人生は、いつ終わるかわからない」

(2)死生観が与える「三つの力」

 ① 第一に、人生の「逆境力」が高まる。
  すなわち、「人は必ず死ぬ」という真実を直視するならば、人生や経営における最悪の逆境に直面しても、
  「命あるだけ、有り難い!」という絶対肯定の姿勢で処することができる。
  実際、厳しい倒産の危機において、(略)「命取られるわけじゃない!」と語った経営者の姿を、筆者は間近で見たことがある。

 ② 第二に、人生における「使命感」が定まる。
  すなわち、「人生は、一度しかない」という真実を直視するならば、
  「その一度限りの命を、何に使うか」という意味での「使命感」が心に芽生え、
  それが、世のため人のために何かを為そうとの「志」へと昇華していく。
  そして、一人の人間が、深い使命感と志を抱くならば、不思議なほど、その思いに共感する人々が周りに集まり、
  その志を実現するために力を貸してくれる。

 ③ 第三に、人生の「時間密度」が高まる。
  人間は、「あなたの命は、あと30日」と言われたならば、一日一日を慈しむようにして大切に使う。
  しかし、「あなたの命は、あと30年」と言われたならば、「まだ30年もあるか」と思い、安逸な時間の使い方をしてしまう。
  だが「人生は、いつ終わるか分からない」という真実を直視するならば、
  「与えられたこの一日を生き切る」という姿勢が身につき、
  その覚悟を持たない人間に比べ、時間の密度が圧倒的に高まっていく。

 ④ 深い「死生観」を掴むことは、一人の経営者として大成するためだけでなく、
  一人の人間として成長し、成熟し、悔いのない人生を送るために大切なことであることに気がつく。

 ⑤ 仏教者の紀野一義師は、若き日に、「明日死ぬ、明日死ぬ、明日、自分は死ぬ」と思い定め、
  その日一日を精一杯に生き切るという修行をした。

「理念と経営」の勉強会は、もうすぐ850回になります。参加しませんか。Zoomです。

私は昨年、軽い食道がんの手術をして「死生観」を感じ、このままの状態で死ぬのは「いやだ」、
人格や徳を高めたいと思い、倫理法人会を真剣に学んでいます。いつか死ぬことを「覚悟」したんですね。

アップルのスティーブ・ジョブズは、17歳のときに
「毎日これが人生最後の一日と思って生きなさい」という言葉に出合い、
33年間「今日が人生最後の日だったら、自分はこのことをやりたいと思うか」で判断していたそうです。
だからあんなにすばらしい商品を開発できたのですね。

今日一日を人生最後の日と思って行動してみませんか。
先送りはしない。また、事業承継を進めない先代の方は「死生観」が足りないということが言われています。
自分が死ぬことを考えられないから、バトンタッチが遅れて社員、お客様、家族に迷惑をかけてしまいます。

 

2.人間の格(芳村思風)

「人間の格」(メールマガジン「芳村思風先生の一語一会」)

 本物の人間になるためには、人格について考えなければいけません。
(略)「人間の格」とは、「人間であるために必要な条件」です。
「人間の格」には、「性格」と「人格」の2つの「格」があります。

(1)「性格」は生まれつきのもので、変える必要はありません。

  ① 相手によって、いい性格と言われたり、いやな性格と感じられたり、相対的なものです。

  ② 「長所を伸ばせば、短所は味に変わる」

  ③ 短所があることを自覚し、できるだけ出てこないように努力することが大切です。

  ④ どんな性格でも能力と人格を磨くことで、個性として魅力を持ち始めます。

(2)人格には、3つの視点があります。
  「人格の高さ」・「人格の深さ」・「人格の大きさ(広さ)」という、この3つです。

  ① 人格は、赤ちゃんや子どもには備わっていません。
        (略)生まれた後に、努力して育てていくもの、磨き上げていくものです。

  ② 「人格の高さ」は、知識や技術や教養の量があると同時に謙虚さが必要です。
   プロとしての自信や志があることも、人格の高さを作るポイントです。
   (略)傲慢な人には、人格の高さは感じることがありません。

  ③ 「人格の深さ」は、考え方や内面的なもので、量ではなく質的なもので、意味や価値を感じる厚みです。
          乗り越えてきた問題や苦労や悩みが深さを作ります。

  ④ 「人格の大きさ」は、器・度量・包容力という言葉で考えます。
 
          器の大きな人とはどんな人か、度量の大きな人とは、包容力の大きさとはなにか。

(3)人格は、どのようにして育て、鍛え、磨けばいいのでしょうか。
  「自らに問い、対立を乗り越えていく」「問題を乗り越えていく」こと。自らに何を問うか。
          4つの問い「現実への問い」「全体への問い」「本質への問い」「理念への問い」です。

     ① 現実の中で、いろいろな問題が出てきたとき、「どうしてこうなるのか?」と思うことがあります。
        これが「現実への問い」なのです。(略)「こんなことは私だけ?他の人はどうなんだろう?」と、
        より広く考える「全体への問い」に発展します。
        さらに「そもそもこれはどういうことなのか?」というような問いがでてきます。
        これが「本質への問い」です。「これはどうあるべきなのか?」「どうならなければいけないか」となったとき、
       「理念への問い」になります。

   ② 次に「対立」を乗り越えること。特に、「感情的対立」を乗り越えていくことがポイントです。
          相手を「誤解なく正しく理解するように聴くこと、接すること」、
          自分のことを「誤解されることなてくれている状態」です。
          自らの成長を手伝ってくれる人として、相手に対して気づかい、心づかいで接することです。
          対立する相手の意見のいいところを学び、取り入れ、自分の意見を成長させる。
          ここに、器の大きさや包容力の大きさがでてきます。
          こうして、「人格」を育て、鍛え、磨いていくことで、「人格」は「高く・深く・大きく」なっていきます。

