明るく楽しく元気前向き情熱ありがとう通信

『「気持ちいい」仕事をしろ』(斎藤孝)第3674号

2020.11.16 Mon

いま、日本の家電業界は、深刻な業績にあえいでいる。

パナソニックも例外ではない。

「不景気になると商品が吟味され、経営が吟味されて、そして事が決せられる。従って非常にいい経営者のもとに人が育っていく会社は、好況のときはもちろん、不況のときにはさらに伸びる」

松下幸之助は、かつてそう言った。

いい会社はピンチのときにさらに伸びる。

危機に瀕した時こそ、いい会社であるかどうかがわかるということである。

いまのパナソニックに彼の考えが活かされているかどうか注目に値するところではあるが、パナソニックに限らず、彼の経営哲学や言葉は、彼を尊敬する多くのビジネスマンの中に生きているということだろう。

松下幸之助の言葉や考え方は、ビジネスマンならずとも座右の銘にしたいものだが、ここは基本に立ち返り、彼が「近江商人十訓」を参考にしてつくったと言われている「商売戦術三十か条」のなかのひとつを紹介したい。

この言葉の根底にあるのは、基本的に気持ちよく仕事をしようということだろう。

売る方も気持ちよく売り、買う方も気持ちよく買う。

そういう関係をつくる。

そうでないと続かない。

同じ三十カ条のなかにある「正礼を守れ。値引きはかえって気持ちを悪くするくらいが落ちだ」

というのも同じことだ。

一度値引きし始めると、どの客にもしなければいけなくなる。

前に買ったお客よりも高い金額で買ったお客は面白くなくなる。

だからいったん下げた価格は戻せない。

また、どこよりも安い値で売ります、というのを始めると、どんどんデフレスパイラルに入っていく。

まさにいまの家電量販店で見られる液晶テレビの価格などがその類だが、これではどこも儲からない。

これは企業側の問題だけではなく、客側もつくり手を支えているのだという意識が社会全体にないと、どんどん苦しくなっていく。

商売がうまくいくということは、みんなにとってうまくいくようになっていることが大切なのである。

(斎藤孝著『君の10年後を変える言葉』より)