明るく楽しく元気前向き情熱ありがとう通信

『目標を明確にせよ』(野村克也)第3577号

2020.06.24 Wed

「自分はこうなりたい」

「これがしたい」

要は、そういう明確な目標が、人間の飢餓感を、自ら目指すための意欲を生み出す源泉となるのである。

そしてその意欲が、人間の潜在能力と可能性を刺激し、引き出してくれるのだ。

目標とはすなわちモチベーション、動機づけである。

これが弱ければ、たとえ潜在能力を持っていても、活かすことは難しい。

「必要は発明の母」というが、逆に言えば、人間は必要なこと以外はしようとしないからだ。

クビになったり、引退せざるをえないような状況に追い込まれて球界を去っていく選手たちが、異口同音にいうことがある。

「もっとがんばればよかった。もっと真剣に野球をやればよかった」

後悔するくらいなら、なぜやらなかったんだ・・・

そう思われるかもしれない。

しかしユニフォームを着ている間は、なかなかそこに気がつかないものなのだ。

プロに入ったときは、どんな選手も大いなる志、大望を抱いていたはずだ。

しかし、それなりにプロの生活に慣れてくると、遊びを覚える。

どうしたって練習よりそっちのほうが楽しい。

すると、それまで毎日夜中にバットを振っていたのがばかばかしくなる。

虚しくなる。

それでいつのまにか、プロ入り当初に抱いていた大望を忘れてしまう。

放棄してしまうのだ。

私にもそういう時期がなかったかとはいえない。

私の場合、夜遅く帰ってもバットを振る習慣は忘れなかったけど、遊びを覚えてからは、以前に比べれば気が入らなかった事実だった。

先輩にいわれた「この世界は素質だ、才能だ」という言葉が頭に浮かんできて、「やはりそうなのかな。努力しても無駄なのかな」と考えたりしたこともあった。

「こんなことをして何になるのだ」と。

だからこそ、しっかりとした目標「こうなりたい」というイメージを持つことが重要なのだ。

さまざまな誘惑に負けないだけの強い夢や希望が・・・

目指す明確なビジョンがあれば、おのずと感じる力も鋭くなる。

「こうなりたい」と強く願うからこそ、人が気づかないこにも気づくのである。

(野村克也 著『負けかたの極意』より)