私も、今の目標は、死ぬまでに人格を高め、徳のある人間になることだと思って、いろいろ学んでいます。
人格の高さ、深さ、大きさ、それぞれ作っていきたいです。

倫理法人会の『万人幸福の栞』(丸山敏雄著)の中に、純情(すなお)とは
「ふんわりとやわらかで、何のこだわりも不足もなく、澄みきった張りきった心、これを持ち続けることであります」と
記されています。

今、私はこんな状態になるように努力しています。

 

3.トヨタ2020年9月の生産・販売台数は、過去最高を記録

「トヨタ、コロナ禍での『販売急回復』にみた底力」 (「東洋経済オンライン」2020年11月12日)

① 豊田章男社長は、「この6カ月間の現場の必死の頑張りもあった。
    社長になってからリーマンショック、東日本大震災、超円高といろいろありながらコツコツと積み上げてきた
    結果が出てきた」と話し、企業体質の強化が業績回復につながっていると強調した。

② 大幅な営業赤字に陥ったリーマンショック以降、トヨタは一段の原価低減を進めてきた。
     足元の損益分岐台数(収支が均衡する連結の年間販売台数)は約600万台と、
     当時よりも200万台以上下がり、有事への抵抗力が増している。

③ 急激な販売回復だ。
 (略)9月単月では世界販売・生産台数ともに前年超えを達成し、9月としての台数は過去最高を記録。

④ 業績回復を牽引するのは巨大市場の北米と中国だ。

⑤ トヨタ以外の日系自動車メーカーにも業績回復の動きが広がっている。
 (略)それでも回復度合や販売の力強さでトヨタは群を抜いている。

⑤ 豊田社長は「利益を出せない会社は未来への投資ができない」と話す。
 (略)コロナ禍でも自動運転や電動化など次世代技術への投資の重要性は変わらず、トヨタも前期並みの研究開発費を維持する。
   未曾有の経済危機下で底力を見せたが、その真の実力はコロナ後に試される。

トヨタの広告は、最近、豊田社長とドラマ「半沢直樹」に出演していた香川照之さんとのかけあいが主です。
トヨタはこうありたい、こんな社員教育している、というトヨタの在り方の広告です。

一方、日産の矢沢永吉、キムタクを使った「やっちゃえ日産」「走りの日産」で車の広告。
それでいて日産は車が売れていない、赤字体質です。

また、トヨタ自動車がミッションを「幸せの量産」に変え、お客様の幸せという市場に参入してきました。
トヨタの東北のある販売店は、ショールームに一切車を置いていないそうです。
そのショールームは地域の方のお役に立つイベントをたくさん開催して、地域に喜んでもらって、トヨタの車が売れているのだそうです。

あるタクシー会社の運転手の話。昔、トヨタ、日産、ベンツ、BMWのタクシーを入れたら、
まず、日産とBMWが壊れ、次にベンツが壊れ、最後までトヨタは壊れなかった。
だから今はほとんどトヨタです、と言っていました。

「トヨタは、お客様を幸せにする壊れない車を量産し、コストダウンして、未来の車を開発し続ける会社」なんだと思います。
スーパーカンパニーですね。創立者の思いが、連鎖しているのですね!

 

4.新時代を切り拓くチーム力 ラグビースピリッツを、ビジネスに活かすヒント

2020年11月17日 目黒区倫理法人会 経営者モーニングセミナー
「ラグビーワールドカップ日本代表チーム大躍進の秘訣」
(酒井直人 日本ラグビーフットボール協会プロモーション委員長)より

(1)ルールにはないラグビー精神(ラグビー憲章)

    ① 品位…誠実さとフェアプレー
    ② 情熱…ゲームに対する情熱的な熱意
    ③ 結束…生涯続く友情、絆、チームワーク
    ④ 規律…フィールド内外においてゲームに不可欠なもの
    ⑤ 尊重 …… チームメート、相手、ゲームに参加する人

(2)ラグビーはなぜビジネスに効くのかの個人的推察

 ① 困難なことに対して、克服する道を見つけようとする。
     (理不尽なことが当たり前なのでタフに業務にあたる)

 ② ひとりはみんなのため、みんなはひとりのため(One for all, All for one)
        チーム全体を考え行動する。

 ③ 途中で投げ出さず、最後まで最善を尽くそうとする。

 ④ ルールとマナーを重んじるので、フェアでないことは受け入れがたい。

 ⑤ 仲間を大事にする。

藤間秋男は、小学校5年から中学3年まで、日本ラクビー協会主催のラグビースクール1期生で、有名な松尾雄治と一緒に秩父宮ラグビー場でトレーニングしていました。

高校に入ってかっこよさに惹かれて、アメリカンフットボールに変わりました。

今考えると、ラグビーの方がよかったかなとも思います。
なぜならば、アメフトは危険で年とったらできないスポーツなのです。
ラグビーは危ないとはいっても、ボールを持っている人以外はタックルできません。
アメフトでは持っていない人に対してもブロックできるので、大変危険なのです。

そのため、不惑倶楽部といって40歳以上の人がラグビーをやっているのでうらやましいです。

また、ワールドカップも、ラグビーとアメフトでは集客力が全然違います。
アメフトのワールドカップが日本であったことを知っている方はいますか?

あとは、ラグビーの方がわかりやすいですね。
私がラグビーで好きなのは、試合が終わったら「ノーサイドの精神」でどちらのチーム(サイド)という区別なく同じ仲間である、
と考えるところがすばらしいと思っています。

すべてが、ノーサイドだと、あとくされないですよね。